昭和クローズドサークルホラーミステリBL「大穢」体験版 感想と考察
戦後10年程度の昭和、クローズドサークル、連続殺人事件の言葉に惹かれて十年程度ぶりにBLゲームに手を出しました。
「大穢」、英語名だと「Owen」。さらに死んだ女優の名は大江杏。アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」を知っていたらにやりを通り越してにやにや笑いが抑えられないミステリオマージュぶりです。素敵ですね。素敵すぎて発売前から気になって体験版をうきうきでプレイしました。
先に自己紹介すると、ミステリは大好き(だけど古典はそこまで触れていない)、BLは好きだけどBLゲームは十年程度ぶり(過去にプレイしたのは「咎狗の血」「鬼畜眼鏡」「マスカレード 〜地獄学園SO/DO/MU〜」の3作のみのはず)という者です。ミステリー要素の強いBL、求めていた……!
以下、体験版をプレイした感想と現時点での考察です。体験版は音声飛ばしつつでも5時間程度ありました。
※アガサ・クリスティー著の「そして誰もいなくなった」のネタバレが含まれています。ネタバレを一切踏みたくない未読の方は避けてください。
Ⅰ.感想
1.全体的な感想
参加者10人のホラー路線マーダーミステリー的(もしくは10PL秘匿HOあり・PvP要素ありのミステリ強めTRPG的)と言う趣で、事前の想定よりもめちゃめちゃミステリだ……!!面白い……!!5時間以上もプレイしたのにHシーンがない……!?(体験版時点では15禁であるということを記載していましたがそれに気づかなかった人間です)
何しろ最後にプレイしたのが「マスカレード 〜地獄学園SO/DO/MU〜」だったので、5時間もプレイしても全くHしそうな気配がなく恋愛要素も一部を除いてほぼない、ホラーミステリとしてのストイックさに驚きました。マスカレードなら冒頭いきなりHしてたしその後立てこもり犯に指示されて強制Hシーンに入っていたはずなのに……!
それはさておき、引っ掛かりなくすらすら読めるテキスト、個性豊かなキャラクター、彩度の低さ・くすみ具合が統一されたビジュアルと、体験版時点でも高品質さが伝わるゲーム体験でとても楽しかったです。
何より戦後10年の雰囲気作り(時代背景がほぼ同一なので「ゲ謎」(鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎)が近年のコンテンツでは一番雰囲気が近いかも)が良くて、当時の空気がゲーム画面から漂ってくるようでした。くすんだ雰囲気にスーツの男が映えてとてもいいです。スーツの男っていいですよね。
またホラーといってもそこまで怖くはないだろ~と思っていたのですが、予想以上に怖くてプレイ中は少し震えてました。序盤、台場佐兵衛が目を見開いたところとか、体験版終盤の藁人形と遺体が入れ替わっていたことを知った時の演出とか怖くて目が離せませんでした。ジャンプスケアがほぼないのにここまで怖いのは凄い。
同人サークル発と言うのは知っていたのですが、体験版終了時のOPクレジットでテキスト・絵・スクリプトが1人で担当していたのを知ってびっくり。そんなことできるんですか、というか画廊コーナー的にスチル多分200枚以上あると思うんですが……力が入りすぎててすごい。
ミステリ的には「そして誰もいなくなった」のオマージュを始めとした戦前・戦後ミステリらしさが随所に見られることと、お葬式の描写を始めとしたディティールの細やかさに感心してました。ミステリの良し悪しを確認するうえでディティールの細かさはとても大事なので(ディティールの穴は仕掛けの穴につながるので)結末まで信頼できるミステリだな、と感じています。
ところで18禁BLゲームなので体験版後は主人公と他参列者9人とのBL有(全員攻略対象と公式が明言済)、Hシーン有と言う展開になると思うんですが、ここから恋愛する話の流れがあるんですか……!? 少なくとも1周目はこのままだと全員死んで終わると思うんですけど……。
2.各キャラの印象
①大崎(主人公)
BLに限らずADVゲームって主人公に不快感がないことが重要だと思いますが、声が落ち着いた低音で聞き取りやすい&どんな事件が起きても冷静に対処できる有能ぶりで大変ストレスフリーでした。流石総攻め主人公……!
