文藝春秋が報じた世界の肉声 小倉孝保
人類が第二次大戦後、世界規模の戦争を回避しえた理由の一つは、過去の失敗を教訓としたことだ。
第一次大戦が終わった時、敗戦国ドイツに多大な賠償金を課したことでナチスの台頭を招いた。米国は議会の反対で国際連盟に加わらず、孤立主義を強めた。そのため当初、欧州の混乱に十分な関心を払わず、結果的に二度目の大戦につながる。
この反省から、第二次大戦では敗戦国に過大な負担を強いず、国連本部をニューヨークに置くことで、米国を国際的な課題に関与させる環境を整えた。独仏両国が和解を進めることで、対立の芽も摘んだ。
先の大戦が終わって78年になる。米国を中心とした戦後秩序が揺らいでいる。英国は欧州連合(EU)から離脱し、ロシア軍が隣国ウクライナに侵攻した。中国は強国化の道を歩み、米国との対立が深刻化している。
混沌とした世界の向かう先を占うことは難しい。ただ、先人たちが残した記録にヒントはある。文藝春秋はこの100年、世界の指導者や研究者の手記、発言を多数紹介してきた。その声に耳を傾けることで、国際状況の現在地を確認し、対処法を考えることは可能だ。
ナチス・ドイツ幹部で最も謎の多い人物はヒトラー総統の側近、マルチン・ボルマンである。最後までヒトラーのそばにいながら行方不明となり、ニュルンベルク裁判では欠席のまま死刑判決を受けた。今では総統の死亡直後に自殺したとみられている。(人名等の表記、記事の引用は一部を現代風に改めた。以下同)
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