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瀬戸弘司氏のような美しさ、とテック企業への意識

・はじめに

 正直、私は国内・海外問わず”テック系”インフルエンサーに対してやや嫌悪感を抱いている。
 理由の1つ目は、未来に対する楽観的・加速的な意見を安易に持っている点。2つ目が、自身のクリエーションについて言及しない点。最後が、レビュワーの枠を意図的に出てこようとしない点にある。

 1つ目は説明する必要がなく、2つ目についてはこの先で触れたいと思う。最後について軽く話すと、ビックテック企業の理念やビジネスについて明確に話すことを避けている点(それはほとんどの動画がスポンサーによって成り立っている為)に尽きる。MKBHDはその一点においてガジェットを紹介するYoutuberとして美点を持っていると思う。(例:以下の動画)

 話をタイトルの瀬戸弘司氏に戻したいと思う。
 小学5年生から駅のホームでiPhoneを持つ人が増えてきた経験の私にとっては、Youtuberの第一陣にいた瀬戸氏はガジェット系で唯一、子供の頃から今まで見てきた人である。

 以下に、今回話したいテーマを3つ記す。
・AVP(Apple Vision Pro)レビューで見えた”テック系インフルエンサー
・自身のクリエーションに挑戦し続ける度胸
・そもそも”Youtube”という場所は必要なのか


 また、今回は意図的に”Youtuber”を善意的に、”インフルエンサー”を悪意的に表現する言葉として利用したい。外見は同じでYoutubeやTikTokなど媒体を問わず発信している人々のことである。中身の違いは追々説明していきたい。
 そして、”ガジェット系”を善意的、”テック系”を悪意的に表現する言葉として利用したい。(追記:この先の記事で一章と二章のみで使った表現となる)

1.Apple Vision Proレビューで見えた”テック系インフルエンサー”

 アメリカで2024年2月2日に発売された”Apple Vision Pro
 2023年9月のWWDC(Apple開発者会議)で発表された時から、国内で多くの雑誌やYoutube含めたSNSで反応する人々が存在した。
 実際にアメリカまで行って購入するYoutuberも多く存在した。
 
 アメリカで発売の一週間前にレビューをできたYoutuberの中で面白かったのは、”Wall Street Journal”・”Marques Brownlee"(通称:MKBHD)・”The Verge”の3者だった。

 短く3者のレビューで違った点をまとめたいと思う

・"Wall Street Journal"のレビュー

 アメリカの政治的な記事を長年書いているだけあり、簡単に最新テックを褒めるような態度ではなかったのが面白い。むしろ、価格と釣り合っていない点や、Appleという巨大企業が甘えた製品を出してきたこと、そもそもガジェットとして何が良いのか、それぞれ厳しくレビューをしていて一番好きな動画である。

・”MKBHD”のレビュー

 全体的に慎重なレビューが多い。が、重要な問題点は皮肉としてしっかりとレビューしており、この動画も面白かった。具体的には、製品としての完成度の高さを評価している印象で、問題は広告(AD)や、AppleがKeynoteで良いイメージだけを摘んで紹介していた事と、実物の乖離の問題点を指摘していた。これは、WSJのように大企業として批判している訳ではなく、消費者として重要な意見を言っている印象が強かった。

・”The Verge”のレビュー

 日本だとあまり重要視されていないガジェットYoutuberだと思う。ガジェットオタクの集団が楽しく紹介している動画として面白かった。アメリカで発売時にレビューしていた動画とは、さすが一線を画すだけの質量があるレビュー動画で、具体的には現状Apple Vision Proで何ができるのかを最大限紹介していた。コンテンツなど、中身を吟味する形のレビュー動画だったのが重要な印象である。

 長々とアメリカのYoutuberを紹介してしまい申し訳ない。日本のテック系インフルエンサーに話を戻したいと思う。
 結論から言うとApple Vision Proを日本で紹介するメディアとして、この3者のような人々は存在しなかった。瀬戸弘司氏や、後程紹介したいガジェット系Youtuberを除いて。 
 一番問題だと思ったのは、発売前のデータやアメリカのレビューだけを取り上げて(実際に買わずに)、Youtubeで紹介していたインフルエンサーたちである。

 

