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VSたっつん

ハイレベル子育てっつん

おチビさんの生活リズムは毎日少しずつ変化していく。
例えば授乳の時間が前後したり、お昼寝やお出かけのタイミングも日々刻々と変化している。
幸いにもたっつんと私は2人で揃っておチビさんと過ごすことが出来た為に、そのおチビさんメインの細やかな変化に柔軟に対応出来ていた。

加えて私から見ても、とにかくたっつんが物凄く努力をする人だった。(本人は当然のことをしているだけで努力をしているつもりは一切ない。)
赤ちゃんの生態・行動・仕組み…様々な情報をとにかく調べて、おチビさんにこんな風に関わりたいというはっきりとした理念の元に行動していく。

たっつんからの情報を共有することでおチビさんにねんねトレーニングを施したり、おチビさんグッズを調べて吟味したり。
赤ちゃんの骨格形成に合わせた抱き方を細かく指導された時なんかは『もうたっつんの子育ての仕方がハイレベル過ぎて付いてけねぇよ』と苦言を溢した。

正直おチビさんが来ても私は余裕が全く無かった。
体は否応なしに変化して、その変化は自分が望んだものではないし、必要に迫られて私の意志とは関係なく勝手に進む。

退院して来たばかりの時は股に生傷がある痛みをこらえ、便秘に苦しみ通院し、何度も何度も出来上がる乳房のしこりに悩まされ、酷い時には胸の特大しこりに筋肉が引きつられて背中から肩から筋肉が突っ張り、頭痛を引き起こし、更には寒気と何とも言えない具合の悪さで普通に生活するのもしんどい。

もう何も考えられない。
赤ちゃんのことを調べて、研究して、必要なものを選択して、判断してなんて器用さも余裕も私には無かった。
言うなればそんな私にとって授乳だけしてればオッケーみたいな環境はすごくすごく有り難かったのだ。

そんな中でたっつんの情報収集力と物事の取捨選択を担って動いてくれる行動力はとても頼りになった。
とても頼りになって、しっかりとした育児理念からのアドバイスや細かい要望なんかも多々あって、たっつんから紹介された本や動画なんかも見て…。

私は抱っこしてる時も、授乳の時も、おチビさんに話しかけている時も、じっと観察するように見つめてくるたっつんの視線をずっと感じていた。
うぅ…これなんか実技試験で採点されてる気分だ…。

私はテキパキ動きまくるたっつんの隣で自分で自分に赤の判子を付ける。
もっとがんばりましょう。

くそっつん!!!!

そんなしんどい日々からおチビさん7ヶ月の今。
またおチビさんの生活リズムが変化したのか、夜にはぶっ続けで私たちが起きるまで眠っていたおチビさんが夜中にふと目を覚ますようになった時があった。

直ぐにたっつんが起きておチビさんを観察し、抱っこしても泣き止まず、うーんと首をかしげていたので私も起きて様子を見た。
ゲップを出したくて苦しくて突然泣き出すことはあったけど、そんな時は抱っこしてゲップしたらすぐ眠る。
暑くて苦しかった時も冷ましてあげればすぐにまた眠りに返っていく。
今回はどちらでもない。

『私も抱っこしていい?』

たっつんから抱っこを代わって色々と話しかけているとおチビさんは落ち着き、目を閉じてぴたっと体を預けてきた。
あ、これは寝るかも。
また寝床におろすとギャー!と始まる。
私は頭の中でたっつんから紹介された動画やたっつんの言葉を思い出していた。

(どうしよう、お腹空いてるかもしれない。
でも、そう言えばちょっと前にたっつんにおチビさんに抱っこをしないと寝ないクセが付いてるって言われたんだった。
動画でも泣いた後に授乳したり、抱っこして寝たらいっぱい泣いたらそうして貰えるんだ!って学習するって言ってた。
たっつんは…観察中???
おチビさんを見て動かない。
これはおチビさんが1人で寝るのを待ってるの?
じゃあ、私も抱っこしないで待ってた方がいい?)

頭の中大渋滞。
私はギャン泣きのおチビさんの手を取ったまま、次の行動も取れず、抱き上げるタイミングかも分からず、困ってしまった。
困っているところにたっつんが『ねぇ。』と声をかける。

『あのさ、さっきから何待ちなの???』
え、とおチビさんの手を離した。
何待ちってなに???
たっつんがおチビさんを抱っこしてあやす。
おチビさんは泣き止まない。
『これだけ泣いてたら手を繋いでてももう無理だよ。フリーズして何待ってるのかと思って。』

………はぁ?

