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片渕須直 『枕草子』に挑戦する
文・片渕須直(アニメーション映画監督)
2005年頃だったと思うのだけれど、アニメーションプロデューサーの丸山正雄さんのところに行ったら、何冊か本が積み上げられていて、「どれでも好きなのを原作にして、アニメにしてやって」といわれた。漫画だけではなく絵本だとか小説も交えられていて、手にとって見たのが髙樹のぶ子『マイマイ新子』(新潮文庫)だった。『マイマイ新子』は、小学校3年生の髙樹さん自身が主人公のモデルであるらしく、昭和30年の山口県防府(ほうふ)市国衙(こくが)という土地の周辺が舞台となっていた。主人公新子の祖父が登場してはこのようなことをいうのだった。「何もないただ青麦の畑が広がっているだけにみえるけれど、1000年前には国の都じゃったんじゃ」。周防国の国府があったから防府なのだった。
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