今のところ特に誰にも心を惑わされている感じはしないですけど本当に誰かと恋愛するんでしょうか。
②有明
ワトソン的相棒ポジションでありメインヒロインだろうというのはわかるし、あざとい仕草の数々が可愛くないと言ったら嘘になるんですけど、何しろ舞台が殺人事件が起きるクローズドサークルかつ容疑者候補の一人であることを踏まえると怪しすぎて素直に萌えづらいジレンマが。
これは有明さんの言動どうこう以上に、作品は伏せるんですけど、いかにも味方然としたあざとい相棒ポジションキャラに裏切られたことがあるので……どうしても裏を探ってしまう。
③新橋
有明さんと違ってこちらは最初からニヒリスト全開・他者への親切心皆無かつ嫌みたらしい態度なのでかえって裏表がなく安心するんですけど、ミステリにおいてこの手のキャラで現時点でそんなに頭の良さがうかがえないのはちょっと厳しい。犯人であえて鷹の爪を隠してるとかでないとうーん。BLとして見たら変わるのでしょうか。
④青海
実は推理考察のために2周したんですけど、正直1周目印象になくてすまぬ。何しろ喋らない日出くんより印象に残らなくて……。
2周目はちゃんと注視して読んでたら思ったより喋っていました。終始落ち着いているところがいいですね。
⑤日出
最年少で言葉を話せない。裏がなければ本当に巻き込まれ出敷かなくて可哀想……なので多分裏があったりするのかなあと。
2周プレイした後初期設定資料集買ったんですけど、その年齢で攻略対象マジで!?
⑥汐留
君もしかして人間じゃなかったりしない?
⑦竹芝
一番好み。素の雑さが出つつも基本的におちゃらけてムードメーカーで場を気遣える男性、いいよね……ちゃんと主人公より年上なところも攻略対象の受として加点ポイントが高すぎる。
体験版終了時のOPクレジットで追い詰められて乱暴な口調になってるのも良きですね。攻略できるの楽しみだな~~。
⑧市場前
わかりやすくいいオジサマだけどこの人攻められるの!?マジで!?
⑨豊洲
私は住職・神父・牧師と言った聖職者受けが性癖なので、豊洲さんの真面目で貞淑な住職ぶりにいい……いいね……と思ってたんですけど、初期設定資料集見てひっくり返った。この人攻められるの!?マジで!?(2回目)
⑩船野
何人かキャストの表名義を知っているので、この人攻められるの!?マジで!?(3回目)という気持ち、だったんだけど早々に死んでしまった……かなしい……ふるふる怯える大男いいよね……。
⑪台場静馬
攻略対象と明言なしかつ大江島に参列してない(主人公が代理になった)んですけど、この人が一番怪しくないですか? 序盤鹿出てないのにこんなに怪しい人なかなかいないぜ……真相ルートの攻略キャラかな……。
Ⅱ.考察
1.各キャラについて
①大崎
両掌の火傷が炎に包まれる祖母に触れたから、というのは戦争における空襲被災でしょうか。船野発狂時に出てきた絵の一部が飛行機が飛んでいる姿(発狂したのは船野だけど、船野の罪状とは関係ない画だった&終始大崎視点で話が進んでいるので、あれは大崎が想起した画である、と考えています)だったので、あれが大崎のトラウマに直結しているのかなと。
人間はそっくりな顔を持つ他人が3人いる、みたいな話は聞いたことありますが、大崎と台場静馬の顔がそっくりなのは引っ掛かりますね。台場静馬のところで後述しますが、何かしら血縁関係があるのかな、と思っています。
②有明勝太郎(所持罪状:汐留)
「そして誰もいなくなった」では、犯人はその職業から9人の罪状を集めることができました。と言うことを踏まえると、今回の9人の罪状を確認することが出来た人と言う点で一番怪しいのは葬儀場職員である有明さんでは? という疑念が晴れません。
唯一初対面であるはずの台場静馬(代理の大崎だけど)に対して「初めまして」を言ってないのも引っ掛かります。過去に会ったことあるのでしょうか?
