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青色
青色が好き。私は青色が好き。
小学生あたりから、私は何を選ぶにも青色のものを選ぶようにしてきた。そのくらい青が好き。
「よよこちゃん、コンパス忘れちゃったの。それで隣のクラスの男の子に借りたの。」
小学4年生のとき、青いコンパスを持った私に、クラスの子が言ってきたことがある。当時小学校で購入させられるコンパスの色は、赤か青の2択だった。必然的にクラスの男の子は青色、女の子は赤色を購入した。私を除き。
青色の鳥は幸運を運ぶのに、私の青色のコンパスは何故不自然を運ぶのか。しっかりコンパスを持って来たのに、忘れたと思われるのはなんだか損だと私は思った。
あのとき、コンパスのカラバリがもっとあれば、みんなが赤か青かの2択を迫られなければ、私のコンパスは普通のコンパスだったのだろうか。みんなが好きな色のコンパスを選べれば。そもそも好きな色ってなんだろう。どんな色が好きな色なんだろう。
推しのアイドルの担当の色?自分に似合う色?大好きなあの人に褒められた髪の色?初めて自分のお金で買ったエレキギターの色?
好きな色って、その人にとって神聖な色なのではないか。見ていると心が洗われるような、見上げていると手を差し伸べられるような、そういう色。
私にとって、世界で一番神聖な色だと思うから、私は青が好き。
きれいになりたい。からだの深く。こころの芯まできれいになりたい。私を燃やしたとき、その炎が青く燃えるほど、きれいになりたい。
ザリガニはいいな。青魚を食べれば青くなれる。カブトガニはいいな、あのつるっとしたからだに巡る血が青くて。もし私の血が青ければ、石につまずいて足から血が滲んでも、石に怒らないだろう。
Gコードの音が好き。Gは空色の指で弾くと幼稚園の先生が言っていたから。初めて好きになったあの人は、初めて会ったとき、淡い青のワイシャツを着て、ブルーアワーという名前の香りを纏っていた。私が初めて髪をブリーチしたとき、迷わず青色を入れた。
海が好き。海の奥の、空の青と海の青がまざりあう水平線。どれだけ近づいても近づけないあの際に入り込めたら、どんなに幸せか。
私がいつか肉体を手放し、骨だけになったら海に撒いてほしい。そうすれば空と海と魚の青を吸収して、そして本当にあの水平線になれる。あの際になれる。
そんなことを夢見ながら、今日もチャイナブルーを飲む。