米国大富豪の若返り大作戦 大野和基
米国IT大手アマゾン創業者のジェフ・ベゾス(59)は世界で初めて資産が2000億ドルを超えた人物だ。彼の夢は何なのだろうか。2021年にCEOを退任するにあたり、株主に宛てた最後の手紙に、生物学者リチャード・ドーキンスの著書の一節を引用してこう綴っている。
〈死を回避することに、取り組まなければならない。積極的に死を避けようとしない生物は、やがて周囲と融合し自律的な存在ではなくなってしまう。死とはそういうものだ〉
米カリフォルニア州シリコンバレー近郊のロス・アルトス・ヒルズ。名門スタンフォード大学に隣接し、山間には数百万ドル級の高級住宅が建ち並ぶ。ユーリ・ミルナーの1億ドルの自宅は、そのなかでも桁違いに広い。軍事基地のような大豪邸だ。
61歳のミルナーはロシアのインターネットサービス企業メイルルーへの投資で莫大な資産を築いた。昨年、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシア国籍を捨てアメリカ国籍を取得している。
2020年10月のこと。「MITテクノロジー・レビュー」誌の編集者であるアントニオ・レガラードによると、ミルナー宅の敷地内のホームシアタールームで、ある“極秘集会”が2日間にわたって開かれた。
集められたのは老化研究のトップ研究者たちで、集会のテーマは「人々を若返らせるためのバイオテクノロジーの可能性」。研究者たちは日頃の研究成果を持ち寄り発表した。
それから1年2カ月後――。
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