あと確定ではないですけど、骨折した右腕吊ってるわりに焼き魚は自分で箸で骨を取り除いて食べているあたり、元々左利きor両利きなんですかね(骨折時期がだいぶ前で左手でいろいろできるように修行した可能性はあります)新橋は「利き手を怪我して~」的なこと言ってたけど、左手で魚の骨を取り除いてるあたり利き手左じゃない? とは思いました。
またくさやの匂いが分からなかったあたり嗅覚異常もありそう(その割に健啖家なのは変ではありますが)火葬場で多少の臭さに慣れてるのかな、と主人公はごちてましたけどくさやって本当に臭いんですよ!!(昔父が買ってきたんですけど、リビングで食べてるのに、廊下で離れた玄関の扉を開けた時点で臭いがきつすぎて倒れそうだった) まあ戦後10年程度しか経ってない時期の火葬前の死体と比べて臭いのか、と言われるとちょっと断言はできないですけど……。
【※8/22追記】前述の通り大崎さんには「初めまして」と言ってないので有明さんは過去に大崎さん、または台場静馬のいずれかに会ったことがある、と仮定してよいと思います。
2択ですが、台場静馬が「施主も僕の顔を知らない」と断言していた≒台場静馬は案内状をもらった時点で台場家を取り巻く社会に触れる機会がほぼない、それどころか他人の目に触れる環境にあまりなかった可能性もある、と考えているので、有明さんは過去に大崎さんと会ったことがある(または有明さんが一方的に大崎さんを知っている)のではないか、大崎が「台場静馬だ」と自己紹介しても、台場静馬と大崎がそっくりと言うことを知らなかったので「大崎が台場静馬と言う人のフリをしている」と考えて初めましてとは言わなかったのではないか、と推察します。
③新橋(所持罪状:竹芝)
いかにもなニヒリストなわりに全体で見るとそんなに怪しくない方に入ります(他が怪しすぎるとも言う)大崎と初めて会った際に毒物工場の設立の話をしてましたが、食事に一切手を付けてなかったところを見ると新橋的にはかなり真実味のある話なのでしょうか。多分荷物に乾パンを入れて食いつないでるはず。大江島について嫌悪している(有明さんへの当たりがやたらキツいのは大江島の縁者だからでは?)ので、新橋ルートだと大江島の謎に迫る感じになるのかな、と思ったり。
④青海(所持罪状:豊洲)
1周目で印象に残ってなかったこともあり、一番怪しくない人な気がします。
有明さんに自身が作曲・大江杏が口笛を吹いた「口笛の少女」の曲を国歌にすべき、と言われた際に「不敬ですよ」と真っ先に返していたあたり、わりとお国への忠誠心が強い人なのかな、とは思いました(1955年の話なので、基本的にみんな国への忠誠心が強いだけなのかもしれませんが)
⑤日出(所持罪状:市場前)
話せない理由は不明ですが、筆記で回答した際にどちらもひらがなだけで回答していたのは引っ掛かります。当時の初等教育事情は知らないですが、「お母様」の「母」や「日出」って現在の初等教育小学校1,2年生程度で教わる漢字なので、年齢から考えるとかなり幼く感じます。もしかして家の事情等で同年齢の子が当たり前のように受けているはずの教育を受けられてなかったりする?
