知の蓄積と継承
コムギの研究をしてるけど、何でも知ってますみたいな顔して歩くけど、まだまだ知らないことはたくさん。
そりゃそうですよね。
1924年の論文とか引用するくらいに、100年以上前から研究されてる。
ここ最近の次世代シーケンサー(NGS)技術のおかげで研究進捗は加速度的。
毎日たくさんの論文が発表される。
コムギと一口に言っても、開花メカニズムに特化している人、種子の品質に特化している人、ストレスなら低温、乾燥、高温、病気、虫...それぞれに専門家がいる。
そんな中で高々大学院生が6年かそこらの研究人生で把握できることってほんの一握りでしかない。自分がやったことある研究テーマの近辺は一通り調べたはずだけど、学部時代に調べたことってサーベイの仕方が甘いから抜け漏れが多かったり、そこからアップデートされていたり...
コムギのことは全部知っていたいと思うけど、全ての論文を一から読んでいる時間なんてないから、わからなくなった時、必要な時に地道に勉強していくしかない。
今日は2つのサーベイに午後のほとんどの時間を費やしてしまった。
1つは解析で出てきた現象について。
新しい現象に当たった時には
1. 新しいと思い込んでただけで既知の現象
2. 経験的に知られているけど実験的に証明されてない現象
3. 全く未知で完全に新しい現象
のどれかに分類するわけだけど、圧倒的に2が多い印象。今回も2だった。
自信を持って2です、というには一通り論文を当たらないといけない。
検索ワードを変えながら遺伝子発現解析技術がでてきた2000年前後の論文まで遡りました。
コムギで証明されてなくてもオオムギやカモジグサ、もっと言うとイネやトウモロコシなんかで証明されていれば、コムギでも同じことが言える可能性があるので、その辺も一通り見ます(これはこれでコムギでの証明が後から必要だけど)。
二つ目は解析方法について。
これからやりたい解析をするためにはどの程度のデータ量が必要か。実際に解析するためにどのソフトウェアが必要で、どんなワークフローでもってやれば精度の高い結果が得られるのか。
コムギやその近縁種の場合、ゲノムサイズが大きいからこそ、他の生物と同様にやって本当に上手くいくかわからない。
だったらなるべく無料のソフトウェアで、時間のかからない解析手法で、かつ得られるものが高精度なものを...なんて。
やらなきゃいけないタスクはあったけど、サーベイってその時にやらないと一生やらないんですよね。で一生わからないままなの。
だからと言って全部の論文を1から10まで読むわけにもいかないから、必要なとこだけつまみ読み。大事そうなのはざっと全体に目を通して...くらいのもんですが。
頭の中は情報でいっぱいいっぱい。
それでもコムギでは証明されてない現象が他の植物で見つかった時に、じゃあどうやってコムギで、今あるデータだけを使って証明する?
全く新規の現象だった時にはどうやって実験する?証明する?新規であることのサポートデータはどうする?
調べて出てきた手法はコムギでも使える?どんな工夫で使えるようになる?
とかって考えるのはちょっと楽しい。
知らなかったことを知るのも楽しい。
先人たちが明らかにしてきたことを自分の中にためていく。
そこから自分の新しい発見が繋がって、さらに次世代の研究者に繋がる。
知の蓄積と継承。これの一端を担えるのは最高にエキサイティングだ。
ただ、サーベイした後ってデータまとめやら執筆作業やらが全く手につかないんですよね。朝のうちに要旨1本あげといて良かった。
それから読んだ内容忘れるのどうにかしたい...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?