沖縄

今年の夏は沖縄に行こうと心に決めていた。ストレス社会に揉まれ疲弊し切ったこの心を癒し、現実からの逃避に一役買ってくれるのが南の島なのだ。こういう予約は早い方が良いと息巻いて4月上旬には飛行機とホテル、レンタカー(オープンカー)、シュノーケリング体験等の予約/支払いを済ませていた。仕事ができる男と言っていただきたい。

ずっと沖縄に行きたかった。沖縄でオリオンビールTシャツにアロハシャツを羽織りハートのサングラスにレイ(花の首から下げるやつ)を纏い、ポケットにちんすこうを忍ばせオープンカーで沖縄の海沿いを爆音のBEGINを流しながら駆け抜けたかった。俺は沖縄に行くために日々のパワハラに耐え、人の心を失くしたチンカスみたいな客を相手にし、接待の二次会でフィリピンパブにて裸踊りをさせられる昭和の癌細胞みたいな社風にも耐えてここまで来たんや。俺はこいつらを一度たりとも許したことはない。人格を否定し、洗脳を良しとし、人に厳しく自分に甘いようなおっさんを何人も見てきた。そういう奴ほど"人情"という免罪符を振りかざすのである。いや、そんなことはどうでも良い。俺は沖縄で洗い流すんや。全てを。

当日、始発の列車に間に合わせるため、午前4時に起床。オリオンビールTシャツとアロハシャツをしっかり準備し、一緒に行く彼女もこの旅行に照準を合わせ、直前にエステと美容院に行き、ネイルを施し、最高のコンディションで当日を迎えた。予定通り。1番懸念していた寝坊を回避できた時点でもはや敵はいない。浮かれ倒していた。「こんなに浮かれてたら浮き輪いらんな😄」とかおもろないことを思いついて危うく彼女に言いかけて辞めた。それぐらいテンションが上がっていた。

浮き足立ちながら関西国際空港に到着し、搭乗手続きをしようとした時、搭乗手続きの時間を過ぎていることが判明した。浮き足立ちすぎて全く気にもしていなかったのだが、飛行機というのはそもそも搭乗手続きの時間が厳格に決まっており、その時間を過ぎた時点で飛行機に乗ることはできない。完全に飛行機を阪急電車通勤特急ぐらいの感覚で考えていたので、出発の20分前に着けば十分だと思っていた。もちろん手続きに間に合うはずもなく、飛行機に乗ることは叶わず、その場で膝から崩れ落ちた。

飛行機だけならまだしもホテルやシュノーケリング、レンタカー(オープンカー)(ちなみに赤のロードスター)まで予約してしまっており今更キャンセルなんかしてしまった時には損害は計り知れない。なんとかして沖縄に行かねば。他の便が空いてないかを聞いてみたが、1ミリも空いてないとのこと。なんや1ミリも空いてへんって。インドの列車でももうちょいゆとりあるやろ。ふざけんなボケナス。離陸させてくれ。頼む。荷物扱いでいいから。人やと思わんといて。頼む。今だけ器物として扱って。ちなみに猫は法律上は器物と表記されるらしいですよwwと懇願してみたものの聞き入れてもらえず、そんなことをしている間に我々が乗るはずだった飛行機が離陸し、俺が手配していたレンタカー(オープンカー)やホテルが待つ沖縄へと飛び立った。空の彼方へ消えていく飛行機を見て俺は膝から崩れ落ちた。膝を酷使しすぎている。膝が痛い。このままじゃCA達から「膝ニキ」とか「膝崩れアロハ」とか「乗り損ねブサイク」とか陰であだ名をつけられてしまいかねない。怖い。CA達は皆眼力が半端ない。CAを見ていると小4の時クラスでめちゃくちゃ気が強くて眼力のある岡島さんを思い出す。昔岡島さんをドッチボールで当てたらその後めちゃくちゃ蹴られた過去がある。俺は外野から味方にパスをしようとしただけやのに…

