"逃亡日記" 第37夜 ヌベニル庵 Null-Beni-An
古い洋館の地下室。
きしむ階段を降りたくらがりに、おぼろげに浮かぶのは透きとおった紅色の茶室…。
こんな幻想小説のワンシーンみたいな展示が、2日間だけ現れる。
メディアアーティスト落合陽一さんの新作茶室、『ヌベルニ庵』を観てきたので久しぶりにnoteに記録します_φ(・_・
テンセグリティ構造
透けた布でできた箱の中に、力強く生える木
柱のない、ロープの張力で支えられた茶室
(テンセグリティ構造というらしい)
茶室の中に入ると(※内見会特典)圧倒的な木の存在感。4つのピースは、上杉家ゆかりの庭から切り出された4種類のざらりとした丸太。
それらの木々を3Dスキャンして、そのデータを元に設計され組み上げられたとのこと。その絶妙なバランスは、20世紀では建築できなかった…なるほど"十分に発達した計算機"(デジタルネイチャー 2018)の賜物だ。
茶室の四方を囲む布地は、絽(夏着物用の薄い生地)織の置賜紬(おいたまつむぎ)
粗く大きな織り目の生地は、思ってたより重みと張りがある。ずしっとした織物をぴんと壁みたいに張るって…むむむ。これは建築としてもすごい。
"祈り"のかたち
落合陽一さんの茶室作品は、これまでにも『可塑庵(ぷらあん)』(2021)『ヌル庵』(2023)があって、それぞれに素材やコンセプト、しつらえの意味を、知れば知るほど緻密でちゃめっ気に満ちていて飽きないのだけれど、今回も興味深かった。
紅花染の朱赤と柱の木々は自然の生命力を感じさせるのに、床は鏡の銀色。木々を繋ぐボルトやはみ出した太い針金は、自然をコントロールしようとする人間の"欲望"(テクノロジー)を思い出させる。
『可塑庵』や『ヌル庵』のように動的な要素がない削ぎ落とされ方は、侘だよなぁ…。
今回のステートメントにあるように、茶室を含む今回の展示のコンセプトは、"草木含め全ての命の成仏を願う"(草木塔&一切衆生悉有仏性)
季節の花や木々を愛で、生命のうつろいを感じるのは、実は日本人特有の感覚らしい。
東京での2日間の展示のあと、ロンドンとアート・バーゼルに展示予定だそう。とつ国の人たちの目には、どう映るんだろう…。
大好きな落合アート作品の中で、お抹茶をいただきながら解説を伺えるとてもぜいたくで豊かなひとときでした。(大木さん、ありがとうございました)
今回のCRAFT×TECHでは、落合作品を含む、東北地方の伝統工藝と現代アーティストとのコラボ作品を、レトロ建築『九段ハウス』で心ゆくまで楽しめます。
新緑の美しいレトロ建築もご堪能ください✨
2024/5/24・25
九段ハウスにて
https://craft-x-tech.com/
↓チケット🎫はこちらから↓
https://craft-x-tech-exhibition2024.peatix.com/
読んでくださってありがとう🌟ぽちぽち書いていきますね。