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"逃亡日記" 第41夜 ルイーズ・ブルジョア展 地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
いやまじで地獄。だけどほんとに素晴らしいので、ぜひ。
まずタイトルだけでも、"ん?"ってなるのに、展示みると"あぁぁ…それな!"って納得させる荒技(キュレーションとも言う)が素晴らしかったのと、言葉にできない息苦しさみたいなものを"ばーーーん‼︎"って立体化してくる、作家の声の大きさ=作品の大きさが清々しいんだと思う。
じゃ、ちょっとだけ地獄をご案内しますね。
※くも写真は2枚だけそれっぽくないのを選んでますが、苦手な人は薄目で駆け抜けて
【不穏とか不安とかやる方のないものとか】
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とりあえず引きで撮ってますが、不穏というより動揺かも。
(あら…(//∇//)…とか、意外とふかふか…とか)
作家が感じてる"生きてる"ってことが不思議さが形になってる感じ。
展示を通底して、この不安とか不穏とかやる方なさ…みたいなものが流れてる。
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赤ってきれいだけど、時に怖く見えるよね
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赤は血の色でもあるし炎の色でもある。
生きていれば欲も生まれる…ので、神話モチーフのエロスの香り高い作品も
時には『焼きたてクロワッサン🥐』に見えることもある(違w)
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"世界一しあわせな時間"…にもなるはずが、なぜこんなことに…
これらの作品群(と背景に流れる不穏な文字のインスタレーション)は、とても切ない。
思わずソファに座り込んでしまうほどに。
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他者とのコミュニケーションを拒絶する巨大な反省部屋…に見えたけど、よくみるとイスかわいいし意外とコージーかもしれない。
自分と向き合う修行部屋にもみえるし、引きこもってスマホみてる時間にも似てる。
不穏や不安をかきたてる作品たちは、見た目はらはらするけど『あー…世界と自分の境界線に苦しむ時ってあるよねー…なんでわかってくれないの?とか、もうやだ全部消えちゃえって、なるよねー』とかって語りかけられてると思うと、『わかる。それな』ってなるのが今回のキュレーションの絶妙さなんだと思った。
【ママと蜘蛛とわたし】
おまたせ。くもの話をします。
今回2つのくもが来てるのですが、彫刻に詳しくなくても寸分の隙のない空間デザインなのがわかってしまうのが、まずすごくて。
怖いとかグロとか感じる以前に、どの角度から撮っても"びしっ"って絵になるし
この巨体をこんな小さなポイントで支えてるのか…さすが数学専攻…などと
カメラ構えて1周まわってしまいました。
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…あ…カメラ好き目線の話はさておき。
ブルジョアにとって、蜘蛛は卵を大切に守り育て、糸を操る(ブルジョアのママは絨毯職人)実母のイメージだそう。…母ってどの文化圏でもどこか"重い"んだよな…わかる。
ブルジョア自身、3人の子を生み育ててるんだけど、妊娠・出産がほんとに不思議だったんだと思う。形ない別の生き物が体内で大きくなるのも謎すぎるし、自分では生きられない赤ちゃんを守るのって本能的に外敵に牙をむくようにプログラムされてるんだよ…ってのを誰にでもわかるよう可視化した作品多数。
わたしも1回だけやったことあるけど、わかりみが深すぎ。
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いや、ほんと。ナイフでも持ってないとやってられない時期あったー。
ママへの愛を一生こじらせて、パパのことは"まじうざい"
90歳超えて生きても、パートナーに恵まれて3人の子を生み育てても
"どんな私でも受け止めて‼︎"を叫べるルイーズ・ブルジョア。強い。
誰もが心のどこかでいつか感じたことのある"欲望"や"願い"が形にされてるので、
見終わったあとはなんだかすっきり。
『言えなかったことを、かわりに言ってくれてありがとう』
こんなすごい作品をがしがし作ってるけど、実はとってもチャーミングなルイーズに
最後の最後にギャップ萌えでもってかれるので、それもお楽しみに。
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森美術館にて 2025/1/19まで
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