河村たかし名古屋市長「リコール不正署名疑惑」に答える
「私こそ大村秀章愛知県知事の噓を許さない」
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▶私はリコール運動を応援したが、不正署名には一切関わっていない
▶私が大村知事のリコール活動を応援したのも、知事の“独断”で、日本人の心を傷つける反日作品の数々を税金を使って展示させたことはリコール(解職)に値する、と考えてのこと
▶リコール活動を始めた経緯について高須院長は、「リコールをしようと言い出したのは河村さんなのに、私が言い出したと嘘をついたことは許せない」と述べているが、これは事実と異なる
河村氏
露骨な“選挙妨害”
大村秀章愛知県知事による「私は河村たかし市長の嘘を許さない」という本誌5月号(4月9日発売)の記事は、事実無根の内容で、しかも、これが4月25日の名古屋市長選の直前に掲載されたというのは、露骨な“選挙妨害”でした。
私が「公然と嘘をつき、嘘に嘘を重ねた」としていますが、何をもってそう言っているのか、まったく理解できません。根拠のない嘘を広めているのは大村知事の方で“とんでもにゃーこと”です。
大村知事は「おそらく彼(河村)が企画・立案し、全面的に支援した、私に対するリコール運動の『署名偽造事件』」と述べていて、「不正署名の黒幕」があたかも私であるかのように印象付けています。私はリコール運動を応援しましたが、不正署名には一切関わっていません。「正当なリコール活動」を「不正署名」の問題にすり替えており、極めて悪質な印象操作です。
大村知事の嘘はそれだけではありません。
「衆議院議員時代の河村氏が、とくにこだわっていたのは『国会議員互助年金の廃止』です。ところが、当の河村氏が、実は国会議員年金をもらっていたのです。しかも、『従来の15%減となる年金』を受け取っていて、『一時金』方式の何倍もの額をもらっていたのです」と述べていますが、これも法的知識を欠いた暴言(嘘)です。
国会議員互助年金は、10年以上務めた国会議員に対して退職時に自動的に発生するものです。当時、衆議院事務局に問い合わせると、「権利発生後、公職にある者が、互助年金を請求しないことで時効に係らしめた場合、国への寄付とみなされ、公職選挙法第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)に抵触する可能性を排除できない」と指摘されました。そこで私は、一時金自体が優遇されているので議員年金一時金については受領せず、議員特権を享受しない唯一の方法として、年金を積み立てて、公職退職後に寄付する方法を選択し、積立額をネット上で公開しています。
根拠のない誹謗中傷を続ける大村知事に対して私は、ご自身の議員年金はどうなっているのかと公開質問状を出しましたが、ご自身に不都合な質問には、いまだに梨の礫(つぶて)です。
公金による反日作品の展示
不正署名はあるまじき犯罪です。しかし、リコール活動それ自体は“民主主義の原点”であり、2010年に「市民税の恒久減税」や「議員報酬の半減」をめぐって市議会と対立し、市議会のリコール運動を成功させた私にとっては“政治活動の原点”でもあります。私が大村知事のリコール活動を応援したのも、知事の“独断”で、日本人の心を傷つける反日作品の数々を税金を使って展示させたことはリコール(解職)に値する、と考えてのことです。
「『リコール署名の大量捏造』という前代未聞の嘘も、直接の発端は、『トリエンナーレ』をめぐる嘘にありました」と大村知事は述べていますが、意味不明であって、事の発端は、むしろトリエンナーレでの大村知事の“独断”による芸術に名を借りた反日支援にありました。
トリエンナーレは、愛知県と名古屋市が共催した“公共事業”で、県民や市民の税金が投入されています。この点について、大村知事は「実行委員会方式だから公共事業ではない」と主張しています。しかしながら、大村知事は国に対しては公共事業として補助金申請をしている以上、「公共事業でない」などと、なぜ言えるのでしょうか。
問題は、トリエンナーレの「表現の不自由展・その後」に「昭和天皇の写真をバーナーで燃やす映像」や「日本軍兵士を『間抜けな日本人(idiot JAPONICA)』として揶揄する作品」や「史実に反した従軍慰安婦像」といった“政治的に著しく偏向した作品”が展示されたことです。
