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【谷間の歌会】回転木馬とサビアン 乙女座6度〜10度

「サビアンシンボルとその解釈にリンクする季語や和歌」を好き勝手に発表する、サビアン研究会「谷間・オブ・サビアン」の月一歌会のお題「乙女座1度〜15度」のサビアンについての個人的あれこれ。

今回は、自分の金星(乙女座7度)のある、第2グループ(乙女座6度〜10度)をテーマに取り上げました。

まずは、各度数を簡単におさらい。

◆二十四節気

処暑(8/23 ~ 9/7頃)

◆乙女座6度

●サビアン
興奮した子どもが派手でけばけばしいメリーゴーランドにのる
(A merry-go-round.)

対抗サビアン
魚座6度:正装して行進している将校たち(Officers on dress parade.)

鏡像(対)サビアン
乙女座25度:掲げられた半旗(A flag at half-mast.)

ドデカテモリー
蠍座

【この度数のポイント】
・多彩な馬(人間や事象)に引きつけられ、乗り換えながら遊ぶ(能動的)
・自分より他人の話に面白みを見出す
・平凡な日常をデフォルメして楽しむ

◆乙女座7度

サビアン
宮殿のようなハーレムで輝く瞳をした女性たちが幸せそうに笑っている
(A harem.)

対抗サビアン
魚座7度:岩の上に横たわっている十字架(A cross lying on rocks.)

鏡像(対)サビアン
乙女座24度:メリーと彼女の白い羊(Mary and her white lamb.)

ドデカテモリー
蠍座

【この度数のポイント】
・囚われた女のしたたかな逆襲
・メリーゴーランドの馬側、王を引きつけ待ち構える(受動的)
・日常に深く入り込み、狂気的に非日常へと導く

◆乙女座8度

サビアン
貴族に生まれついた五歳の少女が最初のダンスレッスンを受けている
(First dancing instruction.)

対抗サビアン
魚座8度:ラッパを吹く少女(A girl blowing a bugle.)

鏡像(対)サビアン
乙女座23度:動物のトレーナー(An animal trainer.)

ドデカテモリー
蠍座/射手座

【この度数のポイント】
・お稽古の度数
・老いた「今」から(でも)開かれる可能性
・環境による影響を自ら制御できる自分を目指す

◆乙女座9度

サビアン
変わったキャンバスで描いているポストモダニズムの芸術家
(A man making a futurist drawing.)

対抗サビアン
魚座9度:騎手(A jockey.)

鏡像(対)サビアン
乙女座22度:王家の紋章(A royal coat of arms.)

ドデカテモリー
射手座

【この度数のポイント】
・自分の癖や独特な感覚を「表現」の域にまで昇華させる
・自らの素直な反応や欲求にエネルギーを集中させる
・頭ではなく、身体を動かしてイメージする

◆乙女座10度

サビアン
2つの頭を持ち得た人があの世を垣間見る
(Two heads looking out and beyond the shadows.)

対抗サビアン
魚座10度:雲の上の飛行家(An aviator in the clowds.)

鏡像(対)サビアン
乙女座21度:少女のバスケットボールチーム(A girl’s basketball team.)

ドデカテモリー
射手座

【この度数のポイント】
・二極(光と闇、男と女、陰と陽、生と死など)を行き来しながらバランスをとる
・非現実を受け入れながらも、現実に踏みとどまる
・自分との孤独な対話の時間が知性を生む

と、自分なりにまとめながら各度数にふさわしい季語を探してみるものの、なかなか「これ!」というものが見つからない。

そんな中、一つだけしっくりきた季語がこちら。

◆乙女座7度っぽい季語:「底紅・木槿」

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7度(ハーレム)に、「底紅(そこべに)・木槿(むくげ)」の季語を当てはめました。

底紅(木槿)とは、アオイ科フヨウ属の落葉樹。
多数の品種がある中でも、白地に赤の木槿は千利休の孫の茶人、宗旦が茶花として好んだことから「宗旦木槿」とも呼ばれていたそう。

