日本の「庭」とヨーロッパの「庭園」⑫
1990年、高校3年の時に綴ったレポートを読み返したら、30年後の私が知りたいことが、30年前の私によって綴られていました。「ふぅん!」と驚きつつ、noteに再録しています。
前回はこちら。
このように、分割と統合がルネサンスの特質である。そのため、ルネサンス庭園では、平行及び垂直関係が強調されている。例えば、ゴシック庭園の噴水は彫刻の装飾が施され、高い構造物であったのだが、ルネサンス庭園においては比較的低い位置から噴き出し、水盤の水面と水柱との垂直関係が明確にされたのである。
花壇などを用いて模様化された庭園は、本来の姿から遠ざかった一片の自然であるのだが、これは庭園を建築物に融合させるのに役立った。ここで見られる建築物と庭園の主従関係は、ヨーロッパにおける人間と自然の関係を象徴しているかのようである。
シャンボール邸(※①)やシャルルヴォワール宮(※②)に代表される人工の美を中心においた形式庭園が確立するのは、数学的、科学的合理化の進んだルネサンス期なのである。
日本とヨーロッパの庭園に影響を与えた宗教や思想のうち、ここに掲げたものは、ごく一部でしかない。しかし、両庭園史の流れを決定づける必須の部分だけを取り上げたことによって、各々の庭園の特色をより明確に浮かび上がらせることができたのではないかと思う。
※① シャンボール邸は、16世紀初頭に増築されたロアール河流域の城館群れのうち、最大の規模をもつ邸館。
※② シャルルヴォワール宮は、デュセルソー(1510-84。建築家、銅版画家)がシャルル9世のために設計したとされる。