「虫ついてるよ。取ってあげる」ーーわいせつ魔が“仲間”に教えた、おぞましい“手口”
「今年こそ共犯しましょう」
「ですね、やりやすい子が一人でいればいいんですがね」
2014年8月から逮捕前月の2018年8月まで、札幌市及び東京都内において4歳から8歳の女児15名に対し、計23回のわいせつ行為を続け、強制わいせつ致傷などの罪に問われていた池谷伸也被告(45)。彼はネットで性的嗜好を深める中で出会った“仲間”に、数を重ねるごとに巧妙になる“犯行手口”を紹介していた。犯行当時使用していたアプリの履歴には、冒頭のように犯罪をほのめかす発言も残っていた――。
ルポ『つけびの村』が話題を呼んだフリーライターの高橋ユキさんが、「事件」を通して現代の子どもたちを取りまく「危険」を綴る。
★#1を読む。
衝動を強めた“仲間”たちの存在
建設作業員として働いていた池谷被告が、ネットで子供の動画像を閲覧するようになったのは、20年ほど前からだという。
「なぜ私がこのような事件を起こしたか。一言で言えば性欲をコントロールできていませんでした。もともと私は成人女性と交際し、セックスしていました。しかし、好んで見ていたのは子供の姿です。
インターネットでは二次元のコンテンツを見ていましたが、だんだんと実際の子供に興味を持つようになりました。公園で子供が遊ぶ声が聞こえると衝動が抑えられず、ベンチに座って子供を見ながら自慰行為をしていました。そのうち子供が好きな人が集まるサイトから画像をコレクションするようになりました。ですが画像の女の子はほとんど外国人。私は次第に日本人の画像を探すようになりました……」(調書より)
池谷被告に対する裁判員裁判は2020年7月から東京地裁立川支部で行われた。裁判員裁判となったのは、被害女児のひとりがPTSDを発症したため、強制わいせつ致傷罪でも起訴されたからだ。同月、懲役18年(求刑20年)の判決が言い渡されたが、池谷被告は判決を不服として東京高裁に控訴している。
池谷被告がいる東京拘置所
「動画像の見過ぎと、画像掲示板ではなく普通の掲示板……趣味を持ったものが集う場所があり、そこを閲覧していたところ、衝動が尚更大きくなっていきました」(7月17日 被告人質問での証言)
池谷被告がダークウェブで女児の動画像を閲覧していたのは前回のリポートで触れた通り。彼は、ある掲示板の常連だった。それは一般的な検索エンジンで閲覧できるサーフェイスウェブ上にいまも存在する、小児性愛者が集まる掲示板だ。
ここで複数の“仲間”と交流が生まれ、一部はサーフェイスウェブから『BAND』というアプリに移った。
池谷被告「普通に……わかりやすく言えば、LINEと変わらないアプリです。ここで普通にトークしたり画像を見せ合ったりとかしていました」
弁護人「あなたの撮影した動画を彼らにも見せていた?」
池谷被告「そうですね、はじめはあのう、一応、モザイク入れて、静止画を撮って……まあ、自分が撮ったものだけ、みたいな感じでやったりしました」(7月17日 被告人質問での証言)
彼は多数の女児に対してわいせつ行為に及んでいただけでなく、犯行時の様子をスマホや小型カメラで撮影していた。この犯行動画を、『BAND』に集まった “仲間”たちと共有していたのである。
罪の意識を植え付けて
『BAND』のログには、池谷被告が送信したこんな文章も残っていた。ペドフィリアにかけたのか、ハンドルネームは「ペドロ」だ。
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