ビッグデータが教える「百寿者の食卓」 新井康通
日本は、世界でも類を見ない「トップクラスの長寿国」です。「百寿者」「センチナリアン」と呼ばれる100歳以上の高齢者の人口は、昨年、9万人を突破しました。
私が所属する慶應義塾大学医学部では、1992年に百寿者研究を開始して以来、30年以上にわたり百寿者、超百寿者(105歳以上)、超高齢者(85歳以上)の研究を続けてきました。同年に大ブームとなった「きんは百歳、ぎんも百歳」というテレビコマーシャルをご記憶の方も多いのではないでしょうか。きんさん・ぎんさんのように当時はきわめて希少な存在であった「百寿者」は、いまや身近な存在となりつつあります。厚労省の統計をみると、100歳以上の高齢者の数はうなぎ登りに増加し、この30年の間に22倍になりました。
社会経済が発展し医療技術が飛躍的に進歩する現代社会で、長寿化は日本だけでなく世界的な傾向です。現在、日本人男性の平均寿命は82歳、日本人女性は88歳。長寿化はさらに進行し、2040〜2045年頃には日本だけでなく香港、韓国、スペイン等の長寿国の女性の平均寿命は90歳を超えると推計されています。
「百寿者」「超百寿者」に加え、110歳以上の方を「スーパーセンチナリアン」と呼びます。その人数は5年に1度の国勢調査で発表されますが、2020年調査では141人でした。100歳に到達した人の中でもスーパーセンチナリアンになるのは500人に1人しかいません。総人口に占める割合でいうと、百寿者が1600分の1、超百寿者が2万分の1なのに対し、スーパーセンチナリアンは90万分の1。まさに、長寿の「エリート中のエリート」ですね。
健康長寿の「共通項」とは
「百寿者」と聞くと、メディアで取り上げられるような健康で元気なおじいちゃん、おばあちゃんを想像する方も多いのではないでしょうか。
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