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【実験レポ】素人が素人に絶対音感を身につけさせてみる

曲を覚えたら楽譜なしでも演奏できます。

音を聞いただけでドレミが分かります。



って言うと、

「絶対音感すげー」などと言ってもらえることがあります。




ありがたいことです。

ストレートに褒められることって、大人になってからはそうそう無いですよね。

ね?





ですが私、これまで「絶対音感」の定義をよく分かってないままにやり過ごしてきたのです。

なので、 そういう褒めをもらう度に、素直に受け入れていいのか分からずに曖昧な「ありがとう」を発してきました。


だって、「絶対」音感よ?

「周波数の違いが分かる」とか、「あらゆる生活音に音程を割り当てる」っていう、ものすごい厳密なレベルじゃないの?

それぞれの個人的イメージ



…いやいや。

絶対音感の定義くらい、今調べちゃおう。

ね。

絶対音感(ぜったいおんかん、英語:Absolute pitch)は、ある音(純音および楽音)を単独に聴いたときに、その音の高さ(音高)を絶対的に認識する能力である。記憶に基づいてその音を楽器を使ってもしくは音楽学用語で示すことで、この能力を有することが示される。

ウィキペディア「絶対音感」




なるほど。

つまり、比較対象とする音を聞かずに1つの音だけを聞いて、「これはミだ!」とか認識できる能力のことを指すわけだ。



どうやらこの絶対音感、子供の頃からのトレーニングによって身に付けるのが一般的らしいです。
(ググると圧倒的に「幼少期のうちから身に付ける」的な記事の方が多い)

私の場合は意識的に鍛えたわけじゃないですが、5~16歳まで習っていたピアノの影響で自然と身に付いたんだと思います。


…これって、大人が意識的に訓練して身に付けることはできるんでしょうか?


わたし、気になります。

実験してみたいのは山々なのですが、私は既に絶対音感を身に付けているため、私自身で実験するのは不可能です…。






あっ。

そういえば、良い実験体がいるのを思い出しました。



Twitter上で知り合った人が食い気味で快諾してくれたので、実験してみたいと思います!!




とはいえ、私はプロの音楽講師でもない、ただの音楽趣味人間。

そして、この相互ちゃん(と呼ぶことにします)は音楽と全く縁のない人生を送ってきたそうです。
(なぜ、そんな彼女がこんなにやる気になっているのか。この時の私は知る由もありませんでした。)




お互いに素人同士ですが、果たして絶対音感を身に付けさせることはできるのか…!?

やるぞ!!!


でもどうやって?

と、疑問を呈しておいてアレですが、要は正しい音を耳に叩き込んでやれば良いわけですよ、恐らく。

ですが、「ひたすら正しい音聞いて覚えりゃいいんだよ、覚えりゃ」と雑にスパルタ教育するのもねぇ。

せっかく頼られてるのに、頼られ甲斐が無いってもんです。



かといって、音楽理論の専門用語を使ってじっくり丁寧に説明したとしても、音楽に縁のない相手からしたらダルいし眠い話でしょう。

リクエストも来ました。やっぱそうだよねぇ。




というわけで、2種類のツールを作ってみました。

1つ目はこちら。



お手本となる音をひたすら耳に叩き込むための、インプット用ツールです。

お手本の音を聞きながら、一緒に歌って覚えるのがおすすめ。

「ド」の音程を聴きながら、「ド」の音程で「ド〜」と歌う。




ちなみにこの音源、最初に譜面作成ソフトで図のような譜面を作ってから、mp3にエクスポートし、



「ドレミ」の声は私の声で録音してから、




両方のmp3ファイルを合わせて作りました。


【※有識者の方へ※】
例えば「レ#」は、「ミ♭」と呼ぶこともできますが、
今回はすべて「#」に統一しました。






2つ目のツールはこちら。

インプット用の基礎ツールを聞き続けるだけでは飽きちゃうだろうということで、息抜き用のツールも作りました。

歌詞まで書いてしまうと曲が特定されやすく、著作権的に危なそうなので、
ドレミのみ公開しています。


相互ちゃんの好きな曲を一部、ドレミに起こしたものです。

原曲を聴きながらこの画像を見て、ドレミで歌ってもらうことで、「好きな曲を聴きながら、楽しくドレミを覚える」ことを目的としています。



トレーニング開始!

