【新連載】名品探訪「寛ぎのジャケット」
世界中から選び抜いた、装いの名品を紹介する新連載。洒落心を搔き立て、人生に彩りを与える鍵が今ここに。/文・山下英介、写真・渡辺修身、スタイリスト・四方章敬、撮影協力・宮野古民家自然園
Brunello Cucinelli(ブルネロ クチネリ)
イタリア・ウンブリア州の小村、ソロメオを拠点にもつ、新時代のラグジュアリーブランド。英国カントリーを彷彿させるジャケットも、こちらが仕立てれば実に柔らかく軽快な着心地。豊かで満ち足りた気持ちにさせてくれる一着だ。¥583,000/ブルネロ クチネリ(ブルネロ クチネリ ジャパン ☎03-5276-8300)
イギリスで生まれ、世界各国で開花したジャケットの文化
今日私たちが着ているテーラードジャケットは、19世紀後半のイギリスでほぼ完成を遂げたものだ。当時の紳士服における流行の発信源は、空前の繁栄に沸くロンドン。その中心地にある通り「サヴィル・ロウ」には高級注文紳士服店が軒を連ね、世界各国から名士が集った。
こうして紳士服の国際標準となったジャケットは世界各地に広まり、その文化に沿った進化を遂げていく。産業の合理化が進むアメリカでは、仕立てを簡略化しつつも万人の体型に合う、軽快で快適なジャケットが生まれ、20世紀初頭には“アメリカントラディショナル”文化として昇華する。それに対して高度な手仕事の文化が根付いたイタリアでは、工芸品のようなジャケットがつくられ続けその柔らかな仕立てで世界を席巻。1990年代から始まるカジュアル化の流れとも相まって、テーラードジャケットの主流として今もなお君臨しているのだ。
紳士のジャケットは軽く、 柔らかに進化した
1930’s U.K.(写真右端) “王冠を賭けた恋”で知られる元英国王のエドワード8世は、洒落者としても有名。彼が1930年代に着ていたジャケットはデザインこそ現代的だが、乗馬服を彷彿させる構築的な仕立て
©Reg Burkett/Keystone/Getty Images
1950’s U.S.A.(写真中央) アメリカ大統領のジョン・F・ケネディ。軽快なブレザーにコットンパンツ、スリッポンというトラッドスタイルでカメラの前に立つ彼の清々しい佇まいに、世界中の若者たちは熱狂した
©Bettmann/Getty Images
2000’s ITALIA(写真左端) フェラーリやアリタリア航空の会長を務めた実業家のルカ・ディ・モンテゼモロは、イタリア屈指のダンディ。カーディガンのように柔らかなジャケットを気負わず着こなす姿は、実に粋
©imago/aflo
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