文舵練習問題:400-700文字で形容詞副詞会話なし

一段落から一ページ(400~700文字)
形容詞も副詞も使わずに描写。会話はなし。


身を捻る。部屋。暗室、一対の照明が灯り、コンクリートの質感、手のひらが汗で湿る。水滴で黒ずむ壁を目で追いながら、指先に空気を這わせる。骨盤が痛む。腰椎、脊椎、頚椎、頭蓋。身体に突き刺さった糸杉を想う。反る。第三腰椎から第四腰椎を中心に部屋が回転する。空気が胚胎し、円柱に鑿が刻まれ、頭がひとつ、肢が四つ生える。皮膚が床を打ち跳ねる。音。指が現れ、手のひら、腕が、肩が、一室を浸す。胴体に設えられた宮殿は錆び、赤土が顕れ、臓腑を宿として夢が微睡む。身を捻る。を繰り返す。思われるもののよすがとして石は沈黙する。身を捻る。涎が落ち、眼球は震え、照明のひとつがそれ自体の影である極小の夜を落とす。夜は床を撫でる。時、打擲、腰に沈められた真珠、ガラス球を割る猿、三角の先端から落ちる泥土、きらめき、青、燭台を抱えた男の群れ、梁が折れる、世界が世界の雪崩を起こし、肩、腕、手のひら、指、爪先、その真空に留まり、一滴が留まりながら誰を、熾を潰す赤子の千の手。


#文舵練習問題

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