各種チャットツールの特徴
プライベートと仕事とで、いろいろとチャットツールを使っている。いわゆるビジネスチャットと呼ばれるもの。今年になって、遠隔で仕事をするようになってから、なおさら使う機会が増えた。
せっかくだから、それぞれのチャットツールの特徴を書いてみたい。
Chatwork
全ての人の発言が同等に、フラットな関係で表示される。LINEを含むメッセンジャー系のように、自分の発言バルーンが右寄せになっていて他人が左寄せになっている、ということはない。
その画面を見て知りたいのは、そこに書かれた情報だから、誰が発言したかはそれほど重要でない。だから、メッセンジャー系の表示は、とても使い難いと感じる。
Chatworkは他のビジネスチャットと異なり、個人での参加が基本になっている。組織単位での登録も高めのプランではあるが、多くのプランは個人で加入することになっている。支払いもチーム単位ではなく、個人単位になっている(組織単位での登録の方法もある)。
そのため、チームやプロジェクトごとにグループを作る必要がある。無料プランの場合、参加できるグループ数に限りがある。
他の発言を引用して発言できるので、その発言がどの発言に対応しているのか分かりやすい。チャットでありがちな「時間差で発言されて何を指しているのかわからなくなる」ということがない。この機能はLINEにもあるが、とても有用。以降で書くSlackやTeamsがスレッドで表現するのとは、別の軸の表現法になっている。
私はあまり使っていないが、ToDo機能があり、発言をそのままToDoとすることができる。チャットだけで打ち合わせをしていく場合には、使える機能かもしれない。
無料プランでも過去の履歴がすべて見えて、検索できる。無料プランは前述のように参加グループ数に制限があるため個人間のやり取りがメインになるが、見やすく使いやすいシステムだと思う。
ビデオ通話も可能だ。無料プランでは1対1のみだが、有料プランを契約すると複数人との通話が可能になる。
Slack
ビジネスチャットと言えばSlackと思われるほど人気のサービス。たしかに使いやすい。
基本的に、組織単位で場(ワークスペース)が提供される。トピックごとにチャンネルを用意して、そこで話を進めることができる。Chatworkと同様に、チャンネル内では発言の表示はフラット。
システム開発チームで採用すれば、各種の開発者向けサービスと連携してチャット上だけで構築をすることも可能。
そうでないチームでも、ボットを用意すれば、他のサービス(例えば、Googleカレンダー)と連携して自動的にチャンネルに投稿してくれる。
投稿が入り乱れているときに、適切に返答する方法として、スレッド機能がある。チャンネルに発言を続けていっても構わないが、特定の発言に対してスレッドとして発言すると、その発言に対してチャンネルのように発言ができるようになる。ただし、ある発言に対するスレッドは、その発言を展開させなければならないため、一覧性に乏しい。
残念なことに、最上位プラン以外は、ワークスペースが1つしかないこと。そこそこの規模のチームで運用すると、チャンネルが乱立してすごいことになる。また、どのチャンネルに誰がアクセスできるようになるのかなどを把握することが難しくなっていく。基本的にオープンなチャンネルばかりにする予定なら特に問題ない。
無料プランの場合、遡れる投稿数に制限がある。連携できるサービス数も制限されている。基本的に有料プランで使うことが前提になる。参加ユーザ数で課金されることと、1ユーザ辺りの金額が高めのため、貧乏なチームでは払えないかもしれない。(身の回りでは、無料プランで凌いでいるチームをいくつも知っている。過去の情報は要らないと割り切るしかない。)
Slackでは、ビデオ通話はできないが、音声通話は可能だ。
Skype
ビデオ通話サービスのイメージが強く、チャットはオンライン中しかできないイメージがあるが、最近ではオフラインの時もチャット可能になっている。また、グループ通話(ビデオ通話)の機能も良くなっていて、友だち申請しなくても通話できるようになっている。
以前はよく使っていて、現在でも個人間では使うが、複数人では使わなくなった。その理由は、定常的なグループ(チーム)を作れないことにある。Microsoftとしては、そういった場合はTeamsを使えということなのだろう。
検索機能がない。そのため、情報を蓄積するために用いるには向かない。あくまでもビデオ通話が主体で、それを補うためにチャットできると割り切るべきだ。
Microsoft Teams
Slackに対抗意識がむき出しなMicrosoftの同様のサービス。当初は、有料プランのみだったが、現在はMicrosoftアカウント(旧Hotmailアカウント、旧Liveアカウント)をもっていると、いくつかの制限があるが使える。
今回取り上げるサービスの中で最も高機能なサービス。SharePointと連携したファイル管理ができる。Officeソフトと高度に連携できる。1つの組織に複数のチームを用意できて、ユーザーごとに参加できるチームを決められる。ビデオ会議もできる。
ファイル添付は、Slackでも可能だが、ファイルを整理して管理するには向かない。一方で、Teamsは、SharePointのサイトをチームごとに作られ、チャンネルごとにフォルダが用意される。ファイル管理は、SharePointと同等のことが可能になっている。つまり、共有オンライン(クラウド)ストレージが用意できる。