………なんだよソレ。
そこから黙って授乳の準備をしてブスくれながら授乳した。
おチビさんはお腹が満たされて落ち着いたのか、そこからすぐにすやぁ!と眠りの世界に落ちていく。

私はそこから長かった。
実はつい先日もおチビさんが肌の乾燥で痒みからパニック泣きをした時…私は動けなかった。
冷やしたらいいかも!と用意した保冷剤はたっつんから『今それはいいから。』と言われて…やっぱり私は手を出せずにフリーズするしかなかった。

(私が手を出さない方がたっつんが思う通り好きなようにおチビさんに関われるよね…。)

それをたっつんは『途中から動かなくなっちゃうんだもん。でも、仕方ないよね。そういう特性だから。』と言った。
そうだ、人はそれぞれ得意不得意があって、それぞれの性質がある。
それは私も分かってる。
たっつんも私も分かっていて、それでいてたっつんの言葉に傷付いたし、腹が立った。

そんな出来事に続いての今回だ。
布団の中で丸くなって涙をぐしゅっと拭いた。

なんでエネルギーワークで人と接する時は適切な言葉を選んで接することが出来るのに私相手になるとこんなデリカシーの欠片もないわけ?
そもそもこっちがどんだけ気を遣ってると思ってんだよクソクソクソ!!

くそっつん!!!!!

煽りスキル全開っつん

次の日も私はブスくれていた。
こうなると自分でも分かっているけど、私は非常に長い。
それを分かってか、たっつんは更に煽ってきた。

『てんてんも赤ちゃんの生態とか仕組みとか自分で調べてみるといいよ。
今のままじゃたっつんが居なかったら何にも出来ないよ?
何かあった時にまたフリーズしちゃうよ?
こっちの負担も大きいし。
授乳だけしてればいい訳じゃないよ。』

はぁ~?????
うるせぇうるせぇくそっつん!!

私はおチビさんを残してたっつんのいる部屋を出て同居してる祖母や一時帰省していた妹にたっつんの愚痴を並べ立てて食いまくった。(それでも2人はたっつんと私を信頼してたっつんにきつく当たることも、私を嗜めることもなく話を聞いてくれる。感謝。)
栗ご飯がうめぇぜ、ばあちゃんの飯は最高かたっつんは最低だクソクソクソ!!

そんなに言うならおチビさんと2人で出ていけばいい!!
どうせ思考停止してまともに動けやしないってなら私なんていない方がいい。
授乳だけしてればいい訳じゃないなら置いていけばいい。

思えば今までどれだけこっちが気を遣ってたっつんのハイレベル過ぎる育児に満身創痍の状態から付き合って、細かい要望にも応えたり、行動を逐一考えて制限したり、我慢してたと思ってんだよクソクソクソ!!

…待てよ。
(今、私…我慢してるって言ったな。)
整理して考えてみる。
私がフリーズした時…私はいったい何を見ていた?
何を感じていた?

そうだ。
私のしたい行動はいつだって決まっていた。
おチビさんが体が暑くて乾燥して痒くてパニック泣きをしている時は楽になればと冷やそうとした。
おチビさんが夜中に起きて泣き止まない時は抱き上げたり、授乳したりしたいと思った。
それを止めてたのはなんだ???

たっつんの存在だ。
私の何倍も動けて、試行錯誤していて、おチビさんに関わるたっつんがいたからだ。
あそこまで腹が立ったのは自分だってこう動きたいと決まっているのに、それが出来ない状態になってる上で『何もしてない』『何も出来ない』『フリーズしてる』と言われたからだ。

違う、違うぞそれ!!
私だって私のおチビさんへの関わり方があるんだ!!

