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清武英利 朝駆けをやめたあとで 記者は天国に行けない16
ぞっとするような夏だった──。“証券業界の闇”をひとり暴き続ける/清武英利(ノンフィクション作家)
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駆け出しのころは、来る日も来る日も書いていた。取材した記事が翌朝の新聞に掲載されるのが嬉しくて、夢中で書いた。新聞による権力監視と社会正義の追求を心から信じ、1日に十数人に会った。次から次へと大勢に話を聞いて、頭の芯がぼんやりとしてしまう“人酔い”というものがあることを知った。
やがて、自分の記事が人を傷つける場合があることに気づき、周囲を見渡せるようになった。「これは書くな」「あの取材はやめておけ」と告げられるようになった。記事をめぐる上司との口論が増えた。
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