古生物飼育小説Lv100 第八十七話をサイトに掲載しました
4ヶ月ほどもかかってしまいましたが、今回から新たな長編「武蔵野フォッシリウム編」が始まりました。今回もよろしくお願いいたします。
以下はネタバレ込みの解説です。
ここ最近かなり擦ってきていたアキシマクジラが中心にはなっているものの……、生きている姿では登場しないという長編です。
この「Lv100」の連載ではずっと地域の化石や自然が重要だという話をしてきましたが、自分の住んでいる地域である多摩地区に関してはそんなに注目すべき化石はないものと思って取り上げずにいたんですね。
そんな中でアキシマクジラを知ったものの、全長13.5mのクジラですからね。飼育できるものとして扱うことは考えられなかったのですが。
「オロチ編」では陸生とはいえアキシマクジラと同じくらいの全長のタンバティタニスの飼育に結局大成功していて、「それじゃあ飼えないものは飼えないなりにどうするか」ということをオロチ編の後にやろうとしたもののそれほど掘り下げられなかったのですね。
そこで、もう本当に飼えないけど、郷土愛ともがっちり絡み合っていて放っておくことができないものとしてアキシマクジラを扱うことになったわけです。
アキシマクジラを筆頭に多摩地区および23区内(ナウマンゾウなどがありますね)の古生物を扱うシリーズにして、普通の短編……と見せかけて裏ではアキシマクジラの取り組みが進んでいる隠れ長編……みたいにしようかと思ったんですが、構想をまとめている間に主人公3人の取り組みをしっかり追いたくなって、ちゃんと長編としてやることに決めました。
本当は短編のほうが皆さんに気軽にお読みいただけるんですけど、やりたいことを優先すべきかなと。
「赤星炎(ほのお)」というキラキラ通り越してギラギラしたありえん名前も、元はずっと以前の連載「デニムスカイ」の続編の主人公として考えていた名前で、ここで力のある主人公にしたくて使うことにしてしまいました。こんな風に力を込めているせいか割と自分の本音らしきものが漏れ出しているところがありますね。
アキシマクジラについては、本編中で言っているとおり現生のコククジラと実質見分けがつかないのです。
コククジラには半端ではない特異性や面白みが確かにあります。ヒゲクジラ類なのに水ではなく泥を濾過して餌を摂っているので色々ヒゲクジラ離れした特徴がありますし、北米大陸西岸を縦断するような長い渡りをするのもダイナミックです。こうした特徴をアキシマクジラもおそらく持っていました。
それとはまた別に、アキシマクジラの周辺の地質や化石こそがアキシマクジラの立場を特徴づけるわけです。
コククジラ属としての面白みも小出しにしていくことになりますが、アキシマクジラの姿を浮き彫りにする武蔵野台地の古生物達のこともどんどん紹介していければと思います。
すでに飼われているヒゲクジラ類として第五十五話に登場したイサナケトゥスが再登場しました。(イサナケトゥスを登場させた後でちょっと勇み足だったかな~って思っていたので、まさかまた触れることになるとは思っていませんでしたけどね……。)
アキシマクジラがコククジラそっくりなのに対して、イサナケトゥスはすでに現生のヒゲクジラ(特にナガスクジラ類)によく似ていたとはいえ現生のグループには属さないのですね。
アキシマクジラよりずっと遡るとやけに小さいヒゲクジラがいたっていうのもまたクジラの歴史の面白いところですが、今回は主役3人を揺さぶる役でした。
イサナケトゥスが再登場するから第五十五話のサブタイトルがレビヤタンだったのに基づいて今回のサブタイトルが「化鯨(こっちがアキシマクジラ…骨のままなので)及びレビヤタン再び(こっちがイサナケトゥス)」なわけですが、レビヤタンって悪魔として扱うときは嫉妬をつかさどる悪魔なんですよね……。まさに嫉妬を煽られているわけです。
今回の長編で数少ない恐竜の出番ですが、プシッタコサウルスには赤星と成瀬の嫉妬をさらに揺さぶる役として個人のペットになって出てきてもらいました。
いや、色やら羽毛やら胃石やら、みっちり描写する甲斐のある情報量を持っているはずなんですけれどもね。河原にペットとして出てくるのにあまりにもちょうどよくて。噛まれるのにだけは本当に注意しないといけないはずです。
ネアンデルタール人の回のような変則的なことを長編でやるという我儘なシリーズですが、古生物飼育世界の中ではこうした取り組みが日夜方々で行われているはずです。
おかしな三人の冒険、そして「武蔵野フォッシリウム」とは何なのかを見届けていただければと思います。
あっそうだ。珍しく実在の施設であるアキシマエンシスの名前を出していますが、古生物の紹介になるということで実名で登場させる許可をいただいています。ご恩に報いるために昭島および多摩地区の古生物のことが伝えられるように頑張りたいです。
次回は海の様子を探るのにふさわしい生き物に触れていきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?