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[第七話]射技以前に体配がとても厳しい学校。そして、高校デビュー戦へ。

夏休み後半になると、大会や審査会では必須となる、入退場の練習が始まりました。

弓と矢を持って、歩き方や目線の位置、礼のやり方を教わるのですが……
この学校、めちゃくちゃそれが厳しかった!!

5人1組になって、初めはイチ、二…と、数を数えながら、次第に呼吸と間合いを合わせて、動作をします。

間合いが本当にピッタリ合うまで。
1人ズレたら初めからやり直し。

入場が合うと、今度は的前に立って、立射りっしゃ坐射ざしゃを、これも合うまで。
ズレたら初めからやり直し。

そして、ズレるたびに、T監督や先輩から

「だめ!!はじめから!!」

と、ダメ出し……またダメ出し……ひたすらダメ出し。
そして振り出しに戻る。

1年生の夏休みから、かなり厳しい体配たいはい練習が行われるため、その頃には1年生でもかなり体配について、意識の高い状態になります。
そして、その体配が汚いと、どの学年になっても「体配合ってない!!」「合わせにくい!!」「汚い!!」と、鋭いツッコミをもらう事になります。

綺麗に合う体配をするには、後ろの人が呼吸を合わせるだけではいけなくて、前の人は後ろの人が合わせやすい、ゆったりとメリハリのある呼吸、動きをしなければならない。

チームを組んで反省会をするとき。
的中以前に、チーム全体の体配の反省会をする事は本当によくありました。

とにかく、寸分違わず合わないと”誰かしらかが必ずダメ出しをする”ので、体配に再重点を置いている…
前の人の体配が合わせづらいと、後ろの人に突っ込まれ、後ろの人の体配が合っていないと全員が怒られる。

当時の、この学校では、”的中以前に体配が綺麗に合うのは当たり前のことで大前提”でした

T監督「この(学校にある)技能優秀の盾に誓って、俺の目が黒いうちは、体配はきっちり合わせてもらう。
的中てゲームは許さん。」

…だそうです。

だけど、実際に高校レベルでは、母校ほど綺麗に揃う体配をする学校は、県外に行っても、私は出会ったことはなかったです。

秀岳館高校や、鹿沼高校が上手いとは、事あるごとに聞いていますが、少なくとも私はその2校の体配を見ることなく高校弓道生活は終わってしまいました。

他の学校の体配を見ていると、自分は本当に母校で弓道が出来て良かった!!と、思ってしまいます。


秋になると、全員参加の市民大会がありました。
中学の時に毎年参加していた、地元市民大会の、参加高校3校の内の1校が、母校だったのです。

ひと夏の部活を乗り越えた1年生も、9月には全員的前に立っていました。
そんな矢先に、小さな大会から。
これが我々のデビュー戦でした。

私自身、飛躍的に上達した…とは思ってはいませんでしたが、中学の時とは違い、8本弓を引いて、1本も中らない…なんて事は当時はありませんでした。

ところが、中学生の頃から、かいが3秒程度の早気はやけ※で、なかなか治せずにいました。
会という概念が、うまく理解できていなかった当時、長く保とうとする程、矢が暴発してしまいそうで怖かったのです。
“ちゃんと会になっていれば”そんな事は滅多にないはずなんですが、会のコツを何と無くでも掴むのは、まだ当分先の事でした。

かいとは:弓を引き切った状態。離れに至るまで、弓を持っている手(弓手ゆんで)は的側に、弦を引いてる肘(馬手めて)は的と反対方向に伸びあっている状態。

早気はやけとは:会が短い事

とりあえず、高校のデビュー戦なので8本中4本中てたいなぁ…と思っていました。

そして、その8射4中が出来。

多分、先輩は誰かしらが入賞するものと思っていたので、矢取りをしたり、控室でゆっくり過ごしたり……
競射きょうしゃ※の応援の準備をしたりしていました。

同郷S先輩「0w0(仮)、競射※、残ってるよ?がーんばれぇー(ニヤニヤ)」
0w0(仮)「!?」
※競射とは:順位決定戦のこと。優勝争いは1人1本ずつ引いて、どちらかが外すまでサドンデス。
それ以外の順位決定戦は、1人1本順番に同じ立ち位置から同じ窓に向かって弓を引いて、より的の中心に近かった人から上位を決めることが多い。

8射4中程度で、残ってたまるか…とか思っていたけれど、本当に残っていた……

同じ順位決定戦に、先輩、高校は違うけど中学の時の同級生がいました。

折角残ったので”勝ちたいなぁ”と、思いました。
しかし、競射なんて、初めてなので、お作法がわからなかった。

しかし、競射に残ると言うことが解ると、面倒見が凄くいい部長が、私に競射の時の動き方を短い時間でレクチャーしてくれた。

それと、中学生の時にお世話になったO先生が、私と、他の1年生の順番の時は、横についてくれて、前の人が引き終わってから、自分が的前に進むまでの作法をガイドしてくださりました。
部長とO先生の指導や配慮がとってもありがたかったです。

何人か的に当てていましたが、全員引き終わって、矢が運ばれてきた時。
自分の矢が、他の人の矢よりも少し上にズラされて運ばれてきました。

0w0(仮)「(あー。びっくりした。高校デビュー戦で入賞しちゃったよ……嘘でしょ?ラッキーって、こう言う事を言うのか?)」

7位。ギリギリですが、入賞をしました。
あー。びっくりした。(2回目)

しかし、先輩差し置いて入賞してしまった事。
早気の状態で入賞してしまった事……
射技が未熟な状態で入賞してしまった事…
多分、あまり好かれていなかった事……

この後しばらく、同期や先輩……一部の部員からの風当たりが強くなってしまったのは言うまでもありませんでした。(ドンマイ、当時の自分……)

弓道の世界では、早気の人は何故か厳しく非難されます。
“こんなに非難される必要なくない!?”と、当時から思っていましたが、残念ながら、早気に過剰反応する連中も一定数いる。
その上、周りより少し中ったりすると”中て射だ”と揶揄される。

私も、例外なく、高校時代(しかも1年性の時)に、一部部員からそんな事を言われていましたが…
この風潮は、今後は改善して欲しい事の一つです。



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