また大江杏とよく似ている、ということですがもしかして大江杏の親族だったりするのでしょうか。
⑥汐留道雄(所持罪状:船野)
参列者の中では1番怪しい。1周目はあーミステリに1人はいる殺人でテンション上がっちゃう系か~と思ってたんですけど、2周目で注意深く見てたらもっと怪しい人になった、と言う感じです。
一番奇妙なのは船野さんに対する態度で、船野さんの遺体が焼かれているのを発見した際に「船野さんは死んで当然な人」(親族殺しの罪状を持っているため)と言ってるんですけど、その前の御斎時では船野さんを気遣う発言(送り火が終わったらみんなで労う等)もしてるんですよね。案内状が来た時点で船野さんが親族殺しの男だって知ってるなら最初から船野に対して気遣いとかしなくないですか? 実際、汐留の罪状を持っている有明は最初から汐留を苦手視してたので。
(この作品が本格か、は別として)本格ミステリにおいて「登場人物の態度の変化」には必ず何らかの理由があります。この態度について今のところ思いつく理由は以下3つでしょうか。
船野さんが死んだことで「親族殺しは死ぬべきである」というのが神の真理である、という思考に至った(作中の大崎の考察そのまま)
そもそも船野さんを死んで当然な人(または殺す気満々とか)と考えており、御斎時の気遣う発言等は周囲に合わせていただけ。
大江島にいるのは案内状で呼ばれた汐留道雄本人ではなく、直前に汐留道雄から案内状を(譲り受ける・くすねる等して)手に入れて参加した別人である。そのため罪状についても船野の死後にちゃんと確認して真実であると認識した(適当な嘘説も考えていた)
実際にありそうなのは1・2ですが、個人的には3だと面白いな、と思っています。
また「葬儀屋ってみんな泣き虫」と言ったり(葬儀場職員は仕事なので、普通は泣かないと思うんですが……泣き女を指しているとしても習慣があったのは日本だと戦前までらしい※wiki調べ ので、現在大学生レベルの若者がその習慣を体験しているかというと怪しい。過去に泣いた葬儀場職員を見たことがある?)、過去の出来事の尺度が変(1200年程度の話を「結構前」程度、100年前は「ちょっと前」程度)なところからも、そもそも普通の人間ではなく千年以上前から存在している人間ではない別生命体とか悪霊が人間に取り付いてる説、ありませんか?(すみません流石に妄想が過ぎました)歴史学者の過去の出来事の尺度がおかしくなる、と言う話は聞いたことありますが、民俗学者も同様なのでしょうか。歴史学と民俗学ってまた少し違うような……。
あとこれは多分プレイした方全員思っている疑問とは思うんですが、なんで呼ばれたんですかね?
【※8/22追記】大江杏と縁はないのになぜ呼ばれたのか、についてはよく考えると今のところ豊洲さん・船野さんも特に縁については言われていなかったな、と思い出しました。
その上で汐留が大江杏と縁がないのに呼ばれた理由については以下3つのいずれか、と言うところでしょうか。
大江杏とは無関係だが、施主が罪状を掴んでいて死んでほしい、殺し合ってほしいと思ったから呼んだ
実は大江杏と関係があるが、汐留がそのことを忘れている、または汐留が大江杏と関係を持った、とわかりえない形で関係したことがある(前者だと大江杏のファンと明言してるのに会ったことを忘れているので、この中なら後者よりです)
本物の汐留道雄は大江杏と知己だが、参列した汐留道雄は偽者なので大江杏と無関係である。
⑦竹芝(所持罪状:青海)
青海の罪状を持っているのに、青海の事を「めっちゃいい人」と言ってたのは引っ掛かります。青海の罪状が大したことなかったんでしょうか? OPでの様子を見ると汐留のように猫を被ってる説もありますが。
また台場静馬(の代理をしている大崎)からの自己紹介を受けて、台場何?と聞いていたのも気になります。過去に台場佐兵衛or台場佐清or台場静馬と会ったことがあったりとか因縁があったりするんでしょうか。あったら美味しい。それと火器を持ってない=喫煙者ではないということですかね? この時代の男性にしては珍しいのでは。
ところでこれは全然関係ない話ですが、大崎のようなしゅっとしたイケメンをコンビの相方として誘うBL、連城三紀彦の「白蘭」だわ……。
⑧市場前(所持罪状:有明)
この人そのものにはそんなに怪しいところはないように思いました。
ただ「そして誰もいなくなった」では医師が犯人を死んでいるように見せかけた(医師は犯人ではなく犯人に騙されただけ)ことがあったのを踏まえると、なんかしら仕掛けてくるのかな、とは思ったりしてます。
唯一、船野さんの死を「睡眠薬の多量摂取による自殺」と断言したのはひっかかります。移植外科部長と死体検分専門の医者ではなく、医療器具があって解剖したわけではないのに、断言しすぎなような……。
⑨豊洲(所持罪状:日出)
真っ向からメタい話をしてしまうんですけど、「そして誰もいなくなった」の敬虔な老婦人ポジションですよね。OPで罪を悔いているあたりまんまだな、と。
鎌倉駅前にでかでかと広告が出ており、全国各地でも売られている「鳩サブロー」が何かを知らなかったのは気になりました。豊洲さん自身は鎌倉の出身ではないですが、大江島への移動時に看板くらい見てるような……何の移動手段を使って来たのでしょうか。もしくは、流石にないとは思いますが盲目だったりします?
