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45分以内に200人分を調理、ビーフシチューに海苔をトッピング……元陸将が教える「自衛隊ミリ飯」の世界
昨今、各国の軍隊で支給される携帯保存食が「ミリ飯(ミリタリーご飯)」として親しまれている。各国の食文化が反映されているミリ飯は、バラエティに富んでおり、見ていて楽しい。
では、日本の自衛隊員はどんなミリ飯を日々食べているのだろうか? 元中部方面総監・陸将の山下裕貴氏が奥深い自衛隊ミリ飯の世界を紹介する。
◆山下裕貴(やました・ひろたか)
1956年、宮崎県生まれ。1979年、陸上自衛隊入隊。自衛隊沖縄地方協力本部長、東部方面総監部幕僚長、第三師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などの要職を歴任。特殊作戦群の創設にも関わる。2015年、陸将で退官。現在、千葉科学大学及び日本文理大学客員教授。小説『オペレーション雷撃』が好評発売中。
陸上自衛隊のミリ飯3つのコンセプト
わが国の自衛隊で支給されているミリ飯(ミリタリーご飯)にはどのようなものがあるか、ご存じでしょうか?
海上自衛隊のカレーや航空自衛隊の空上げ(とりの唐揚げ)などは度々メディアでも取り上げられたことがあるので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。「では、陸上自衛隊は?」。そう聞かれてピンとくる方はあまりいないのではないでしょうか。
陸上自衛隊のミリ飯もまた非常に美味しく、バラエティ豊かです。そこで今回は、陸海空自衛隊で最大の隊員数を有する陸上自衛隊のミリ飯をご紹介したいと思います。
陸上自衛隊の組織の主体は「人」です。そのため、隊員一人ひとりの「精強性」が求められます。ここでいう「精強性」とは、隊員として飛び抜けて強いこと。すなわち隊員には強靭な肉体が必要になります。
加えて、陸上自衛隊は全国各地に駐屯地が存在しているため、「地元に根付いた存在」でなければなりません。
これらの2つを踏まえて、陸上自衛隊の給食は、
「戦士としての体づくり」
「地域の名産品・特産品の活用」
「隊員の要望を取り上げたバラエティ豊かなメニュー」
という3つのコンセプトをもとに作られます。
野外で食べる時は?
陸上自衛隊の食事は、駐屯地で食べる「駐屯地給食」と訓練や災害派遣など野外で食べる「野外給食」の2種類に大別されます。駐屯地の食事は、全国各地の特色ある食材を使用しているため、とても美味しいですが、今回の記事では、より陸上自衛隊らしい、野外で食べる「戦闘糧食」をご紹介したいと思います。
野外で活動する自衛隊員には、準備の時間がある時や長期間の活動になる場合には、野外炊具を使用して温かい食事を支給します。野外炊具には、同時に200人分の主食及び副食を45分以内に調理できる能力があります。「多く」「早く」作れるわけです。
戦闘糧食には「戦闘糧食Ⅱ型」と「非常用糧食」の2つがあります。OD色(オリーブ・ドラブ、自衛隊の標準色)のビニール袋に入って見た目は同じですが、保存期間が「戦闘糧食Ⅱ型」は1年、「非常用糧食」は3年と異なります。
戦闘糧食Ⅱ型
五目飯、ドライカレー、肉団子、とり野菜煮……
そして、何よりもメニューが違います。
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