危険水域の内閣支持率。

 岸田首相はついに絶体絶命の低い内閣支持率を突きつけられ、年内の衆議院解散を見送る意向を固めた。11月に衆院議員の任期が折り返しを迎え、選挙に勝てるタイミングでの解散を模索してきたが、来年秋の自由民主党総裁選挙での再選計画は見直しを迫られた。
 内閣支持率の低迷が続いている。政権発足から最低水準の20%台に落ち込んだ現状を考慮し、当面は解散を諦めて、経済対策などに集中せざるをえないと判断した。年内にも衆院解散に踏み切るのは現実的ではないと見た岸田氏は、来年秋の総裁選に狙いを定めたようだが、いつ何とき方針が変わるかもしれない。
 岸田氏は年明け以降に改めて解散の機会を探ることになり、定額減税や低所得世帯への給付を盛り込んだ約17兆円の大型の総合経済対策を確実に実施し、デフレ脱却に向けた道筋をつけたいと考えている。
 予算をばらまくために、獅子奮迅の働きあるいは最後のあがきという見方もできる。しかし、逆に金余り現象を促進し、デフレ脱却は「物価2倍論」を誘導する可能性が高いと言える。
 問題は予算の膨張が景気を支えていない点にもある。大規模な予算を使いながら、経済支援にはつながっていない。わが国の予算は何かにつけて、とくに選挙となると、水準を高め、その後元に戻らないまま、次の機会でまた跳ね上がる。こんな状況では予算の無駄遣いも多い。どのように経済対策を進めていくのか、本気で予算や経済の在り方について議論を進める必要性がある。
 しかも、首相が打ち出した所得税の1回だけの減税には選挙目当てとのイメージが定着した。これでは国民の期待は低く、現在の物価高ではデフレ脱却や防衛費の増税はとんで
もないことで、それよりも消費税の減税や廃止を望む声が圧倒的に多い。
 内閣支持率は危険水域とされる2割台に下がり、不支持率は7割に迫るなど、政権運営の厳しさが増しており、地方選挙でもその影響が現れ始めた。実際に議席数は余り変わっていないが、世の中の機運は自公難しだけではなく、市民政治への志向が高まっている。
 低空飛行の状態で総裁選が近づけば、25年の参院選や衆院議員任期切れを見据え、党内で新しい顔を求める声が強まりかねない。党の幹部はこのままでは解散しようとしてもできなくなると指摘した。
 総裁選は首相退陣による前倒しもあり得る。 


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