【※8/22追記】よく考えたら茨城の人が八丈島のライン上にある大江島に行くのに鎌倉を通る理由がないから鳩サブローを知らなくてもおかしくはなかったですね……。
代わりに、現時点で大江杏との関りが明言されていないのは気になります。汐留と同様、大江杏と無関係なのに呼ばれた、と言うことになるのですが、前述の汐留のケースで挙げたうちの①・②のいずれか、ということでしょうか(豊洲さんに偽者らしさは見られなかったので、③は考えていません)
⑩船野(所持罪状:???)
最初の被害者なので怪しいも何もないのですが、大崎(台場静馬)を終始怖がっているのは気になります。これは船野さんというより台場静馬の怪しい点なので後述します。
【※8/22追記】振り返ると船野さんも大江杏との関係性は明言されていませんでした(というか明言する前に死んだ)
船野さんの罪状は「昭和27年(現在が1955年=大江杏の死の1年前)8月に妹を殺害した」ことなのですが、何か関係があるのでしょうか。
⑪台場静馬(所持罪状:???※新橋のものでは、と推察)
一番怪しい。参列してないのにこんなに怪しい人いる……? と言うくらい怪しい。
あまりにも怪しいので怪しい点を筒状書きします。
台場邸に大崎を招いた時とホテルで大崎と会った時とで態度がほぼ異なる(品川の指摘を踏まえるとおそらくホテルの方が素とは思う)
二代目台場建設社長だが、父・佐兵衛が業務に引き入れてこなかったので得意先どころか自社の役員ですら台場静馬の顔を知らない(家族経営で次世代社長を事前に紹介しない、なんてことがあるのか?)
25年前に市場前さんが台場一家と知り合った際、兄の佐清とは会ったが静馬の存在は知らなかった(台場静馬は27歳なので市場前さんが台場一家と会った時点で既に生まれている。弟の存在を教えられなかった、ということか?)
東京の人間だが、大江杏の参列に当たって代理を探せ、という父の指令について神奈川の小さい探偵事務所に依頼した(小さい探偵事務所であり過去に縁があるようでもないので、なぜ大崎を探し当てられたのか?)
「施主も僕の顔を知らない」と断言している(なぜ断言できるのか?)
「父親に愛されなかった」、「家督争いの火種になるから」と言う発言がある一方で、父:佐兵衛は市場前が「親ばか」と表現するほど佐清を溺愛していた描写あり(「カザリとヨーコ」(乙一著「ZOO」より)か?)
