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近藤サト 『曾根崎心中』が刺さる

文・近藤サト(ナレーター、日本大学特任教授)

「げにや安楽世界より。今此娑婆に示現して。我らがための観世音」
 
 小学校高学年から岐阜の山中で世界文学全集や日本文学全集に読み耽っていた私は、谷崎や三島の描く大都会・東京への憧れに胸を膨らませていました。上京は1987年。バブル絶頂期です。日大芸術学部という変わり者集団の中で過ごしたせいもあったのか、華やかな時代には、恩恵を享受しつつどこか懐疑的でした。そこへグッと刺さったのが、近松門左衛門曾根崎心中』です。

近藤サト氏 ©文藝春秋

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