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「未解決事件は終わらせないといけないから」で泣きたい人は先に「リーガルダンジョン」をプレイしてほしい

 言いたいことをタイトルに込めました。


Ⅰ.全体的な感想

1.プレイ時間

 3時間程度でクリアできました。ほぼ同額・同じ作者のリーガルダンジョンが7~8時間程度かかった覚えがあるので、払った金額分いっぱいプレイしたい!という人向けではないです。

2.プレイ感覚

 バラバラになった証言を読み、発言者・時系列が正しくなるようにはめていく感覚はADVというよりもパズルゲームの感覚に近いです。何も考えずになんとなくの流れではめていこうとすると詰まるのですが、突破口となるアイデアに気付くとパチパチとはまっていく時のカタルシスは大変気持ちよかったです。

3.難易度

 そこまで難しくないです。少なくともリーガルダンジョンで全てのEDを見るよりは簡単でした。

4.全体的な感想

 面白かったです。
 ミステリー的には一発ネタの仕掛けでしたが、その一発ネタがただの要素整理ゲーに終わらせなくミステリーたらしめていたな、と思います。からくりが分かったあとにあらゆる証言・証言者の見え方が変わる、ミステリにおける"反転"の良さがあったな、と思います。
 でも次の作品はswitchじゃなくてsteamで買ってやります……流石にちょっとUIがswitch向けじゃなさすぎた……。

Ⅱ.未解決事件は終わらせないといけないからで泣いた理由

①単体ではそこまで泣ける作品ではない

 と思います(個人的主観)
 「誰かが誰かのためを思った上での行動・偽証だった」という逆藪の中的な真相+個人の記憶という完成図の不確かなパズルピースの整理、はゲームとして面白いですが、その真相自体はそういうことがあったんだな……と言う感じで泣けるというほどドラマチックなものではない、と感じましたし(個人的にはむやみにドラマチックにしない抑え方は誠実で好感持てますが)、このゲーム単体だと清崎蒼=冒頭に出てきたプレイヤー側の人、という以上のことが分からないので、ラストの展開・なぜEDが2つ分かれたのか、とかよくわからないのでは……。

②清崎蒼とは何者なのか

 まずはリーガルダンジョンの感想を貼っておきます。ネタバレしかないです。

 リーガルダンジョンとは「成果至上主義という社会構造が腐敗を招く」ということをゲームと言う媒体でインタラクティブに体験させた作品だった、と思っています。

 リーガルダンジョンにおいて清崎蒼は警察の仕事を粛々とこなす警察官でした。警察官として正しい仕事をすることで出世していきました。
 しかし警察官として正しい仕事とは、時として人道に悖る行為でもありました。
 未解決事件は終わらせないといけないから、の清崎蒼がリーガルダンジョンにおいてどのEDを迎えた後の清崎蒼なのかはわからないですが(未解決事件は終わらせないといけないから、で扱われた犀華ちゃん誘拐事件で担当捜査官だったことを踏まえると流石に大出世EDではないでしょうが)少なくともすぐに警察を辞めずに一定以上の期間は警察官として生きていたのではないか、と思います。
 ちなみにリーガルダンジョンでは警察官として正しくなくても人道に則った仕事をすると、怒られるかクビになります。理不尽!

 振り返っても、ゲーム中のヒント屋(AIあおい)に従うと「警察社会において百点、人道において零点」ルートに直行する、それ以外のルートに行くには自分で考えなければならない、と言うつくりは本当によく出来ています。自分らしく・人間らしく生きていくには考え続けることが大事なんだ、とリーガルダンジョンを通して感じました。
 

③未解決事件は終わらせないといけないからは清崎蒼にとってどういう物語だったか

 清崎蒼の魂の救済だった、と解釈しています。

 リーガルダンジョンにおいて警察の仕事とは成果至上主義と言う警察社会構造に則った手続きであり、そこに気遣いややさしさといった人の心が介在するものではありませんでした。
 清崎蒼にとっても自分が警察官としてしてきた仕事とはそういったものであり、だからこそ心をすり減らして未解決事件は終わらせないといけないからの冒頭の姿となったのだ、と思います。

 犀華ちゃん誘拐事件についても、清崎蒼にとっては数ある仕事の一つであり、未解決事件としたことも踏まえてただの手続きでしかなかったのだと思います。
 ですがそうではなかった。ノーマルEDで女性警官になった宮城犀華が心を病んだ清崎蒼に言ったように、犀華ちゃん誘拐事件を通して清崎蒼は確かに関係者の心を救っていたのです。
 リーガルダンジョン時代では得られなかった「自分が手掛けた仕事が人のためになる行為だった」、という実感を、未解決事件は終わらせないといけないからで清崎蒼はようやく掴むことが出来たのです。

④EDの分岐点は何なのか

 ノーマルEDはおばあさん=清崎蒼、女性警官=宮城犀華で、真EDはおばあさん=松田理佐子、女性警官=清崎蒼(退職して別の仕事をしている)でした。人物の正体どころか時系列も変わっています。

 真EDは全ての証言を証言者・時系列順に正解の位置に整理することで見ることができます。
 言い換えると、全部の証言をパズルで正解しなくても事件の真相は解けるしEDは見れるわけですね(ノーマルEDだけど)。ゲームの攻略を仕事と例えると、「仕事を隅々まで完璧にこなさなくても終わらせることはできる」ということです。
 つまりノーマルEDを超えて真EDにいくまでの手続きは「終わらせる上ではやらなくてもいい仕事」ということになります。
 未解決事件は終わらせないといけないからはリーガルダンジョンと地続きだろう世界ですから、警察として仕事をこなして出世していくにあたって、やらなくてもいい仕事はやらずに片付けていった方がスムーズに事が進みます。やらなくてもいいことをやるとAIあおいから怒られました。
 
 これらを踏まえると、未解決事件は終わらせないといけないからで「警察としてはやらなくてもいい仕事」(ノーマルED条件達成した上で残っている証言整理)を「人として最後まで丁寧にちゃんとやる」ことが警察社会構造からの解放であり、清崎蒼は心を病んでしまったノーマルEDより早くに警察を退職することができた(ことで真EDにたどり着けた)ということではないでしょうか。
 退職したのに警官制服まんまなのはどうなの? とか過去に戻って証言整理をした結果現在軸の状況に影響が出るというのは現代社会ミステリとしてちょっとずるくないか、とか思うところはありますが、リーガルダンジョンから続く「社会構造が人の道を踏み外させる」という問題の指摘として良い分岐だったな、と思います。

Ⅲ.終わりに

 そんなわけで未解決事件は終わらせないといけないからの前にリーガルダンジョンをプレイしてほしいわけですが、リーガルダンジョンって単体だと後味悪いし決して泣ける作品ではないんですよね……。

 そういう後味の悪さも含めて好きですし、両作品未プレイの人には「合わせて2,000円買ってプレイして、すごい泣けるから」という形でおススメしますが、もし未解決事件は終わらせないといけないからを先にプレイした人にリーガルダンジョンを勧めるとしたら、どう勧めるべきかな……基本的にスッキリしてエモい感じの未解決事件は終わらせないといけないからの後味とは真逆ですし、難しいですね。

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