日本での”テック系インフルエンサー”の何が問題なのか。

 一言で言ってしまえば、社会的な責務や使命を感じずに”インフルエンサー”を名乗っている点に尽きる。
 アメリカを例に出したのは、彼らが少なくとも前線に立ってガジェットを紹介することが、社会的、もしくは個人のクリエーションにプラスの影響をもたらすと思っているからだと感じる。
 WSJは完全に社会的な意思を持ってレビューをしており、The Vergeはクリエーション優先で動画を作成していた。

 Abema Prime Newsや、Pivot、その他のテレビの公式YouTubeなどで見られたのは、この製品を中心に議論したい訳ではなく、流行りのものを撫でたい、触りたいといった誰でもできる議論をしていた所がマイナスに見えた。
 全てのレビュー動画が社会的になって欲しいとは思っていない。ただ、WSJやCNET(こちらもアメリカの新聞メディア)のように自国のテック企業を中立な立場から評価する存在は必要と考える。
 そして、別の軸で「”Youtuber”として面白い動画を作ってほしい」の文言に尽きる。

 例えば、MKBHDは彼が何かをレビューするだけで面白いという点が存在する。それは、ガジェット系Youtuberとしての地位が確立した証拠だと思われる。そして、そう言った力を扱うだけの頭脳と戦略を彼は持っているのがPodcastなどを聴くとわかる。
 逆に悪い点を探すと、中立的で無色のようなイメージから抜け出しづらい現状があると考えられる。基本的に彼が話すことが正しいという誤解は、彼が賢くあろうとすればするほど出てしまう欠点である。敢えて政治的な話をしたり、文化的な話をすることは、そういった側面を否定的に捉え直す作業として重要なのだと考える。

 そして、テック系インフルエンサーのいい点を探すなら、中立的でありながら賢くあろうとしないことで生まれる面白さは存在する。中国のインフルエンサーのように、商品紹介を面白おかしくするといった野蛮さもなければ、アメリカのように頭良さそうに気取る雰囲気もない。いい意味での空虚さが真のレビュー動画であるという面白さがそこにはある。
 そのため、一番信頼しやすい商品紹介が多く見られると思う。

どういったガジェット系Youtuberが面白いのか

 まとめとして二つのポッドキャストを取り上げたい。

・”Off Topic”ポッドキャスト

 上記のOff Topicというチャンネルは、AppleのPodcastアプリで聴いていたため、今日までYoutubeがあることを知らなかったが、かなり面白く社会的文脈をなぞりながらテック企業を見ている点が興味深い。Forbesやダイアモンドオンラインのように、世俗的な記事をテクノロジーや経済関連で書いてしまう点とは違い、NewsPicksや日経新聞のようにテクノロジーの本質的な部分を捉え損ねる記事とも違う。
 むしろ、Wired(ネット記事)のように少し違った視点からテック企業の奥深くを覗くようなポッドキャストを作成している。
 この動画では、TikTokと中国、アメリカ政府の関係性を取り上げたり、NVIDIAなどのAIブームについて興味深い点で解説している。

・”ユカスタポッドキャスト”

 もう一つは、ユカスタポッドキャストだと考える。
 Apple Vision Proのレビューで知り始めたが、大石結花というチャンネルのポッドキャストになる。彼女自身のガジェットレビュー動画は、基本的には中立な立場で構成しているが、ポッドキャストでは彼女と、サヒロさんがアメリカに住んでいる日々で起きたことを軽く紹介してから番組が始まる。
 この取り上げた動画で重要だと思ったのは、テスラのサイバーキャブについて語っている時に、結花氏がテスラについての見解を軽く話していた点である。他の番組だったかもしれないが、SNSのXについても見解を述べていて、イーロンマスクという人物がテック業界に与えている影響や、意図しているか不明だがマッチョイズムなイメージを改めて認識した。
 もちろん、彼女はそこまで深く言及している訳ではないが、テスラやXという存在について考え直すきっかけとして興味深かった。
 また、彼女などの日常的な生活の延長線上にしっかりと、アメリカのテック企業が存在していることを再確認するきっかけとして、当ポッドキャストは面白い。

 この二つの番組は、色々なYoutuberを見てきた中でもガジェット系というジャンルを超えて、経済や社会的な面白さを意図せず持ち合わせている興味深い番組だと捉える。

