古生物飼育連作短編小説Lv100 第六十六話をサイトに掲載しました
というか前回の告知をこっちでやってないですね!すみませんでした!ともあれよろしくお願いいたします。
以下はネタバレ込みの解説です。
第九集分のネタ出しの時点では三葉虫を掘り下げる話をやる予定ではなかったんですけれどね、こういうのが出てきてしまいまして。
行進する三葉虫の珍しい化石、集団行動の起源か? - ナショナルジオグラフィックス
なんとこれはイセエビの行列そっくりではないかと。前々からイセエビは自然では行列になるものの水族館では行列が見られないのが気になっていたので、その辺がこの行列三葉虫アンピクスで表現できるなと思うとどうしても気になってしまい、アンピクスのみでなく三葉虫を改めてきちんと掘り下げるお話をやることになったわけです。
それで、こうして三葉虫の行動の痕跡が確認されたならということで、他にも三葉虫の行動や生態の痕跡があるので一気にまとめて登場させました。
そんな中やたら情報があったのは環形動物みたいなものを捕食した痕跡や幼体がプランクトン生活をしていたらしいという情報(リンク先の真ん中あたりです)のあるイソテルス属、特に最大種のイソテルス・レックスでした。
イソテルス・レックスの記載した少し後くらいから育てていたものを新展示室と共に満を持して大公開、さらに他の三葉虫も登場、という流れですね。水族館ではなく博物館として色々な細部の展示をやりやすくしています。
生態の痕跡に関するネタということでちょうどよかったのがこのメギスタスピスの肢の棘と足跡化石が合致しているという話でした。三葉虫の痕跡といえば足跡化石クルジアナです。国立科学博物館にもレプリカがありますし、昔あった科博の特別展で見て印象に残っていたのです。
トリアルツルスも初期に適当な感じで出していたのでもうちょっと生態をちゃんと推測したいと思っていたのですが、卵を頭から産んだことが分かったという論文があったので(こうやって書くとすごく変なのでtypoでもしたかと思うでしょうけれども)これもちょうどよかったです。
それから気になっていたのがオンニアなんですが、前にハルペスを出したときも頭の縁で餌を濾過したという説がハルペスにもあったもののハルペスの頭の縁に開いた孔は貫通していないかしていても小さすぎるみたいで濾過説の採用は見送ったものの、オンニアやクリプトリススの縁の孔は確かに貫通しているようだったので、ハルペスのリベンジみたいな感じです。
ところで世界最大のイソテルスが日本の施設にいる理由ってなんだろう?って思ったときに、日本国内でも東日本、特に三陸を中心に三葉虫の歴史の終盤のものがちらほら見付かっているんですね。そういう三葉虫の研究がきっかけで三葉虫が得意な施設になっていると仮定できます。
ただしこれはごく地味なものなので実際にそういうのを手掛けている人達同士は惹かれ合うんじゃないかと。第九集でテーマにしようとしている「コミュニティ形成」と合致します。
そんなわけで、第四十二話に登場した、高校生にして生物部で国産のペルム紀の三葉虫シュードフィリップシアの飼育研究を手掛けている麻衣と仲間達が再登場して、岩手県産の石炭紀の三葉虫リンギュアフィリップシアを手掛けている学芸員と出会うということになったわけです。
この形に持っていくまでの間に妙に迷いまして、カブトガニとの比較でいこうかなーなどとも思って組み立ててる時期もありましたが、結果的に三葉虫のみのストイックな形になってよかったな……と。第四十二話は仁奈、今回は麻衣が主役でしたが、しじみ目線の話は難しそうなのでやらないと思います。
岩手の三葉虫が出てくるので岩手県立博物館に行きたかったんですが……岩手は遠いです!いつか必ず!
次回は哺乳類のお話になる予定です。