2021年音楽個人的ベスト20(上半期編)
はじめに
noteの投稿半年振りですねこれ。実際7月くらいから仕事で余裕なくなってて混乱のまま年の瀬の最終営業日まで駆け抜けたかたちなので、この空白期間もある種雄弁な近況報告に思えます。
さておき、音楽リスナーとしては2021年も大きく変わらず、たくさんの良い音楽に絶えず出会いながら下半期も過ごせていました。一方で純粋な楽しみとして、もう一方で精神の助けとして今年も色々お世話になったなあとしみじみ。
というわけで今年振り返り行事のひとつ、音楽好きのよくやる年間個人ベストのお時間です。レギュレーションは以下。
対象は「2021年に購入した音源」。リリース年は考慮外です。
選考基準は「より強く印象に残ったもの」。記憶力の関係で最近の作品が有利なんですが、そこはなんとなく配慮しつつ。
基本はアルバム単位で、上半期10作品・下半期10作品の合計20作品(これは結果的にこうなっただけ)
20作品の中での順位付けは行わず、購入順で古い物から淡々と挙げていきます。
それではれつごー
上半期ベスト
"ANTI-ICON" by Ghostemane
2020年10月リリースの、(おそらく)ヒップホップ畑の作品。
ノイズ+ラップの座組はあんま馴染み無いんだけど歌唱のドロドロしいクセに引き込まれるしデジロックなグルーヴも絶妙。
作中随一のキラーチューンとして挙げたい3.Lazarettoの他、6.Fed Up、13.Falling Downも印象深い。
Marilyn Mansonを想起させる歌いまわしや音のヒリついた感触が懐かしさを含んだ衝撃として襲い掛かる。個人的な音楽体験のルーツにも接近する点でとても印象的だった。
"Norchestrion: a song for the end" by Need
2021年1月リリース。ギリシャのプログレッシヴメタル。
朗々と歌い上げる癒し系のヴォーカル、ある程度落ち着いた雰囲気を主軸にしつつ、メタルとしてのイカつさもしっかり感じさせてくれる。丁寧で幅広いアレンジも手伝ってとても中庸な印象だが、なんだかんだ馴染むのか良く聴いていた。ピアノ/シンセの絶妙な存在感やモダンなリフ捌き辺りが肌に合っていたのかもしれない。Pain Of Salvationのファンなどは刺さるかも。
KL&Pを連想するシンセソロの小気味いい4.Bloodluxが好きだが、3.Nemmortalや7.Circadianもおすすめ。
"While Time Disappears" by Our Oceans
引き続きプログレッシヴメタル案件。こちらはオランダから、2020年11月の作品。
先ほどのNeedと比較するとややソリッドな印象か。過去Cynicに在籍したTymon Kruidenier氏が主体のバンドという所だが、音の共通項はさほど目立たない。Cynicの3rdに見られるメランコリックな要素を抽出した様な雰囲気もあり、比べて聴くと結構面白い。あと名前のせいでThe Oceanを思い出してしまうが、こちらも地味に近からず遠からずな何かを感じる。
キラーチューンとして6.Face Themが外せない。メタルというよりポストハードコアめいた勢いと音作りが甘いヴォーカルと一緒にぶつけられる衝撃がなかなか。他、重くかつ爽やかに冒頭を飾る1.Unravel、先述のメランコリックな要素を前面に押し出した5.Passing Byが印象深い。
"Weirdo" by Open Hand
1997年から活動するカリフォルニアのバンドによる、約10年ぶりの2021年作フルアルバム。
囁きヴォーカルの色気と幅広い音楽性が武器だ。ハードロック・ストーナー・パンク・オルタナ辺りの音楽性を吸収しつつ、全体像はそれらの攻撃性から距離のある穏やか、爽やかな仕上がりになっている。
さらりと聴くとポップだが、ジャンルや音楽性で語ろうとすると複雑で捉えどころのない怪作に思えてくる噛み応えのある逸品。
どうやらこのバンド、毎度方向性の違う作品を出しており、ファンにとっては今作もかなり困惑を伴うものである様子(2005年作"You And Me"など、今作に比べるとかなり素直な疾走ストーナー作だ)。聴く時は先入観を取っ払うのが良さそうだ。
2.It Takes Me、8.Loved、10.Draw The Line辺りがおすすめ。曲単位の感想となると基本語彙が追いつかない。
"Cold Water Burning Skin" by Fieh
ノルウェーのネオソウル・バンドによる2019年作。アルバムとしてはデビュー作になる。
やや低めのヴォーカル、揺れるベースラインの横ノリ、厚みを持ったシンセのアンサンブルが心地よい。暖かな輪郭の音とグルーヴの取り合わせが絶妙で、これからの寒い季節にも非常にマッチする。
今作に出会ったのは3月の末頃で、同僚から収録曲の"25"を推されたのがきっかけ。