第一章まとめ

 では第一章を締めるため、タイトルの瀬戸弘司氏を取り上げたいと思う。
 彼は「”Youtuber”として面白い動画を作ってほしい」という声に応え続けてきたクリエイターだと捉える。ガジェットを面白く、自身のクリエーションの一環として扱う側面もあるが、かしこまって頭を良さそうに見せる加工もしない。
 もちろん、彼の動画が面白いかどうかは一般的なYoutuberと並べて見られるため一概に評価はできない。面白いと面白くないが表裏一体であることは重要だと思う。
 また、社会的な意義などがあるかと問われると、そう言った一般的な政治的話題に触れないことで生まれる美点を活かしているYoutuberだと思う。Vlog的なノリで動画を制作していたインフルエンサーが、ノリで政治や社会文化について語ってしまう人達とは一線を画している。

余談

 ここでは、余談でありながら本記事の核となる部分を書きたいと思う。
 そもそも、ガジェット系Youtuberに対して何故そこまで社会性を求めているのかというと、ビックテック企業(GAFAなど)が持っている国境を横断した力強さを無視せずに語ることが誠実であると自分が考えているからである。
 もちろん、日本のお笑いや芸能人、インフルエンサーが政治を語らないことで独自の面白さを追求してきた要素は無視できない。それは、ハリウッド映画がポリコレ要素を入れないと面白く無くなってしまったのと表裏一体で、語らないことによる面白さも当然存在する
 ただ、ビックテックに対する対する言説は、露骨に政治を語ることよりは漠然としつつも社会を語ることができる今後の長期的なテーマだと考える。

2.自身のクリエーションに挑戦し続ける度胸

”クリエイター”の創造性が欠落した動画制作

 もうひとつ、Apple Vision Proのレビュー動画で目についたのが、カメラ専門チャンネルや音楽専門チャンネルの創造性が欠落した動画制作である。
 全員がTaylor Swiftや藤井風、森山大道やChristopher Nolanのように著名な作家になるべきとは思っておらず、その平行線上に位置する批評家やレビュアーとして自身のクリエーションと向き合ってほしいと思うだけである。
 音楽も写真も古典すぎるが故に、扱い方が自分自身も最近はわからなくなっている。特にAIとの親和性の高さから。ただし、「自分たちが外野である」「二次創作」の立場であるという認識から一旦外れることは重要だと考える。
 具体的に話すと、テック系の紹介チャンネルへと専念しすぎているインフルエンサーはよく見かける。Youtuberである以上は自由な活動が可能だと考える。しかし、彼らは毎日投稿や最新の製品をいち早く紹介することが仕事と化しており、決して面白い動画を作ろうとするわけではない。ではどういった事をすればいいのかの例として、先ほど取り上げた大石結花氏のチャンネルではコミュニティ(サブスク)をしっかりと形成している。これは、アメリカの個人クリエイターで常識となったコミュニティ文化が関係しているのだろうが、日本だとYoutuberにサブスクを払うという行為に抵抗感を持つ人が少なくないと思う。ただ、長期的に”本当に”クリエイティブな仕事をしたいなら、コミュニティの形成は必要不可欠だと思われる。もちろん、サブスクコンテンツの質を一定に担保しなければならないが。

