お菓子のヒミツ
私は昔、とあるお菓子にハマっていた。
とあるお菓子会社で作っている、とあるチョコレートである。
美味しすぎて、会社に電話したこともある。
「すみません。チョコレートの件で話したいことがあるんですけど。異物混入です。」
「この度は大変申し訳ございませんでした。詳しくお話を聞かせてください。」
「私好みのチョコレートが混入していました。」
「はい?チョコレートなのでチョコレートが入っているのは当たり前です。」
「異物です。私の心を奪う、異物です。」
(通話終了)
切られた。しかし電話できてよかった。
数時間経ってから、通話を切られたことに腹が立ってきた。
「なんで切るんだ?なんで通話を勝手に切ったんだ?」
怒りが収まらず、気がつくと私はチョコレート工場の前に立っていた。
乗り込むぞ。
そう張り切って工場の中に入った。
「え。」
入った瞬間、驚くべき光景が広がっていたのだ。
なんとここは、カブトムシ製造工場だったのだ。
チョコはどこだ。私の好きなチョコは。
従業員さんに話しかける。
「チョコはどこですか?」
「チョコ?うちはカブトムシ製造工場です。」
「チョコの工場はここだと袋に記載されていました。」
「あなた、カブトムシとチョコの違いがわからないのね?」
私はハッとした。今まで私が食べてきたものはチョコレートではなく、カブトムシだというのか。
「たまにあなたのような人が工場に乗り込んでくるのよね。全く迷惑だわ。」
「くっ…。」
「チョコとカブトムシの区別がつくようになってからいらっしゃい。」
あんなに美味しいカブトムシがあるはずない。
一体いつからチョコとカブトムシは入れ替わっていたんだ?
それとも、最初からカブトムシだったのか?
震え上がる体、崩れ落ちる体。チョコレートのように溶けそうだ。
カブトムシ工場、工場長のaikoが私を蹴飛ばす。
「ざまあないね。生涯忘れることはないでしょう。」
チョコレートの甘い匂いに誘われた私は、カブトムシだったのか。
私も、カブトムシだったのか。
もうだめだ。辛い現実と押し寄せてくる後悔に身を任せ、私は従業員に運ばれていく。
ここはどこだろう。私はもう、だめなのか。
目を開けたら袋の中に閉じ込められていた。
出たい。出れない。
袋を開け、見えたのは私の顔だった。
私が私を食べたあと、美味しすぎて会社に電話した。
「すみません。チョコレートの件で話したいことがあるんですけど。異物混入です。」
だめだ。また同じことの繰り返し。何度やってもまた同じ。