
ご先祖様 is 誰?広域交付制度を使って家系図を作った話
まとめ
ふと思い立ってご先祖様の戸籍を請求できるだけ請求したところ、総勢119人、文化4年(西暦1807年)生まれまで遡ることができた。楽しかったので手順と感想を書き残しておく。とはいえ先人がとてもわかりやすい記事を残してくれているので、手順を知りたい場合は最後のおすすめ記事・ツールから当該記事へ飛ぶことをおすすめする。
動機
初夏、産むまでコースとなった後期つわりに苛まれながらなんとか産休に入り、死んだ目でスマホを眺めながら日々をやり過ごすなか、怒涛のしょうもな炎上ポストの合間に興味深げな記事を見つけたのがきっかけ。
なんでも2024年3月から本籍地に出向かなくても最寄りの役所で戸籍の交付を受けられるようになった(広域交付制度)らしく、その制度を利用して自分の直系尊属を遡れるだけ遡ってみた方の記事だった。めちゃくちゃおもしろそう。
あとは第二子誕生を前にイエーイご先祖様見てる~~!?!?……しかしご先祖様 is 誰?となったのも動機のひとつ。名前だけでも辿ってみたい。
そういうわけで上記記事を参考に自分も家系図を作ってみることにした。
手順
①最寄りの役所へ行く
②両親の戸籍全部事項証明書(以下戸籍謄本)を請求
③両親の戸籍謄本から祖父母の名前と本籍地がわかる
④得られた情報を利用して祖父母の戸籍謄本を取得
⑤上記を行き止まり(後述)まで繰り返し
祖父母や曽祖父母くらいまでなら氏名・本籍地がはじめから分っていることも多いと思うので、そこから始めれば費用(後述)も抑えられる。
申請用紙の目的欄(相続、養子縁組などの項目が並んでいた)を「その他」にしていたところ窓口で詳細を訊かれ、「アッス…えっとぉ……戸籍をぉ、遡れるだけ遡りたくてぇ……家系図、みたいな……ヘヘッwww」というキショ社不ムーブをかますも、職員さんは「なるほど家系図の作成目的ですね~」と慣れた様子で流してくれた。更にこの時「遡れるだけ遡って一気に請求」という方法がとれることを教えてもらえたので迷わずお願いした。この部分を自力でやるのと丸投げできるのとでは労力が段違いなので、受け入れてもらえるならお願いすることをおすすめする。その後は交付待ちとなるが、「請求作業中に間違いが見つかったので修正するのに時間がかかる」との連絡が入り、その修正作業も含めて交付まで2か月以上かかった。しかし戸籍の間違いってそもそもどうやって気づくんだろう。確実に今回のトンチキ請求がなければ判明しなかった間違いであろう。仕事を増やして申し訳ない。対応してくれた職員さん本当にありがとうございました。なお、戸籍の発行には1通750円かかるため、47通請求できた本件では35250円の手数料がかかった。結構大金である。最近は役所の手数料なんかも各種キャッシュレス決済で受け付けてくれるから便利だよね。
戸籍請求が終わったら内容を粛々をまとめていく。直系だけと割り切っても世代が上がるごとに倍々で登場人物が増えていくし、傍系もまとめるとなると更にその数倍になる。更に2〜3世代前は時代柄養子をもらったり出したりがかなりカジュアルに行われていたようでこれもまた追うのがややこしい。私は有志の方が配布している家系図作成ツールをDLして使用したが、登場人物が増えすぎて逆に見づらくなってきたため直系に絞った表も別に作った。
我が家の歴史
請求できた戸籍謄本は47通、氏名が判明した一族は総勢119人、生年月日が確認できる最古のご先祖様が6代前の文化4年生まれ。さらにそのお父さんの名前まで判明したので世代としては7代前まで遡ることができた。文化4年は西暦でいうと1807年。ペリーも来てないゴリゴリの江戸時代である。歴史だ……。
除籍(婚姻や離縁、死亡などで戸籍から抜けること)理由も追っていくと、移民先の異国で亡くなっていたり戦争中に現地の兵站病院で亡くなっていたりしたご先祖様もちらほらいる。歴史だ……。
あと時代を遡ると男性は「ナンタラ丞」さんとか「ナンタラ衛門」さんとか時代劇に出てきそうな名前になっていき、逆に女性はシンプルカタカナ名になって今の感覚でいうと新進気鋭作家のおしゃれペンネームの様相を呈してくるのが興味深かった。
作成した家系図を持って存命尊属最年長の祖母に会いに行ってみた。その結果こっちの家系は木材業をやっていたけど戦争でパァになったとか、あっちの家系は炭の売買を生業にしていたとか、知らなかったエピソードが引き出せてなかなか楽しい時間が過ごせた。もうすこしはやくやっていたら既に亡くなった祖父母からも話が聞けたのになぁ~~と悔やまれる。
戸籍制度にちょっとだけ詳しくなる
まとめているうちに戸籍制度にちょっとだけ詳しくなった。こういう仕入れたてほやほやのにわか知識ってめちゃくちゃ他人に伝えたくなるので書いてもいいですか!?書きますね!!
