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地球温暖化は心配ない 杉山大志
文・杉山大志(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
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ロシアのウクライナ侵攻は、G7と露中の新冷戦の本格的な始まりを告げるものだった。過去30年間、「冷戦は終わった。地球規模の協力で温暖化が解決される」という物語が先進国を中心に共有されてきた。だが現実には露中とG7の「新冷戦」が始まった。その緒戦のウクライナ戦争で明らかになったのは、脱炭素に傾倒した欧州のエネルギー政策が完全な失敗だったことだ。再生可能エネルギーに幻想を抱き、自らの石炭、石油、天然ガス産業を抑圧したことで、ロシアのエネルギーに依存することに。経済制裁などたかが知れていると読んだロシアは開戦し、慌てた欧州は世界の化石燃料を買い漁った。そのせいで、世界はエネルギー危機に襲われ、世界中の国が化石燃料の増産に舵を切った。脱炭素はもはやお題目だけになっている。
特に、中国は安いエネルギーで勝負してくる。発電は安価な石炭火力が主力だが、今後数年で新設される設備容量は270ギガワットに上るとされる。日本全ての石炭火力の5倍以上だ。さらに、2030年には米国を抜いて世界一の原発大国となろうとしている。
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