そこまで考えて栗ご飯を2杯平らげ、油揚げを1枚吸い込み、煎餅を噛み砕いてごっくんする。
退院直後は有り難かったたっつんの行動が、いつの間にか私に対してプレッシャーになって、行動を制限させたり我慢するように働いている。

今の私はもう退院直後の満身創痍の私じゃない。
きっと私はたっつんがいなかったらそっちの方が腹を括って動くことが出来る。
おチビさんを躊躇なく抱き上げ、言葉をかけることが出来る。
それが例え、たっつんが適切じゃないと思った関わり方であったとしてもだ。

立ち上がって私は部屋へと向かった。
祖母と妹が笑顔で見送ってくれて、やがて部屋の近くまで来た私の耳にはおチビさんの泣き声が聞こえる。
私ははっきりと抱き上げたいと思った。
ほら、こんなに私のしたいことははっきりと決まっているんだ。
私はたっつんと対峙して整理した考えを伝えた。

『たっつん、あなたはおチビさんにどう関わりたいか、どう育てていきたいかすごくはっきりしてる。
だからこそ、たっつんからは色々と細かい要望があるし、それを私も聞いてきたし、助かったのも事実だけど、今はそれが私の行動を止めている。
私はあなたには劣るかもしれないけれど、あなたがいない方が動けると思う。
あなたに気を遣う必要ないし、腹も括れる。
あなたが居なくておチビさんと2人でもちゃんと動ける。
私の関わり方がまずかったと思うなら、その時は後からでも私やおチビさんをフォローして。』

冷静に話しているようで内心はこう。

実際は色々と話し合いを重ねたけれど、簡単にまとめるとそんな感じ。
それは私は私のやり方であなたとは違うやり方でもおチビさんに関わりますんでよろしく!っていう、煽りに対する宣戦布告みたいな感じだった。

なんでか聞いてるたっつんの顔は真顔なのに嬉しそう…。
おチビさんも『あ、これ静かにしといた方がいいやつ』と空気を読んで話すことなくほぼ無言で一人遊びして布団の上をコロコロしていた。

『確かにたっつん、色々と細かく要望出してたね…。』

そこから話し合いは進んで…たつみのりっちのバランスは更に整ったように思う。
たっつんが言うにはああいう言い方じゃないと私に刺さらないと思ったらしい。(すごく頑固なのは自分でも知っているけど、それにしたってデリカシーは無かったよと伝えた。)

基本が反骨精神の塊の私は…悔しいかな煽り耐性は0に限りなく近く、一気に燃料として燃え上がり鍛えられる鋼の如く純度が上がる性質があった。
そこまで考慮しての言葉だったのかよ、腹立つな。
確かに効果覿面だったわ、一気に事態は加速して燃え上がり、そして鎮火した。

私はタイミング良く妊娠出産を生家で過ごし、自分の人生の棚卸しをすることが出来た。
それは今もずっと続いていて、誰かに教わった生き方じゃなくて、より自分そのものでたっつんやおチビさんに関わって行くようにという流れの現れだったかと思う。

そうでなかったらおチビさんに『自分を生きていく』を伝えられない!!
そう私の魂の芯がこういう物事を望んで、周囲の存在がそんな応えた結果起きた物事って感じ。

誰かの反応を見て、誰かの意志を見て、自分そのものを引っ込めることでバランスを保つようにずっと生きてきた。
大分マシになったと思っていたけど、たっつんとおチビさんとチームになる為にはまだまだだったようだ。

思えばおチビさんが生まれてからは人間関係の表面上のバランスを崩すようで、実際はもっとより良い人間関係を自分を中心に構築出来るような、そういうことを促すような事ばかり起きている。

今回の【VSたっつん】もそんな流れの総仕上げ的な意味合いがあったっぽい。(これは全部後から分かったことだけどね。)

『きっと今よりもっとずっと楽になるよ。』
『ピヨ!』
そんなドタバタ劇の末の私の宣戦布告はたっつんを思いの外喜ばせているらしい。
きっともっとたつみのりっちはいいチームになると思ったのかもしれない。
全く…巷では仙人だとか天才エネルギーワーカーとか騒がれているたっつんだけど、そんなあなたに常日頃から付き合う私はたまったもんではないよ。
なにせ自分を生きるために必要な物事がこれでもかと起きるのだから。

それでもたつみのりっちでいくんでしょ!
だってそれが1番自分の人生を自分らしく生き抜く道だと分かってるもんね。
そんな声がどこからか聞こえてきたような気がして、なんだかごっそり力が抜けた。

悶々しての曇り、整理整頓棚卸しの涙雨、方針定まりの曇り空割って天使の梯子。
たつみのりっちの虹色天気の日々は続く…!


リアルな見えない世界の体験を綴ろうと思っています。自分が感じた感覚をそのままに。私の大切にしたい世界が伝わることを願って。見えない世界も大切にしたいと思う方はサポートしてくれると嬉しいです。