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10ヶ月くらい前へのタイムスリップ、だったこと

ふと気付けば、私は2023年4月下旬頃に戻っていた。
しかも、「自分が時を遡ったのだ」と分かっている状態――つまり、元いた時間の記憶を持ったままで。

確信を持ったカギは、年月日まで表示するデジタル式の目覚まし時計と、隣の布団で父が寝ている光景。
確かに、ちょうど10ヶ月ほど前に見覚えがあるシーンだと感じた。

だからこそ、私の行動は、この10ヶ月くらいをやり直そうという魂胆に満ちていた。
疎遠になってしまった友だちとのつながりを、“今”に至るまで保つようにしてみよう!
半年前くらいに出会って推しになった、あるグループの動画をこの時点で見つけ出して、もっと早い時期から応援していきたい!

けれど、そうしているうちに、どこかで、ふと目が覚めて。
布団から体を起こした瞬間、悟ってしまった。

仲良くし続けたいと願った友だちは、思い返せば全く知らない人だった。
推しグループのメンバーのひとりが、ファンの端くれでしかないはずの私の近くに、さも知り合いかのようにいてくれていた。

過去に戻っていたはずの体験は、すべて夢の中の出来事だったのだ。

ああ、やっぱり過去には遡れないんだ。
すでに終わったことは、やり直せないんだ。

悲嘆や絶望ではなかった。
ただ、残念だなという思いが、まだ掛け布団に包まれたお腹のほうから、じわじわと広がっていく心地がした。


ここまでが、現実の私…つまりはこうしてとりとめもなく記録を書いている私が、昨晩見た夢である。

夢中夢にくわえてタイムスリップとは、なんとまぁ、器用なことを繰り広げているのだろう。
現実で朝を迎えた時、むしろ自分の潜在意識に感心してしまった。

もし、単に記憶を整理するだけが目的だったとしたら、こんなに複雑なことをわざわざする必要はあるだろうか。
人の意識、特に潜在意識は時を超えると聞いたことがあるし、実際、普段から夢というのは時間軸がしっちゃかめっちゃかになりがちだけれど、
他ならぬ夢というものを使って「ほらご覧ください、ワタクシ今、時間を超越して過去に遡ってますでしょう?」と提示してくるのは、一体どういうことなのか。

私の顕在意識は妙なところで疑り深くて、理由や因果の類を求めたがるものだから、こういうことには何らかの意図や意思を見つけたくなってしまう。

たとえ、一定のプログラムのようにただ法則性に則って行われた処理だったのだとしても、記憶に残っている限り、こんな夢を見たのは人生で初めてだ。
数度体験した夢中夢でさえ、しばし夢と現実の境がぼやけてしまう不思議な感覚に陥っていたというのに、ここまでされたらどんな感覚で落とし込んでいいものか、いよいよ分からない。

ただ、一方で、心のどこかがこう語りかけてもいる。

深く考えずに味わえばいい。夢の中の私だって、少しの曖昧な根拠だけでタイムスリップを信じ込んだのだから。

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ちのみやみさと(地宮みさと/知之宮みさと)
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