喪服に煙草の匂いが残っている(品川の指摘通りだと思うが、大崎と会っている最中に台場静馬が煙草を吸っている描写はなかった……はず)
ざっと挙げただけでもこれくらいでしょうか。全員人殺しと公式に言われている参列者の誰よりも怪しいです。
これら違和感を踏まえた上での仮説として、「台場静馬は生後すぐに養子に出されたorほぼ幽閉されていて、台場家を取り巻く社会とは隔絶した環境で育った」説を考えています。自画自賛になりますが、台場建設にほぼ顔を出していなかった状況を踏まえると割とありそうな気はしています。
また更なる仮説として、大崎と台場静馬の顔がよく似ていることから「大崎は台場静馬の腹違いの兄弟である(台場静馬と同様に生後すぐ養子に出された)」説も唱えたいですが、流石にこれは妄想の域を出てない気がしますね(台場父が大江島出身と言う話はありましたが)
ところで台場静馬は「案内状は父宛で、すぐに父が捨ててしまった」と言ってましたが、本当に父・台場佐兵衛宛だったのでしょうか。現物がないので憶測ですが、船野さんの怯えぶりを見るに「案内状が台場静馬宛だった」可能性も疑っています。
となると台場静馬にも罪状がある、と言うことになります。これはメタですが、「そして誰もいなくなった」で最後に死ぬ女性・ヴェラの罪状は「教え子を故意に溺死させた」ことです。台場静馬が兄の佐清を溺死させた線はあるのではないか、と思ってます。
【※8/22追記】よく考えると船野さんが持っているのが台場佐兵衛の罪状だった場合、(過去に台場建設と因縁がない限り)代理で来た台場静馬(大崎)を無暗に怖がる理屈がないので、船野さんに贈られたのは台場静馬の罪状である、と考えて良い気がしてきました(勿論本編でひっくり返る可能性はあります)
案内状が台場静馬宛で他人(おそらく新橋)の罪状が入っていた、と考えると「台場静馬の罪状が新橋の元に入っているに違いない」と考えた台場佐兵衛が「代理を立てて法要に参列しろ」と指示したことに筋が通るのでは、と思っています。
2.各事件について
①三日月でのお経レコード垂れ流し
大崎の指摘する犯人候補:新橋、汐留、豊洲、有明
全然わからん。大崎が「プレーヤーを流すことは誰にでも可能。プレイヤーを設置できる人かどうかが問題」と言ってましたが、プレーヤーで流すやり方もよくわかってません。主人公よ、アホな私にもう少し詳しく教えとくれ……。
単純に「様々な人のお経を録音してレコードに編集することが出来た人」となると葬儀場職員の有明、住職の豊洲が怪しいですが、こういうレコードが売ってたりするんですよ!と言う話だったらどうしようもないしな……。
そもそもなぜスピーカーまで用意してお経レコードを三日月中に響かせたのか。新橋が「お経が流れ始めてすぐに船野が発狂して叫び声をあげていた」と言っていたので、船野さんを追い詰めるためでしょうか。もしくは何か別の物音を隠すためでしょうか(船野さんの部屋のすぐそばにある発電機の音とか……使う必要は今のところ見られないですが)前者であれば、船野さん殺害犯と同一犯だとは思います。
【※8/22追記】プレーヤーを流すやり方が遠隔操作(なので大崎は誰でもできると言った)の場合、プレーヤーが流れたタイミングでちょうどよく船野さんに聞かせるのは難しい=船野さんが発狂する直前にプレーヤーが流れ出したのは偶然、と言えます(同様に新橋がプレーヤーの再生タイミングで三日月にいたのも、新橋が犯人である場合を除いて偶然と言えます)
船野さんを追い詰める→そしてラボナに混ぜた毒薬を呑ませるためにプレーヤーを流したとすると、13時早々に聞かれたのは犯人にとって誤算だった可能性がありますね。
②船野殺害
大崎の指摘する犯人候補:新橋、汐留、豊洲、有明
今のところは汐留が犯人最有力かな、と思っています。
船野さんの死がラボナ=精神安定剤に紛れた毒薬の服用、だとするとまず船野さんを精神安定剤が吞みたくなる状態に追い込む必要があります。
船野さんの行動は御斎に誘われて発狂→落ち着くために三日月の使用人部屋でラボナ(の中に紛れていた毒薬)を服用、なので御斎にいなかった新橋はまず犯人ではないと思います(新橋の発言が嘘でお経レコードを流して船野さんを追い込んだ説も考えましたが、そもそも船野さんが三日月に戻ってくることを考慮しないとお経レコードが無駄になるだけなのでナシです)