もちろんこうした作品も、私的な資金で私的な施設で展示されるのは「表現の自由」として許されます。しかし、公立美術館で公金を用いて公共主催で展示するのは著しく不適切です。私は右翼でも国粋主義者でもなく、平等主義者、庶民の代弁者、商人的なリアリストですが、叔父がガダルカナルで戦死していて、こうした作品を見ていい気はしません。大村知事は「表現の自由」だの「検閲」だのと口にしますが、「検閲」の理解が間違っていますし、「表現の自由」と「公共事業の適正さ」(税金の使い道)とは区別すべき別個の問題です。
大村知事の“独断”
慰安婦像の展示を私が知ったのは、トリエンナーレ開会前日のことでした。レセプションで、隣にいた名古屋市議会議長から「慰安婦像が展示されているそうだ」と聞いて驚いたのです。ただ、私は乾杯要員だったので、その場は「燃えよドラゴンズ」を歌って、いったんは忘れていました(笑)。しかし翌日、松井一郎大阪市長からも「慰安婦像が展示されているそうだが、どうなっているのか」と電話があり、「まずは自分の目で」ということで、翌日、現場を視察したのです。
このあたりの事実関係について、大村知事は、「この騒動も首謀者は河村氏です。8月2日に会場を視察した後、河村氏は、『どう考えても日本人の、国民の心を踏みにじるもの』として、知事である私に対して『平和の少女像』の展示中止と撤去を申し入れると表明しました。河村氏は、会長である私には事前には何も言わずに、記者たちを呼び寄せて一大パフォーマンスを仕掛けたのです」と述べていますが、事実無根の嘘です。私は事前に、県側に「この時間に視察に行きますから」と伝えています。大村知事にも電話をかけましたが、留守番電話になったので、「話し合う必要がある」というメッセージを残しました。
慰安婦像がこうした公的イベントで展示されれば、県民・市民から抗議が殺到することは、火を見るより明らかです。「慰安婦像の展示を知ったのは、6月半ばだった」と大村知事は述べていますが、実行委員会会長である大村知事は、もし事前に知ったならその時点で、同会長代行である私に事前に相談すべきです。
ところが、慰安婦像について市担当者が報告を受けたのは、開幕のわずか10日前(7月22日)のことでした(「昭和天皇の写真をバーナーで燃やす映像」はこの時点で知らされていません)。その際、不安を感じた市担当者は、県事務局に「大丈夫ですか?」と問い合わせましたが、「上(大村)が『いい』と言っている。上が『お前たち、展示をやめさせるつもりではないだろうな』と言っているから苦情があったときには県で対応する」と、市側で展示を止める動きを封じてきたのです。
奇妙なことに、開幕前日の朝日新聞と中日新聞には、慰安婦像の展示を肯定的に報じる記事が出ています。これでは、大村知事、朝日、中日による“共同謀議”があったと考えざるを得ません。トリエンナーレ問題とリコール問題において、ことさら私をバッシングしてきたのも、この三者です。
「昭和天皇の写真を燃やす映像」については、大村知事も事前に知らされなかったようで、フジテレビの番組で「うちの職員が初めて見たのが7月30日。これはまさに契約違反と言わざるを得ないと私は思っています」と述べています。しかし、「契約違反」であるなら、なぜ展示を中止しなかったのでしょうか。
大村秀章知事
契約違反なら展示を中止すべし
8月3日にいったん中止された「表現の不自由展・その後」は、10月8日に大村知事の“独断”で再開されました。この間、私は大村知事に「話し合いをしよう」と文書で4回、電話で2回要請しています。2回の電話のうち1回は留守電で、もう1回は本人に直接、「再開してはいかんぞ」「事前に知らされた展示一覧表のものと違うものが出ている。騙されたもの(契約違反のもの)に表現の自由などない」と伝えたところ、「そういう訳にもいかんのだ」という返答でした。
大村知事は、トリエンナーレの代表者として、不自由展実行委員会と業務委託契約を締結しており、契約書には「(大村知事が)不適当となったと判断したときは、出品作品の展示を中止することができるものとする」と明記されています。ですから大村知事自身が「契約違反」と認める作品は、契約条項に基づいて展示を中止すべきでした。
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