ep.1 つむぐ
朝のニュース番組のエンディング。お天気キャスターのお姉さんは厚手のコートに身を包み、寒波の到来を告げている。エンディングテーマは話題沸騰中のYOASOBIだ。
「パパ-、まゆいくらちゃんにあいたい」
「そうか、じゃあサンタさんにお願いしてみたらどうだ?」
「うん!そうする!」
夕食を食べ終えると、まゆは早速サンタさんへの手紙を書き始めた。
「さんたさんへ いくらちゃんに合いたいです」
習ったばかりの字でそう書き終え、手紙を大きな靴下の中に入れると、ふぁーとあくびを1つしてすやすやと寝息を立て始めた。
ん…ここはどこ?
「まゆちゃん」
振り返るとそこにはあの人たちがいた
「まゆちゃん、こんにちは!」
「いくらちゃん!あやせさん!」
「まゆちゃん、私に会いたい?」
「あいたい!」
「じゃあ会いにおいで!待ってるよ!」
25日の朝、まゆはガバッと起きると、「いくらちゃん?」「いくらちゃーん!」と部屋の中を探し始めた。
ベッドの下、クローゼットの中、全部探したけれどもちろんいるはずもなく。まゆはがっくりと肩を落としたまま、リビングへ向かった。
「おお、おはよう。朝から元気だなー。なんかいいことあった?」
なぜかパパがいつもより明るく言うけれど、まゆはそんな気持ちにはなれなかった。
「いくらちゃんいなかった…」
半泣き状態でそう言うと、パパが頭をポンとたたいてこう言った。
「まゆ、テレビ見てごらん」
言われたとおりに画面に目をやると、思わずアッと叫んだ。
YOASOBIがいる!新曲だ!
微笑みながらインタビューに答えるYOASOBIの2人の姿に、まゆの瞳はきらきらと輝いた。
「クリスマスに新曲だなんて、いいプレゼントもらったな!帰ってきたらパパのスマホで聴こうな。」
「やったぁ!きょうははやくかえってきてね!ぜったいだよ!」
そう言ってまゆはパパと指切りげんまんをし、鼻歌混じりでスキップしながら洗面所に向かった。
「ママ、これだれのきょくなの?」
「これ?この人たちはね、YOASOBIっていうんだよ。ママが昔好きだったんだー」
「そうなんだ!うたうのじょうずだね!おあそび!」
「おあそびじゃなくてYOASOBI、だよ笑 ほら、もうすぐ着くから降りる準備してね」
「はぁい!」
YOASOBIの流れる車内に、ひときわ大きな返事が響く。そろそろ高速の出口が見えてくるはずだ。
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