タイトルの瀬戸弘司氏について

 ここで、やっとタイトルの瀬戸弘司氏に繋げたいと思う。最近も自分は彼のチャンネルの過去動画をよく見返すのだが、全体的にカメラの動画が多いと感じた。構成的には①カメラ②Apple製品③私生活でのガジェット④その他だと感じた。
 第二章で話したことを相対的に語ると、ガジェット系Youtuberという枠ではなく、瀬戸弘司というチャンネルとして人々に受け入れられた点が大きいと考える。彼自身が需要を考えたり、自身のクリエーションを妥協しなかったり、程よく休止したりで、結果として全てが好転的に作用したのだと思われる。それは、自分をより魅せる事に意図せず成功したという言葉に尽きる。
 もちろん、人々にとっては最新のテックを次々と紹介してくれる方が刺激的だろうし、常に新しい情報を欲しい人にとっては彼のチャンネルは対象外だと思う。ただ、自分が”クリエイティブ”であると勘違いをしているインフルエンサーよりは、彼の方が創造性に満ちた動画を作っていると感じたまでである。
 具体的には、私生活を見せている点に尽きる。創造性や”クリエーション”という言葉をより分解して説明すると、一つのチャンネルの中で物語を作れるか否かだと思う。例えば、瀬戸弘司氏の動画で昔紹介していた部屋の間取りが、最近になって奥さんの実家となっていたり。昔動画で使っていたフィギュアがまだ使っていたり、さまざまな点と点を視聴者が線で結ぶことができる。また、単なる編集技術だけではなく、彼自身が動画制作の中で何にこだわっているのか注目してみると面白い。例えば、4K動画を制作する事にこだわりを見せていたり、BGMやSE(効果音)の制作にもこだわっていたり、企業とのタイアップにもかなりの力量を感じる。なぜ、4Kにこだわっているのかはわからないが、音楽は編集に使う目的から趣味や娯楽の世界へと移行したのを感じる。シンセサイザーを色々と試したり、様々な楽器を試したりしている。企業とのタイアップでは、povoやinsta360、xiaomi14ultraなどの動画で説明を細かに入れていたり、どの部分に自信が魅力を感じたか分かりやすい。また、自身が比較的長く使っていく予定のものだったり、好感を持った製品を主に取り扱っている点にも良さを感じる。

第二章まとめ

 説明が長くなってしまったが、第二章のタイトルの通り”クリエーション”の点では、瀬戸弘司氏のチャンネルの独自性とファンの好循環、一つの動画が作用する物語性、企業との程よい協力関係が挙げられる。
 サブスクなどでコミュニティを形成することもできるだろうが、そこは日本という一種のコミュニティ社会の中では難しい点だと思う。
 また、ビックテックに対する対抗意識などは無い点が重要だと考え、むしろApple製品を取り扱うときは慎重な動画制作を行っていると思う。それは、新製品を単にベンチマークだけで比較してPRしたりせず、日常の一製品として扱っている。むしろ、Amazonのプライム感謝祭や、ブラックフライデーなどで日本や海外問わず製品を紹介している点は非常に興味深く見ている。

海外の音楽機器を扱うサイトなども紹介している

3.そもそも”SNS”という場所は必要なのか

 当然、必要だろうと自分も思ってこのテーマを語りたいと思う。
 では、なぜこのようなテーマを突然扱うのか。
 本記事を書いていて思ったのは、ビックテックに対する対策意識を一定程度持つことが、どの業界人にとっても重要だと感じたからである。
 最近の分かりやすい例だと、映画『Oppenheimer』にて主人公の妻を演じた”エミリー・ブラント”が「新しいものには苛立つこともありますよ。例えばアルゴリズムとか」とインタビューに答えている。

 これは持論になってしまうが、ハリウッドは資本主義との共存の仕方は様々な道を経て考えがまとまった気がしている。具体的には、Netflixなどサブスクでの供給を元にスタジオは安定した利益を出し、ハリウッドの俳優もサブスクオリジナル作品と劇場公開の作品で表現を変えている。アカデミー賞では『ノマドランド』のような脚本・企画レベルで完成度が高い作品がある中、『アイリッシュマン』のように監督だけ選ばれた作品がNetflix限定で公開されているのは対照的であると感じる。ただ、AIなどテック技術の進歩にはあまり対応できていないと感じている。それはこれからの未来に対する解像度が低いことにあると思う。

ピーター・ティールから見るテック企業

 Off Topicでも取り上げられていた”ピーターティール”というPayPalやOpenAIの共同創業者であった彼が、「空飛ぶクルマを求めていたのに、手にしたのは140文字だ」と昨今のテクノロジー業界をやじった。これは、私たちが期待していた未来像と違った現在を作り上げたインターネット産業に対してで、”情報社会は、雇用を増やしてもいないし、製造や生産性向上において革新をもたらしてはいない”とWiredのインタビューに彼は答えている。

 この意見には私も概ね共感しているが、あえて彼の持論を裏返すと、インターネットの革命によって人々は空飛ぶクルマがいらないと分かったとも言えると思う。インフラは整備され、Amazon Primeに加入していれば商品が翌日に届いたり、リモートワークできる社会では交通渋滞が気にならなくなったり。また、ネットで調べれば空飛ぶクルマの実現性や法整備の難しさが分かる。ピーターが本質的に言いたかったのは、SaaS企業やSEOなどの情報社会だけで需給サイクルを回してしまう業界を揶揄したのだと思う。
 なぜ、このピーターティールの話をしたかったかというと、現代の情報社会と資本主義の関係性を本質的に話していると思ったからである。

