有森裕子 『あしたのジョー』に奮い立つ
もともと教員になりたかったんです。夜間学校で教える父の背中を見て育ったためか、気づけば憧れていました。生徒を自宅に招いては一緒に食卓を囲む。勉強を教えているはずがどこか楽しそうな姿が、教員としての父の最初の記憶です。普通の教室で見る生徒と先生の関係とは少し違う距離感、人間関係が、すごく好きだった。私自身も先生に救われた時期があり、ちょうどその頃出会ったのが、漫画の『生徒諸君!』(庄司陽子、講談社)。いまの時代から見ると明るすぎて、うざいくらいにいい話(笑)。成績優秀でスポーツ万能な「ナッキー」が、個性的な同級生と切磋琢磨し学校の先生になる。誰からも好かれ仲間意識が強く、周囲を惹きつける。不器用な自分とは真逆の主人公でした。彼女に憧れつつ、何人かの要領の悪い仲間の方に自分を投影しました。ナッキーのようにはなれないけど、人が育まれるということや、そういう場所に一層の憧れを持たせた作品です。
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