「頑張ってるよ、わかるでしょう?」とリフレインする曲はとても後ろ向きな様でいて、むしろ労いの暖かさを感じさせてくれる。個人的に仕事に忙殺された2021年を生き残る上で力になってくれた曲として覚えておきたい。
他にも粒揃いだが、1.Samurai / When the Summer Is Throughや5.Glueが印象深い。
"Nothing is True & Everything is Possible" by Enter Shikari
イングランドの「エレクトニコア」による2020年の6thフル作。
ダブステップにハードコアにヒップホップにと奔放に詰め込まれた音楽性が武器で、初期に比べてどんどん謎ジャンル化してきている印象も。メタル要素薄めながら音圧自体は高く、なんだかんだメタル耳のまま聴けてしまう節もあり面白い。歌メロが非常にポップで、エレクトロポップ的な側面がやや強いか。
"Enter Shikari節"とでも言いたくなる独自性に溢れた3.{ The Dreamer’s Hotel }は外せない。他、手前のイントロトラックから続く9.T.I.N.A.での、テンション上がるコーラスなど白眉。
"MOTHERS WEAVERS VULTURES" by Grayceon
カリフォルニアの3人による5thフル作。チェロメタルのタグが眩しい。低めに朗々と歌う女性Vo.がチェロの丸い音色と絶妙に合わさって、スラッジと室内楽の融合のような独特な味を出してきている。
チェロメタルというと他にはもっとスラッシュメタル然としたカラリとした印象のものが思い浮かぶがそれともまた違う。聴き慣れないのにとてもしっくりくる、自然体のアンサンブルが魅力だ。
長尺な曲が並ぶがどれもしっかり聴かせてくれる。1.Diablo Windの黒魔術めいた薄暗い空気は圧倒的で、メタルのようなキレのあるサウンドとは別方向のヘヴィネスを存分に感じられる。
"Destrier" by Agent Fresco
アイスランドのオルタナティブへヴィロックによる2015年作2nd。リリース当初に補足していたクセに今の今まで買い逃していた。
透き通るようなキレイなメロディーラインにヴォーカルの声も透明感のあるハイトーン。一方で楽器隊はポストメタル辺りにも接近する振れ幅を持ちそこそこアグレッシヴ。買い逃している間に熱が冷めたかと心配したが、普通に今でも聴いている。名盤。
「一見オシャレだが聴き進めるとがっつりヘヴィ」というギャップを地で行く4.Destrier、密やかなピアノとの取り合わせが絶妙な5.Wait For Meなど印象的な曲は多い。あとリフ好きメタラーとしては9.See Hellイントロの複雑なリズムに惚れる。
"Cavalcade" by black midi
ロンドンの「新世代ロック」による2021年作2nd。
界隈ではかなりの話題作だった様で、twitterで話題をよく見かけた作品でもある。
思いっきり語弊のある言い方をするが、聴いた瞬間に「プログレだーーーー!!!」となる快作。音作りの面ではかなり「怪」寄りだが、ジャズやクラシックをぶち込んでなおロック的な攻撃性で突き進む楽曲は実際かなり爽快。
「ギターのメカニカル運指練習フレーズがかっこよく聴こえる瞬間」を曲にぶち込んだみたいな(?)1.John Lは間違いなくキラーチューン。一方、個人的には6.Dethronedを強く推したい。ラテンテイストのリズム隊を基調に、起伏少な目に淡々と展開していく妙にプログレ耳が喜んでしまう。
"Mood Valiant" by Hiatus Kaiyote
オーストラリアの「フューチャー・ソウル・ユニット」による2021年作3rd。
先般Fiehもそうだが、ソウル界隈の懐の広さは凄まじい。歌メロの方向性に大枠の共通項を見せつつ、仕上がってくる楽曲の手触りは本当に幅広い。
捉えどころのない幻想的なメロディーセンスが包み込み、バンドサウンドを押し出したどこか土臭いアンサンブルが周囲を彩る。時折キレのあるビートなどでエレクトロ要素が強まる瞬間もあり、全体像としては洗練されエッジの効いたものとしての印象が強く残るのも面白い。
鋭さとしなやかさが正面衝突する3.Chivalry Is Not Deadや6.All The Words We Don't Sayを今作では強く推したい。また、気怠げな9.Red Roomの雰囲気も深夜に聴く一曲としてとても良い。
・・・
幕間
…さくっと20曲紹介して締めようと思ったけどがっつり文字数が嵩んでしまったので下半期は別の記事にします。果たして作文力は耐えきれるのか。
追記
無事下半期編もできたのでリンク貼っときます。
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