御斎にいた汐留・豊洲・有明のうち汐留が怪しいなと思うのは、船野さんを御斎に誘う会話の中で「大江杏ちゃんって知ってます?」と突然聞いているからです。御斎に誘うだけなら不要な台詞をわざわざ発しているので、船野さんが大江杏と何かしらのつながりがあると見て精神的に追い込むために発したのでは、と言う可能性を追っています。船野さんが叫んだあと笑声を漏らしていたり生彩を増していたりする様子も犯人としての要素かな、と思っています)
動機は不明なので度外視しています。汐留のところに船野さんの罪状があった→汐留の罪状を船野さんが持っていると見て犯行に及んだ説も考えましたが、それにしては有明さんが罪状を持っていると判明した時に「罪状は事実だ」とはぐらかさずに明言したので、動機にはならなさそうです。
【※8/22追記】プレーヤーを流すように仕掛けた犯人=船野殺害犯とした場合、前述の通りプレーヤーのお経を船野さんが聞くタイミングが13時過ぎになったのは犯人にとって誤算の可能性があるので、このケースだと御斎に誘う際に奇妙なことを言っていたから汐留犯人説は違うのでは、という気がしてきました。
じゃあ誰なのか、というと分からんとしか言いようがないですが……。
③三日月・八重垣における電話破壊
三日月の犯人予想:不明(船野さん殺人の犯人候補である前述4人の誰かだとは思う)
八重垣の犯人予想:日出
三日月は昨夜までは電話はつながっていたので、深夜~船野さん死体を発見するまでに破壊された、ということになります。船野さん捜索時は新橋・汐留ペア、大崎・有明ペアで行動していたので、この時に電話を破壊するのは不可能です。なので船野さんに毒を盛ることが出来た人物があわせて電話破壊の犯人候補である、という程度でしょうか。
八重垣は最後にいつ電話が使用されたか不明なので、時間帯によっては他の人にも犯行は可能だと思います。ただ、船野さんの死体発見時という日出君が八重垣に一人でいるタイミングがあったことと、斧(おそらく八重垣を出て温泉に行くところの戸に立てかけてあったものでは)が電話室のそばにあった=元の場所に戻すタイミングはなかった、と言う点から、日出くんが一番怪しいかな、と思っています。
【※8/22追記】八重垣は三日月と異なり正方形の構造かつ間仕切りが障子と考えると、斧で電話を壊す=大きな音がする=他に人がいるタイミングで壊すとすぐにバレる可能性が高い、と言えます。ということは唯一八重垣で1人になるタイミングがあった日出くんが八重垣の電話破壊犯と考えていい気がしてきました。
で、同様に三日月の電話破壊犯も「三日月で一人になれるタイミングがあった人」、と条件を仮定すると、御斎を断って三日月に戻った新橋が一番可能性が高い気がします。
ただ、電話を壊す理由=外界と連絡を取れないようにするため、とすると、三日月と八重垣で電話破壊犯が異なるのは筋が通らないんですよね。片方だけ壊しても意味ないので。しかし三日月と八重垣双方の電話を壊すことが出来た人は今のところいないはず。袋小路ですね……。
④船野遺体とヒトガタのすり替え
確定していること:船野=大男の遺体を本堂→倉まで移動させている
このことから、おそらく大の男2人がかりの行動ではないでしょうか(1人だけでも移動させる手段が本編後で発見されたら別です)
ヒトガタ作成を行っていたのは青海、竹芝、汐留、市場前の4人。
ヒトガタと船野さん遺体のすり替えの目的が船野さん遺体の焼失=死因をわからなくさせることであれば、船野さん殺害犯と同一犯となり、前述の犯人候補と重複していることから汐留が犯人最有力と思います。送り火の儀を行うことに固執していたことや、死体埋めを扇動していた点の説明もつきます。
汐留犯人の場合のすり替え協力者は汐留に好意的な態度を示していた市場前さんでしょうか(作成を行った4人の中でペアを組みそうなのがここしか思いつかないので)
【※8/22追記】船野遺体が燃えた時の汐留の態度がそれまでと比較して違和感があるので、汐留が犯人だった場合、船野遺体を燃やした理由は「汐留の罪状を所持している人や他の人間が抱えている謎を炙り出すため」と言う可能性もある気がしてきました。真偽はどうあれ、市場前を説得した理屈はこれっぽい気がします。
