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台湾最前線ルポ「中国の意外な弱み」 安田峰俊
武力行使をチラつかせる習近平に対し、入念な分析で備える台湾の底力を見た!/文・安田峰俊(ルポライター)
今世紀に入り、日本にとって最も距離感が縮まった隣国が台湾だ。国交こそないものの、国民同士の好感度が高く、互いに旅行先として人気が高い。日本の東日本大震災や台湾のコロナワクチン不足の際は、両国で互いに助け合う関係となった。
だが昨今、周辺国の動静が不穏である。理由は台湾を自国領として主張する中国の存在だ。
「平和的統一を目指すが、決して武力行使の選択肢を放棄しない」
2022年10月の中国共産党大会の活動報告で、習近平国家主席は台湾問題の「解決」を改めて強調した。いっぽう、同年末に日本の岸田文雄内閣が防衛費の大幅拡大を閣議決定するなど、日米両国は台湾有事を念頭に置いた動きを進める。
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2023年1月には、アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)が机上演習の結果を公表。中国の侵攻は失敗こそするものの、あるシナリオでは米軍の原子力空母2隻、艦船7〜20隻、航空機168〜372機と自衛隊機の100機以上の損害を予測するなど、日米両国に甚大な被害が出る可能性を指摘した。
だが、各国の動静が喧しいなか、なぜか耳に入りづらいのが、当事者である台湾の考えだ。中国の侵攻は具体的にいかなる形をとり、台湾はどう抗するのか。そもそも、有事が現実化する可能性はいかほどか。
軍事演習の現場と、多数の生の声から、台湾側の視点を伝える。
赤帽子の人民解放軍を迎え撃つ
4基あるターボプロップエンジンのプロペラが爆音を響かせた。
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