基礎ツールを毎日、朝と夜の2回聞いてもらいました。

学習時間は1日2分半。
(息抜きツールは本人の気分に任せて使ってもらいました。)



~1か月後~



というわけで、効果測定用のツールも作りました。

1音ずつの音源ツール。
こちらは効果測定を入力する表。




テスト用の音源ツールは、基礎ツールとはちょっと違います。

基礎ツールは、「ド」という声を聴いてから「ド~♪」というお手本の音を聴くものだったのに対して、

休符(■が縦に潰れたやつ)のところに、音名を言う声が入る。




テスト用の音源ツールは、「ド~♪」というお手本の音を聴いてから、「ド」という声を聴くようになっています。

音名を言う枠(休符)が、各音符の後ろに移動。




お手本の音をシャッフル再生してもらい、聴いている間に正解を考えて、そのあとに流れてきた声を聴いて正誤判定してもらうような流れです。

こんな感じ。








この効果測定を、友人にやってもらった結果がこちら。

うーん、12問中5問正解か。正答率41.7%か。

近い間隔の音同士で間違ってるところが多いねぇ。



本人曰く、

あーーー、なるほど!!

一問一答形式で12択問題が出題されるから、最後の方になると選択肢が少なくなっちゃうのね。

あちゃあ…。

これは私の作問ミスかも。ごめんよ。

今度テストするときは要改善だわ。





まあ、最後3問の消去法正解はおいといて、前半の方で2問正解しています。

音楽理論や音感に縁のなかった人間が、1か月で2問だけでも正解しているのは、結構すごいことなのでは?





ということは!!

インプットとアウトプットをもっと繰り返せば、更なる効果が出るのでは!?

さらに1か月間トレーニングを積んだ結果は…?

その後、基礎ツールを1日1回聴きこんでもらい、テストも1日1回やってもらいました。



また、テストも「やりっぱなし」ではなく、間違えた音は再度お手本の音を聴くように伝えました。

何事も復習が大事。やりっぱなしは良くない。



さて、こちらが1か月後に実施したテストの内容です。
(前回の反省を生かして、一問一答形式は廃止しました。)


今回は、12音を一気に聞いてもらってから、

今回は、休符部分に「ドレミ」の声を入れずに、音符の音だけを聞いてもらう方式。

解答を打ち込んだexcelを送ってもらいました。




ここに、私の方で正解の音を入力していきます。




…お???



おお!!

12問中8問正解! 正答率66.7%!

前回の41.7%(12問中5問正解)に比べると、かなりの成長!!




さらに…


相互ちゃん、ここで「好きな曲を耳コピする」という積極性を見せてきました。

いい傾向です。



うんうん。

少しでも理解が進むと、楽しくなってその先にいきたくなるもんですよね。




さて、成果は出てるかな…?

相互ちゃんの解答


あぁーーーーーーーー…





結構違いました…。

フレーズ始まりの音は割と合ってるものの、その後に続く音が壊滅的です…。



これはまだまだトレーニング不足…という言葉だけで片付けていいのかどうか。

テストの正答率は上がってきているにしても、「実際に曲を聴いて音を取る」という実践的な耳が育ってないのかもしれません。

別のトレーニング方法を模索するよ!

