横田早紀江 子供の前では泣かなかった 横田拓也 100周年記念企画「100年の100人」
1977年11月、横田めぐみさん(当時13)が北朝鮮に拉致された。母・早紀江さん(85)の苦しい闘いの日々を、長男の拓也氏が明かす。/文・横田拓也(拉致被害者家族会事務局長)
横田氏
姉のめぐみがいなくなった後、両親は当時小学生だった私と弟の哲也の前では狼狽えることも泣くこともなく、毅然と振る舞っていました。
犬を飼ってくれたり、県内の湖を旅行したり、小さな庭でバーベキューをしたり……私たちが変に気を使わないよう、常に心を配ってくれていた気がします。
「息子たちが小学校に行った後、畳を掻きむしって泣いていました」。2年ほど前、母が講演会でこう話しているのを舞台袖で聞いて驚きました。子供から見えていた景色はほんのわずかだと改めて感じたものです。
97年、北朝鮮による拉致が発覚して以降、両親はとにかく家にいなかった印象です。もう若くはない体を引きずり、2人が全国で行った講演活動は1400回を超えました。
持ち歩くA4のコピー用紙には、今後の予定が手書きでびっしり。所々修正ペンの跡がある何十枚もの紙の束ははっきり言って異様でした。講演の日程調整や切符の手配など、自分達だけでこなしてきたのです。
横田早紀江
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