⑤施主の正体
現時点でそれらしいヒントが一切見られなかったのでほぼ憶測になりますが、最有力は台場静馬、次点で日出くんだと思っています。
「そして誰もいなくなった」では参加者の罪状をレコードで読み上げましたが、「大穢」では参列者の罪状を他の参列者の案内状に忍ばせている=忍ばせた人以外には罪状はわかっていない状況となっています。体験版終盤で新橋が「罪状を取り違えられたのならば取り戻しに来るだろう」と言っていたところを加味すると、案内状を送付した時点で参列者同士での殺し合いが発生する土壌が構築されている、と言えます。
よって、必ずしも施主が船野殺害を含めた大江島での殺人犯である必要はない、と考えています。
最有力が台場静馬なのは序盤しか出てきてない状態でこんなに怪しいのに黒幕でないわけがない、という私の偏見と、「参列者の容姿や状況を報告してほしい」という依頼があったからです。自分が殺す仕掛けを作った参列者がどうなったのか知りたいのかな、と。
次点で日出くんなのは大江杏と容姿が似ている→大江杏の親族であり大江杏死亡に関わっている人間を殺すために行った、と言う動機が成り立つ(と言う妄想ができる)ことと、八重垣の電話破壊犯の最有力候補だからです。この場合、ひらがなで筆記回答していたのは漢字を書けることを隠すため、となるのでしょうか。
【※8/22追記】改めて振り返ると台場静馬以上に有明さん施主説が濃厚な気がしてきました。有明さんのところで記載しましたが、他9人の罪状を把握することが作中で一番容易なのは葬儀屋の有明さんだからです。
また、有明さんが大崎さんにやたら懐いているのは大崎さんのことを以前から知っていて「参列者の中で大崎だけが唯一罪を犯していない信頼できる人」と考えているから、ではないでしょうか。真偽はわからないですが、参列者の中で主人公の正体を最初から知ってて仲良くなりたがるってすごくBLメインヒロインぽいのでありそうな気がします!
それと、有明=施主と仮定すると、汐留の事をやたらと嫌って不信がっていたのは参列に来た汐留道雄が偽者と気づいたからでは、という仮説を立てることが出来ます。
有明にとって他の参列者は「台場静馬=そう名乗っている大崎(好き♡)、他参列者(汐留除く)=案内状を送った罪人、汐留=自分の知ってる汐留と違う!?誰!?」状態だと、「有明にとって汐留だけが許容しがたい罪人である(罪状を持っているから)」以外の理由で汐留の事だけ嫌っている、不信がっていることの筋が通ると思います。全く知らん奴がいきなり送り火の儀を強要したりしてきたらそりゃ不信だと思います。
……当然ですが参列者として存在している汐留≠本物の汐留道雄説が既に妄想なので、上記の汐留に関する説はほぼ妄想です(自分でも書いててこれ流石に妄想が過ぎるな……と思った)でもこういう線があっても面白そうだな、と思っています。
3.その他
①大江島について
流刑にされた罪人の男とまぐわうことで子を成して維持させていた女系の島、という怪しさぷんぷんの島なのがいいですね。
海流と風の方向が一定、というのは今後の事件のトリックに使われそうな匂いがめちゃめちゃします。
②鳩サブローの食べ方
他の方の感想で「各キャラの死に方では?」とありました。なるほどな~~。私は「各キャラが犯した罪の縮図」ではないか、と考えています。家族が焼死した竹芝が鳩サブローを「もう一度焼く」って言っているのがそれっぽいな、と思ったので。
③今後の展開
体験版ラストでOPが流れましたが、OPで出た順番にキャラが殺害されていくのではないか、と勝手に憶測しています。「そして誰もいなくなった」だと一番最初に死ぬのが若い青年(毒殺)だったのですが、汐留がちょうどそのポジションに思えるので(大穢の最初の死者は船野ですが、そして誰もいなくなったでは使用人は2番目に死ぬので、そこが入れ替わったのかな~と思っています)
体験版時点でここまで感想を書くとは自分でも思ってませんでした。結末が分かってないミステリを冒頭で推察するの、楽しい……!
本編の発売は2024年9月下旬予定とのこと。楽しみですね!