広い意味での戸籍は飛鳥時代から作られていたらしいが、戸籍法に基づくものは法が制定された明治4年以後に作られた。戸籍法はちょこちょこ改正されており、中でも大きな改正は昭和23年、平成6年の改正である。前者では家制度の廃止に伴い、戸籍の単位がそれまでの戸主を筆頭とした大きな単位(大抵は一族の長男が戸主でその妻と子、兄弟がいる場合はその妻子、更に隠居した親世代が含まれる場合もある)から現在の「夫婦と未婚の子」の小さな集団に変更となった。後者では記録が電子化されてぐんと見やすくなっている。昔の手書きの戸籍を解読した後に現行の電子化された戸籍を見ると読みやすすぎて涙が出る。
また、戸籍には保存期限がある。戸籍法が改正されたことにより旧バージョンとなった戸籍(改製原戸籍)や婚姻・死亡などでメンバー全員が除籍となり閉じられた戸籍の保存期限は現状150年となっている。平成22年の戸籍法改正以前は保存期限が80年だった。
更に、現状アクセスできる最も古い戸籍は明治19年式のものとなる。そのひとつ前、戸籍法に基づいて初めて編纂された明治5年式の戸籍(壬申戸籍)は凍結されている。なんでもこのバージョンの戸籍には江戸時代以前にえた・ひにんとされた人たちがそれとわかるように記載されており、一部の身辺調査会社が対象者が被差別部落出身者でないか確認するためにその家系の戸籍を勝手に請求する事件が起こったのが理由らしい。
以上の理由で戸籍を遡っていくと必ずどこかで行き止まりに到達してしまう。廃棄済みとか記録がない時代とかはまだ諦めがつくとして、あるのに見られない戸籍があるというのがなんとももどかしい。凍結理由もやるせないし。
感想
誇り高きザ・一般庶民であるところの我が家系でも7代前の江戸末期まで遡れたので、だいたい誰でも5〜6代前位までは安定して遡ることができるんじゃないだろうか。行政ってすごい。
そしてその分、ちゃんと家系図が伝わってて江戸中期以前まで遡れるお家がうらやましいと思った。そもそもそのレベルの家系図ってどんなお家に伝わってるものなんだろうか。旧華族・士族とか神社やお寺とか、あと代々続く家業があるとかそんな感じか?かっこいい。言われなくてもしてると思うけど是非今後も大切にしてください。
あと、ネットで調べると「家系図作成業者」なるものが結構ヒットするけど、プロにお願いすると何世代くらい遡ってくれるんだろうか。戸籍で遡れる範囲+αの情報が得られるなら興味あるんだけどな。
おすすめの記事・ツール
最後に参考になった記事・ツールを紹介する。
①きっかけになった記事
この方は自分の家系のデータを一部公開している。戸籍の請求方法についてもわかりやすく書いてあってありがたい。
②きっかけになった記事その2
この方は広域交付が始まる以前に同様の試みをしたよう。今より数段手間だったと思われる。郵送による戸籍謄本の請求手順が書かれている。
③家系図作成ツール
有償・無償含め様々なツール・ソフトが配布されてるが、私はこちらの無償ツールを利用させてもらった。氏名・生年月日などの基本情報のほか、人物ごとに本籍地やエピソードなどを記入できるフリースペースもある。ブログ・YouTubeで作者さんご本人による説明も見られてわかりやすい。マクロでシュババババ…と家系図が作成されていく様子もおもしろかった。