こういうのが"ターニングポイント"って言うんだろうな。
「仕事辞めて大阪行って院生になるって言ったらどうする?」
旦那からそんな問いを投げかけられたのは2019年の8月くらいだったかと思う。
ある意味、同棲の提案やプロポーズより鮮烈な言葉だったかもしれない。
働いていくうちに、大卒の人間と院卒の人間へ向けられる目線の違いや信頼感にモヤモヤしていて(大卒の自分が何か提案しても取り合ってもらえないのに実務能力がなくても重用される院卒がいたり)、「だったら自分も院卒になればいいんでしょ」と半ギレしながら情報収集をしていたのだった。
師事したい先生が大阪にいて、入学の意志を伝えたら「仕事辞めてくるぐらいじゃないとうちの研究室じゃやってけない」と返されて、先の発言に至ったらしい。
東北人な二人にとっては関西なんてほぼ異国なのようなもので、テレビなどから刷り込まれたイメージは強烈だし、そのノリについていけるか不安だし、そもそも金銭面的に大丈夫なのか…(わたしは日雇い派遣で働いて自分の小遣いを稼いでいる程度。とても家計を支えられるような状況ではなかった)
言われた瞬間上に書いたことが一気に頭の中を駆け巡って「さすがにちょっと考えさせて」と言ってその日は終わった。
だけど「関西も案外楽しいかもな」「こんなきっかけでもなければ住まないだろうし」「まぁ行ったら行ったでどうにかなるっしょ、いやどうにかする」なんてことを思い始め、2日後には
「大阪行くなら行こう。あなたの人生はあなたのものだし」
と笑顔で返事をした。
ともすれば他人行儀に聞こえるかもしれない。
夫婦といえども人格が一緒なわけではないし、それぞれが大事にしているものがある。時には相容れない事象に出くわすこともあるだろうけど、ちゃんと歩み寄って落としどころを探す。そういう一見面倒なプロセスを踏んででも一緒にいたいと思うから『結婚』という形を取り、生活を共にしているんだ。
何より仕事や研究に真摯に取り組む姿が好きだしわたしにはないそのストイックさを尊敬しているし、「自分も頑張らなきゃ」と鼓舞させてくれる存在なのだ、わたしにとっての彼は。
そう思ったら反対する理由なんてなかったし、わたしにとってもいい転機になるのかも、とポジティブ全開になっていた。
結局仕事をしながら修士号を取得できそうな大学院が見つかってこの話はなくなったが、人生を、夫婦を、そして自分たちのスタンスを改めて確認する出来事だった。