我々は大阪に取り残された。沖縄に行けば全ての手筈が整っているというのに。彼女は絶望感に打ちひしがれて泣いたり、なんとかポジティブに考えて冗談を言って笑ったりを繰り返していて、思わず「泣きたくて笑いたくて本当の自分我慢して伝わらなくて」という歌詞がよぎり「キマグレンやん」と言いかけたがさすがにトップスピードで破局まで持っていかれると思い、何も言わなかった。

そんな彼女を見て諦めるわけにはいかなかったので、崩れた膝を積み上げ、もう一度立ち上がることを決めた。どうにか飛行機の空きがないか親指が吹き飛ぶんじゃないかという勢いでスマホを駆使して探し続け、ちょうど親指が吹き飛んだタイミングで一席だけ空きのある飛行機を見つけた。17:00の便である。誰かに取られたらその時点で沖縄行きは途絶える。別々でも良いからとりあえず1人だけでも沖縄に行かねばならないと思い、予約をした。問題はもう一便であったが、彼女が謎のサイトで神戸空港から出る便を見つけ取り急ぎ予約した。予約が完了し一安心したものの、海外会社が運営しているサイトなので、問い合わせをしなければ、どのようにして搭乗手続きをすれば良いのかわからない状況であった。問い合わせをしてみるとカタコトの日本語を喋る外国人が電話に出た。

「モシモシ、ドウサレマシタカ」

不安になった。怪しいサイトにアクセスして詐欺にでも遭ってるんじゃないかという不安感を増長させるぐらいカタコトの日本語を話された。

「トリアエズ、ヨヤクハ、デキテマス」

ほんまかいな。

「サンジカンマエニ、トウジョウテツヅキシテクダサイ」

3時間前ってもう神戸空港着いた頃には過ぎとるやないか。

「トリアエズ、ticket ヲ download シテクダサイ」

節々にネイティブを感じる。

相手が日本語を話せる外国人ということもあり、多少の意思疎通は可能ではあるが、なかなか上手くいかず20分ほど喋った後、ようやく搭乗手続きのやり方が分かり、彼女は関西空港から神戸空港へ船で向かった。

時間帯的に俺の方が先に沖縄に着くので

「沖縄で待ってる」

と人生で絶対に言わないであろうセリフを言って、「なんで同棲してるのに沖縄現地集合やねん!!」と言いながら船へと向かう彼女を見送った。

そして今、離陸した飛行機の中でこのブログを書いている。このトラブルによりかなりの金を使った。もう一度沖縄に行くことができるレベルである。だがもうそんなことはどうでも良い。時間はお金に変えられない。だからこそ人はお金を払うのだ。お金は使わなければ意味がない。良い教訓になった。本当に。ちなみにさっき隣に座っていた子供がはしゃぎたおして持っていたココアをこぼし、俺の足がココアまみれになったが全て許そう。沖縄はココアまみれの俺の足も今日の疲れも日々の鬱憤もストレスも全てを受け止めてくれるはずだ。子供に罪はない。子供は元気が1番。子供は迷惑かけるのが仕事みたいなものだから。今、沖縄に向かうことができているということが何よりも嬉しいんや。ありがとう。沖縄。俺を見捨てないでいてくれて。俺にココアをかけた子供もこれから沖縄にいく仲間みたいなものじゃないか。お互い楽しもうな。怪我すんなよ。最高の夏休みにしてくれよな。

だがそこのクソ親。お前はダメだ。お前だけは絶対に許さない。子供に対してちゃんと注意していれば俺の足がココアまみれにならんかったんちゃうんか!!!おい!!!子供が暴れてる横で無関心でスマホをいじりやがって!!子供が騒いでいる途中でしょうが!!!!まだ俺がブログを書いている途中でしょうが!!!!俺の中の田中邦衛も出てくるわ!!!!ボケナスが!!!!!ダメなことはダメと叱ることも愛情ちゃうんけ!!!!!カスめ!!!!ふざけんな!!!◯ね!!!ゴミが!!!!!絶対に許さんからなぁぁぁあああああ!!!!!!


P.S.

沖縄楽しみます♪

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