草原のまんなかのタイヤの上に一人でじっと座っていると、子供の頃よく参加した遠泳大会を思い出した。島から島へ泳ぎわたるまんなかあたりで、僕はよく立ちどまってまわりの風景を眺めた。そしていつも不思議な気持になったものだった。二つの地点から等距離にあるというのは何かしら奇妙なものだったし、遠く離れた大地の上で人々が今も日常の営みをつづけているというのも妙だった。何よりも社会が僕抜きでちゃんと動いているというのがいちばん奇妙だった。
十五分ばかりそこに座ってぼんやりしてから歩いて家に戻り、居間のソファーに座って「シャーロック・ホームズの冒険」のつづきを読んだ。
二時に羊男がやって来た。