鉄欠乏性貧血について。

 貧血の予防や治療に効果的な食品やサプリメントが注目されているが、これらだけでは貧血を治すのは難しい。原因を見つけて、適切な治療を受けることが大切で、食品やサプリメントを摂りすぎると、副作用や体調不良のリスクが高まる。
 鉄欠乏性貧血は貧血の中でも最も多く見られるタイプで、鉄の不足によって赤血球の生成が低下し、血液中のヘモグロビンの量が減少する。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っているので、酸素不足によるさまざまな症状が起こる。
 症状としては疲れやすい、動悸がする、息切れがする、顔色が悪い、頭痛やめまいがする、冷え性がある、爪が割れやすい、舌や口内炎ができやすいなどがある。鉄欠乏の原因として、1. 鉄の摂取不足、2. 鉄の喪失、3. 鉄の利用障害の3つを考える。
 鉄の摂取不足は通常は起きないが、妊娠中や授乳中、成長期の子どもや女性は鉄の必要量が増加する場合に生じる。鉄の喪失は出血によって鉄が失われる場合で、主に月経や月経過多で見られるが、消化器系の出血(胃潰瘍や大腸癌など)、外傷や手術などでも起きる。
 成熟した女性の40%、とくに月経のある20代~40代の女性の約65%に貧血もしくはかくれ貧血がある。鉄の利用障害は炎症や感染症などによって骨髄での鉄の利用が妨げられ、赤血球が十分に作られない。貧血治療薬(エリスロポエチンなど)が必要になることもある。
 診断は血液中のヘモグロビン濃度や赤血球数を測定し、とくに鉄とフェリチン(鉄を貯蔵するタンパク質)の濃度の測定が必要である。鉄欠乏性貧血の重症度を判断する指標としては、ヘモグロビン値とフェリチン値があり、一般的に前者を用いるが、後者は治療終了の判断として利用する。
 ヘモグロビン濃度の正常値(g/dl)は男性で13~17、女性で12~16で、フェリチン値(ng/ml)は男性で20~250、女性で10~120である。症状と重症度は一致しないが、ヘモグロビン値によって分類すると、軽度は男性11~13、女性10~12、中等度は男性8~11、女性7~10、重度は男性5~8、女性4~6、極重度は男性5以下、女性4以下である。また加齢に伴って赤血球の産生能力や寿命が低下し、赤血球数やヘモグロビン濃度は低下する。高齢者の貧血は11g/dl以下を目安とする。
 鉄欠乏性貧血の治療は、鉄の補充が原則でも、輸血は例外的で極重度を除いて必要ないと言える。基本的に鉄剤の内服と点滴が行われるが、通常内服薬を1日1~2回服用すると、2~3週間で赤血球数とヘモグロビン濃度は改善する。しかし、体内の鉄の貯金であるフェリチン値が回復するまで、その後も内服薬を一、二カ月は続ける必要がある。

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