Microsoftだから当然のように、添付されたOfficeファイルは、Office Online上でそのまま編集できる。もしくは、SharePointのドキュメントフォルダをローカルと同期しておけば、Officeソフトでそのまま編集できる。さらに、ファイルに対してチャットを開始できるため、ファイルを開いて校正モードでコメントを書く、という面倒さがない。
SharePointは、有料アカウントでのみ利用可能になっている。Microsoftアカウントで無料で使う場合にはファイル共有が使えない。ただし、有料のチームにゲストとしてアクセスするのであれば使えるようだ。
Teamsならではの機能は、複数のチームを作成できるところ。ユーザーにとって不要なチャンネルを表示することがなくなる。また、管理者にとっても、チームに参加させるユーザを絞れるため、チャンネルごとに権限設定する手間がある程度減らせる。したがって、大規模な組織では効率的に運用できるようになるだろう。
Teamsの売りのひとつとして、チームメンバーとビデオ会議できる機能も付かされていること。Skype for Business(旧Lync)を引き継いでいるらしい。Zoom以外の候補として挙がる理由はこれだ。
チャット機能の中で、特定の発言に対してコメントしたい場合は、Slackと同様にスレッドを作る。ただし、こちらのスレッドは、表示上の印象が異なる。Slackが基本的にチャンネルにそのまま発言をして行く印象を与えるもの似たいし、Teamsでは最初の発言を親としてそれへの返信は全てスレッドであるというような見せ方になっている。UI上は親発言ごとに新たなトピックのように見えるようになっている。
少々残念なことに、個人間のやり取り(Teamsでいうチャット)では、自分の発言と相手の発言が左右に分かれるメッセンジャー形式をとっていること。この形式は個人的に好みでない。
チャットサービスのTeamsを起点に、ファイル管理を通じてファイルの共同編集、ビデオ会議での打ち合わせなどができる総合的なサービスになっている。
とても魅力的で良いTeamsなのだが、欠点も大きい。まず、起動がとにかく遅い。それは一時的な問題だとしても、その後の操作でも動作がもっさりしている。そのまた、リッチテキストエディタが悪さしていて、Ctrl+文字キーでのカーソル移動ができない(矢印カーソルはもちろん使える)。Macユーザーとしては非常に不便。URLの自動リンク機能が不安定で、入力したソフト(アプリ)によって動作が異なる。
最も大きな欠点は、Microsoft 365(旧Office 365)の細かい設定ができないといけないこと。このときに、相変わらず謎のMicrosoft用語に悩まされ、Teamsの設定だけでなくSharePointの設定やMicrosoft 365全体のグループ管理を触らないといけない場合がある。かゆいところに手が届くくらい設定項目があるのだが、複雑奇っ怪で、慣れないと手こずる。場合によっては、PowerShell(Windowsなどの深い操作をするときに使うコマンドラインツール)を使わないといけないこともある。GUI (Web UI)だけで完結できない。
Google Chat (G Suite)
チャットとしては、Google Chatが対応する。Google Chat単体では、Chatworkと同等程度の機能のものになる。Google Chatのチャットルームは、Chatworkのグループに対応する。ただし、Google Chatは現在のところ、G Suiteのツール群の1つになっていて、単独では使えない。
G Suiteの他のツールと連携することも可能だ。とはいえ、インテグレーションとしては未だ不完全な印象がある。例えば、あるチャットルームの人たちとビデオ会議をしたいと思ってもGoogle Meetとは連携されていない。Googleカレンダーで会議の設定をしなければならない。結局は、G Suiteの各種ツールを上手く連携させて使うことを前提とする設計ため、それぞれのツール上で操作を探そうとしても、やりたいことを達成することは難しい。
最も困ったことに、チャットルームを組織的に作っていくことが末端のユーザーには不可能なところだ。もちろん、チャットルームを作って、任意にユーザを指定して参加してもらう方法はできる。しかし、アカウントリストをアップロードしてチャットルームを作ることができないのだ。数十人程度なら、頑張って一人一人入力していけば良いが、100人規模になってくると気が遠くなる。これが可能なのは、G Suiteの管理者のみになっている。
実は、その他にもG Suiteの管理において、管理者の以外の権限が弱いだけでなく、管理権限の移譲の機能も弱いように見える。そのため、かっちりと組織を作って運用していくのであれば問題ないが、ボトムアップで組織を作っていこうとすると管理者権限の壁にあちこちでぶつかる。ボトムアップで繋がっていく組織のように見えるGoogleが作ったツールでどうしてこうなったのだろうと思う。
Discord
ゲーマーなら知っているチャットツール。音声会議(ボイスチャット)において音声の遅れが少ないことで人気があるらしい。最近では、ビデオ会議もできるようになった。ただし、ビデオ通話は現在のところ最大で25人まで。
