[第八話]冬。アディダスVSカッパ。
高校デビュー戦の後、いくつかの草試合に参加させてもらいました。
しかし、結果も的中も振るわず。全く成長している気のしない自分に苛立ちを感じ始めていました。
この感情は、この先、弓道部生活の大半の時間、悶々と自分の周りを、つきまとうことになります。
その上、一部部員から
と言うような、いらん茶々入れが入る事もしばしば……日に日にエスカレートしていたので。
相手にしないようにはしていましたが、やはり毎日何度も言われ続け、耳を塞ぎ切るのはとても難しい事でした。
中には、それを”ニコニコしながら楽しそうに”言う人も居たので、困ったものですが。
結局そういう人は最後まで続かなかった、続けられない状況に追い込まれたので、自業自得なのです。
コンプレックスや虚勢を張るのはいいけれど、人を馬鹿にするのは、いいことないんだよ。
今なら
…みたいな、言い返しを、呼吸をするかの如く吐き出すだろうけれど、当時は普段は口は悪い割には、肝心な時に強く言えない性格でした。
ホント、別人みたい。
でも、戦績も、3年間在籍していたと言う意味でも、俺の完全勝利。
ある初冬、T監督から呼び出されました。
腹の中で”おやびんではないでしょ!!”と、先生にツッコミの言葉を飲み込んでいると、ウィンドブレイカー(防寒具)のパンフレットを貰いました。
冬に向けて、1年生は全員統一の名前入りウィンドブレイカーを購入するので、話し合って、どれにするか決めなさい。
との事。
そして、その取りまとめの指名が、何故か私に来ました。
1回目の話し合い。すぐに話はまとまりました。
そして、その日のうちに、T監督に報告。
T監督は、了解。
……と思いきや……。
翌日。
先輩に事情を聞くと、T監督の愛用スポーツブランドがカッパらしい。
そして、カッパのウィンドブレイカーを選ぶのが、毎年恒例の母校のジンクスなのだ、と。
アディダスを選ぶ事は前代未聞だと。
割と食い気味に、強い口調で言われました。
私は”ふむふむ”と、頷きながら話を聞き。
と、言いつつ、先輩は、
と、叫んでいる。
そして、同じ日にT監督に呼び出され、優しい口調で
その日の部活の際。
他の同期部員も、チラホラと、先輩にウィンドブレイカーの件、怒られていました。
我々の殆どは、別にアディダスには拘っていなかったので、カッパに変更!!という事で、話はまとまりそう…だった。
私自身も、みんながそれでいいと言うのであれば、たかがウィンドブレーカーごときで、アディダスに拘って、先輩と一戦交える所までは……管轄外だと思っていました。
ホント、重要なのメーカーじゃないから、どーでもいい。
そこは先輩と戦う意味が、私には見出せず、おそらく他の同期もそう思っていたのだと思います。
しかし……1人だけ
…と、ゴネ始めた。
T監督にもう一度報告。
そこからは、一部先輩達のカッパ至上主義主張の応酬と、同期2のアディダス絶対主張。
私はやる気を無くしていたし、他の同期ももはや”どーでもいいわ”という雰囲気でした。
もはや傍観者。
そうこうしているうちに、T監督が同期2に何か言ったのか、どうなのか…解りませんが。
と、私に突っかかってきたので。
…と、得意の”面倒くさいから、勝手にしてくれ”モードで同期2を突き放しました。
それから2、3日経って。
同期2は、少し大人しくなったかと思ったら、どう言う風の吹き回しか、いきなり、
と、言ってきました。
こうして、我々も、先輩達に習ってカッパのウィンドブレイカーを手に入れることができました。
雪国の冬も余裕で乗り切れる、かさばらなくて暖かい仕様だったので、かなり重宝しました。
結構ちゃんとしたものだったので、防寒具とはいえ、当時、自分が身につけていた衣類にしては高価。
親にウィンドブレーカー代の話を出すときは……少し勇気を出しました。