花の中心が狂ったように(この世のものではないように)赤いところ、次から次へと新しい花を咲かせるところ(回転木馬)、開花期が短い(一日花)からこそ その一瞬を狙って逃せないというところに、この度数っぽさを感じました。
(なんと言っても、「底」って響きがドデカテモリー蠍っぽい)

「底紅・木槿」を使った俳句を3つ。

道のべの木槿は馬にくはれけり 松尾芭蕉

これは単なる「野辺に咲く木槿が、芭蕉の乗った馬にパクリと食われてしまった」という俳句なのですが、7度で言う「王を待ち構える女」とは、ここでの馬であり食われた花にも重なる。

咲き継ぎて秘めたる闘志花むくげ  渕上千津
一日を今生として底紅も 後藤比奈夫

自分の金星の感覚としても、前度数6度「メリーゴーランド」の楽しげな雰囲気とは打って変わって、「その時」が来るのをただひたすらじーーっと待ち構える、酔狂じみたしたたかさのようなものを感じます。

◆乙女座9度を持つ人:覚和歌子さん

ここの度数に太陽を持つ人に、作詞家・詩人である覚和歌子さんがいます。
(出生時間不明)

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乙女座には太陽の他にも、水星24度、冥王星8度があります。

覚さんは、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」の作詞で一躍有名になりました。

そうです、「呼んでいる 胸のどこか奥で」で始まるあれです。
歌詞ありのものがあったので、よければご覧ください。

この曲の中には、

「生きている不思議 死んでいく不思議」

「ゼロになるからだ 充たされてゆけ」

など、なぜだか耳に残る言葉がひっそりと息をしていますが、このわかるようでわからない、「ゼロになるからだ」という言葉を冠した詩集が出版されています(詩集というか、もはや短編寓話集のようなものでもあるのですが)。

1 生きている不思議
2 ゼロになる身体
3 死んでいく不思議
4 アプローズ

の4章で構成されていますが、「2 ゼロになる身体」に収録されている詩に次のようなものがあります。

“さかな”

いのちのなかみを
かろうじて覆うものは
いつでも破けそうな
一枚きりの薄い粘膜
水に浸していなければ
ひからびる

さかなよ
わたしは いのちをむきだしにしているか
ヒトの心に 水を感じて
この世を思うさま 泳いでいるか
ハハの望む私と
私の望む私を しずかに区別しているか
ハハのまなざしを やさしく受けとめながら
私は誰だと 問い続けているか

“わたし” と “私”
“ヒト” と “ハハ”

ハハの望む “私” と
私の望む “私”

“さかな” に問いかける
“わたし” とはいったい誰なのか?

いろいろと自分の中に疑問を抱きながら
どことなく、乙女座8度〜10度の流れにも
似ているなぁと思いながら読んでいました。

しかし、「母」を「ハハ」と書くと
なんだか急に得体の知れない
生き物のように感じますね、不思議。

最後に、巻末プロフィールより

覚 和歌子 かく わかこ
山梨県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。
大学卒業と同時に作詞家デビュー。
以後小泉今日子、SMAP、沢田研二などポップスからジャズ、クラシックなどの日本語詞まで数百編を発表。
1992年淡路島で、地元小学生と共演した実験詩朗読ライブをきっかけに身体表現としての詩に目覚める。
その後、落語とのバトルライブ「噺詩の会」や舞、音楽、スライド映画などとの自作詞朗読パフォーマンス競演を国内外で展開。
映画「千と千尋の神隠し」主題歌「いつも何度でも」作詞。

「実験詩朗読ライブをきっかけに
 身体表現としての詩に目覚める」

これはとても彼女の太陽、乙女座9度っぽいなぁと感じました。

ちなみに私は、「3 死んでいく不思議」の最後に収録されている “拝啓 陶芸家様” という物語が一番好きです。
お手にすることがあれば、ぜひ読んでみてください。



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