 再びハリウッドの話に戻ると、テックに対する危機意識はNetflixなどのサービス企業に対する意識はあっても、システムの裏で動いているアルゴリズムや個人情報まで視野が届いていなかったのだと思う。その結果、ChatGPTが出た途端にAIへの反対ストを起こさなければならなかった。

 もっと前に我々がテック企業の中身を知れるチャンスはあったと感じる。それは2016年に起きたFacebookによるFBIやSECに情報提供をしていた事件である。

 なぜ、Facebookがそこまでの個人データを持っていたのかは、昨今のレコメンド機能や、アルゴリズムの進歩を見れば分かると思う。SNSは個人データの重要な母艦であり、そこから様々な応用が効くと思う。現に、Facebook改めMeta社はOpenAIやGeminiに次ぐほど大きなLLM、Lamaを開発してオープンソースで公開している。

 自分が高校生で2018年の頃、人々は人工知能(AI)に対する関心があったと思う。それはAlphaGOが囲碁で李世乭(イッセイドル)に勝った2016年の出来事。また、DeepMindなどの影響で”深層学習”がトレンドワードとなった。この時、自分もクリエイターはAIの影響を受けないと考えていた。
 しかし、蓋を開けてみると、インターネットが民間サービスで普及したのと同じように、AIが個人レベルで使用できるように最適化された。これは、かつて軍需産業として国家が担っていたレベルの技術が、今や民間のビックテックが担っている
 結果としては、日本ではさほどホワイトカラーが影響を受けなかったが、個人クリエイターを中心としたイラストレーターなどが、個人同士、もしくは個人対企業の争いに巻き込まれてしまったと思う。

 そろそろ、この第三章をまとめたいと思う。
 テクノロジーと組み合わせれば産業の技術力が直角的に進歩する現代では、常に転換点が訪れていると考えて良いと思う。そういった際に、我々が安直にテック企業の製品を撫でるように使うのではなく、中身を吟味する必要性があると感じる。それは、ガジェットなどハード製品に限らず、サービスなどソフトウェアにも当てはまる。
 具体的には、今iPhoneに搭載されているチップのサイズは3nmだが、そこから2nmに進化すると何が起こるのか。これは、小型化と高性能化が一般的だが、政治的な意味としてはTSMCなど、台湾を中心とした半導体製造が活発化すると思われる。一方で、iPhone上で作動するAIはクラウドをあまり使わずにより性能が上がり、文章作成、録音の文字起こし程度ならオンデバイスで活用できると思う。要するに、自分のデータを個人で運用しやすくなる
 個人がスマホやパソコンに保管しているデータをいかにビックテックなどの企業に取られず活用できるかが昨今の課題だと思われる。

 SNSの利用規約が更新されたことをSNSで嘆くよりは、個々人がアーカイブしたデータを暇な時間に整理して、自身のbotを制作するぐらいの知識と防御は必要と考える。それが、直接的にビックテック企業へダメージを与えるわけないが、より洞察を深める機会にはなる。

 まとめると、SNSという場所は必要だが、SNSの外部で働いている力学は知っておく必要がある。また、SNSの外、例えば自分のスマホの中にメモを溜めとくなど、そういった個人のデータを個人で活用して加工する技術や準備はより重要になるだろう。

・まとめ

 本当は終始ガジェット系Youtuberの話をしたかったが、かなり脱線気味になってしまった。
 しかし、本質的に抱いていた問題意識として、ビックテック企業への対応を個々人がどうすべきか考えるのが重要だと思っている。政府の役割は、独占禁止法など市場の寡占を止めたり、逆に規制緩和をしたりする程度に留められる。
 一方で、民間人レベルならAIを使ってどこまで自分の領域を広げられるのか、簡単にSNSの波に飲まれずに考えるのは長期的に重要な課題となるだろうと思う。

 今後は、文化を中心に政治やテックを扱いたいと思っている。それも、表面的な政治系の記事を書くのではなく、大枠の政治を取り扱いたいと思っている。例えば、外交レベルで何が起きているのか、アニメ産業がどこまでいけるのか。色々と今後も記事を書いていこうと考えている。

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