ここまで、基礎ツールとテストを繰り返してきたことは、決して無駄ではないはず。

その証拠に、テストの正答数も少し上がってはいるし。




ただ、それを繰り返すだけでは、絶対音感が身に付くわけではなさそうなので…、

情報収集の方法を、ネット検索から書籍へ広げに行きました。

図書館で借りてきました。
「大人のための」とあるため、使える方法が載ってるかも…?
購入ならこちら



しかし。

中身を読んでみると、(説明はあるものの)専門用語のオンパレードだったり、楽譜が読める前提の話だったり、音名がドレミ表記でなく英語で書かれていたり(後半に少しだけドレミ表記が出てくるけど)。



どうやらこの教本は、ある程度音楽を続けてきた人向けのようで、今回の実験には合わなさそうです。

まあでも、せっかく借りてきたんだし、読んでみるか。

……

………

おっ



新たなトレーニングツールを作ってみた

図書館で借りた教本は今回のケースには合わないものの、読む過程で良い気づきを得られました。

ありがとう、教本。




そんなこんなで考えを巡らせ、新しいツールが完成!!

あんまり面白くない上に20分もあるけど、成果を優先するなら致し方ない。




これまでのトレーニング結果から、「単音」では正しい音をある程度覚えられたことは確認できました。

ただし、「曲を耳コピする」という目的で絶対音感を身に付けるなら、単音の聞き取りだけでは達成できません。



曲は、「単音ぶつ切りの集合体」ではなく、「異なる音の連続体」です。

そのため、曲の耳コピをするには、「異なる音が連続して流れる中の音程」を聞き取れるようになる必要があります。

教本のおかげで気づけたところ




そこで作ったのが、先ほど載せた「あらゆる音が連続して流れる」音源ツール。

「あらゆる音」にも限度があるので、上限は「1オクターブ上」、下限は「1オクターブ下」としました。
例えば「ド」なら、ド#~上のドと、シ~下のドまでの音と行き来できるようなシステム。
教本のトレーニング内容よりも単純な仕組みになっています。


さらなるトレーニングの成果は…?

新たなトレーニングツールを使って、1ヶ月過ごしてもらいました。



効果測定として、まずは単音のテストを。


うんうん、こちらはいい感じ。

前回よりまた少し上がって正答率75%。





さらに、まだ模範解答を伝えていない状態で、前回正答率が39%だった耳コピを再度やってもらいました。




おお!

前回と比べてかなり精度が上がってる!



ここで初めて、模範解答を見せてみました。


嬉しそうで何より。



そうなのよ。

生活って音楽ばっかりだし、もはや音楽が生活と言ってもいい。

それくらい身近。



あ、そういうこと!?


うわあ。奇跡のタイミングじゃん。






…いやあ。

…トリッキーだなあ。



普通、「音楽始める」っていったら、まず楽器始めたり楽譜の読み方とか学び始めるもんじゃない?

今回はいきなり絶対音感だからなあ。




その職場の人が「おもしれー女」とでも思ってくれたら、相互ちゃん(と私)の努力も報われるってもんよ。

振り返りと今後の展望

プロの音楽講師でもない私が、人に絶対音感を授けてみました。

何だかんだで3ヶ月以上かかり、まだ完全に身に付けられたという感じではないですが、「間違うことはあっても耳コピできる」という状態に持っていけたのは良い成果だったんではないでしょうか。


気になる人とお近づきになれるきっかけも得られたっぽいし。




ですが、今回は実験サンプルが1人だったために、「たまたま上手くいった」だけだとも考えられます。

単に相互ちゃんが、「今まで音楽に縁がなかっただけで、素質はあった」というタイプの人なのかもしれません。




「絶対音感が欲しい!」という人が周りにもっといれば、さらに実験を重ねて、偶然性を減らしたりトレーニング内容の改善を進めていきたい今日この頃。




あと、今回は1つずつの音を対象に絶対音感を身に付けさせてみましたが、できれば和音の絶対音感も試してみたいです。

あまりに複雑な和音はおいといて、よく耳にする基本的な和音なら音感素人の方でもいけそうな気がしています。

和音=2つ以上の音が同時に鳴っているもの




…誰か、実験に付き合ってくれる人いないかな。

おわり。

ツールのダウンロードはこちら

単音を覚えるための音源ツールと、「あらゆる音が連続して流れる」音源ツールは、こちらからダウンロードできますよ。


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