基本的には、Slackのようなサービス。Slackのチームに対応するものをサーバーと呼んでいる。1つのアカウントで複数のサーバーに登録できるため、Teamsのチームと言ってもよいかもしれない。Teamsが管理権限としてチームに参加させる方法をとるのに対し、Discordはユーザーが参加したいサーバーを見つけて、登録申請する(サーバーの管理者が承認する)という仕組みになっている点が異なる。
Discordのボイスチャットは、他のサービスと少々異なる特性がある。ボイスチャンネルを用意して、そこにアクセスすると通話が開始される。他のサービスが電話をイメージした「通話開始」ボタンがあることと対照的だ。
ボイスチャンネルの他に、サーバー内のメンバーに対して通話を開始することもできる。ビデオ会議はこの方式で始められる。この方式の制限は10人まで(場合によって25人まで)となっている。
基本的に無料で全て使える。有料のNitroを契約すると、サーバーの機能性が向上する特典が得られる。つまり、最低限の機能であれば無料で使えるし、実際、無料でもそれほど困らない。そのチャンネルのユーザー数が増えた場合は何かあるかもしれない。
Facebook Messenger
Facebookを使っていると自動的に使えるようになるメッセージングサービス。SMS(ショートメッセージ)を置き換えるような立ち位置のサービスになっている。Facebookの友だちネットワークをそのまま使えるSMSといった趣だ。
WhatsAppと同様に、海外ではこのようなSMS風のサービスがウケるようだ。前述のとおり、バルーン形式のやり取りは好みでない。
また、SMS風のためか、メッセージの検索機能がない。蓄積した情報を探すことを前提に使うことはできない。Facebook自体も検索が苦手なため、そういったことは考えさせたくないということなのかもしれない。
Messengerの場合、人によっては致命的なところとして、Facebookと連動しているところだろう。Facebookを通じてその人の人付き合いが全て見えてしまう。そういうのを見せたくない相手に対しての利用は難しい。
LINE
多くの人が好んで使っているから特に紹介することも不要だろう。
私の場合は仕方なく使う場合もあるが、個人的には極力使いたくない。ここではその理由について書いておく。
まず、入力の時に、文字を絵にしたものがチラチラ動くのが鬱陶しい。普通に文章を入力して伝えたいだけだから、LINEの売りになっているスタンプを使わない。むしろ面倒だと思う。このような絵柄優先のユーザ体験に対して私は想定ユーザ層ではないと感じる。
基本的に、携帯電話からしか使えない。PCを複数使おうとすると運用が破綻する。LINEにもPC版やiPad版があるが、どれか1台のみしかログインできない仕様になっている。あるPCで利用した後に別のPCで利用するとログインが求められ、元のPCに戻るとまたログインが求められる。非常に不便だ。
システム屋の視点からすると、設計がグチャグチャすぎて見ているだけで困惑する仕様があちこちに見える。スマホのメッセージングだけのシステムだった頃には想像していなかった拡張をし続けていった結果、整合性を無理矢理とっているのだろう。サーバに保管されているデータとローカルに保管されているデータの仕分けの不適切さ、ローカルに保管されているデータの保存性など、どうやったらこういう仕様になるのか不思議なほど酷い。
検索できないのも痛い。ただの雑談をしているのではなく、情報を提供し合っているという視点に立った機能がない。過去の情報を探し出せなければ、使っている意味がないと思っている。さらに、前述のデータ保管の仕様のおかしさも伴って、機種変更すらままならなくなる。PC版アプリには全てのメッセージが届かないことも問題だ(複数台を使っている場合)。
それから、LINEトラブルの典型例として挙げられる「既読」機能も鬱陶しい。相手が見ようと見まいと、伝えたことに意味がある。都合の良いときに読めば良いのであって、読んだかどうかの情報すら余計な情報で目障りに感じる。本当に読んだかを知りたいなら、読んだら返事するように伝えれば良いのだ。
サービサーからの案内も鬱陶しい。無料で使っているのだから仕方ないと言われるとそうだが、有料で構わないから無駄な通知をしないでほしい。重要なメッセージの通知と「新しいサービス始めました」「こんなの買ってね」が一緒になる状態は困る。
したがって、LINEはカジュアルに使うには良いのかもしれないが、そうでない場合に全く向かないサービスになっている。
LINE WORKS
LINEと同じインタフェースで使えるグループウェア。チャットもビデオ会議もできる。立ち位置としては、G SuiteやMicrosoft 365のようなもの。スケジュール管理やアドレス帳、メール、クラウドストレージ(Drive)が使える。
LINEを使って仕事を回そうとしたら難しくなったが、LINE以外には気が向かないといったユーザー層がターゲットではないかと思う。ただし、LINEとは異なり、Webブラウザからの作業も可能のようだ。PC版のアプリも提供されている。
存在は知っているものの使ったことがないため、これ以上は語ることができない。