野中広務 票にもカネにもならぬ仕事 中川智子 100周年記念企画「100年の100人」
前宝塚市長の中川智子氏は、社民党の1年生代議士だった平成9年、自民党の重鎮・野中広務(1925~2018)と知り合う。以来、党派を超えた深い交流が続いた。/文・中川智子(元宝塚市長)
中川氏
米軍の土地使用に関する衆議院の特別委員会で、委員長を務めていた野中さんは「初めて沖縄を訪れたときに乗ったタクシーの運転手が『妹は日本軍に殺された』と泣く姿を見て、沖縄の人たちの悲しみに寄り添うと決心した」と語りました。私は面識もないのに事務所へ押しかけて「あなたみたいな政治家に会えてよかった」と感動を伝えました。
その夜、私の議員宿舎のドアポケットに、お菓子の袋と「困ったことがあったら何でも相談しなさい」と携帯番号を書いたメモが入っていました。
野中広務
それから被災者生活再建支援法や、ハンセン病患者の国家賠償訴訟などで相談するたび、親身になって力を貸してくださいました。理由を尋ねると、こう言われました。
「君は、票にもお金にもならない仕事に取り組んでいる。光の当たらない人に手を差し伸べるのが政治家だ。君の応援をしたら、僕もいい仕事ができたと思えるんだよ」
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