JPOP曲のタイトルのつけ方①構成編
God is in the details. 神は細部に宿る。作詞をするうえで、タイトルってすごく重要だ。それは周知の事実。最近さらに、タイトルについて考えるようになった。今回は2回に分けて曲のタイトルについて考えてみようと思う。
タイトルは必ずしも作詞家がつけるわけではない
今回は、自分がタイトルをつけることを前提に書いていこうと思うけれど、曲のタイトルは必ずしも作詞家がつけるわけではない。作曲家がタイトルをつける場合もある。楽曲にはたいてい仮歌・仮歌詞といって、プレゼンされる前にすでに歌詞がついている。仮歌詞が十分素晴らしいという場合は、仮歌詞が本歌詞になる。(手直しする場合もあるけど。)仮歌詞も素晴らしいけれど、今回はもうちょっと違う歌詞が欲しいというときに、楽曲が作詞家のもとへ回ってくる。その際に、プロデューサーさんなり、ディレクターさんなり、A&Rさんが「タイトルはこのままで!」と決めたら、作曲家さん(もしくは仮歌詞をつくった方)がつけたタイトルが、そのまま決定するというわけだ。
それ以外にも、制作側(ディレクター、プロデューサー、A&Rなどなど)がタイトルを決めてそれから楽曲募集をするときもある。だからタイトルって、いろんな人がつけているのだ。そもそもタイトルに著作権は発生しないのでね。
歌詞構成という観点からの分類
タイトルのつけ方は十人十色。とはいえ、作詞家は歌詞を構成するときに、すでにタイトルを考え始めていると思う。ということで、今回は歌詞というか、曲の構成別に、タイトルのつけ方を分類してみた。
①サビのリフレインをタイトルにする
これは昔からの王道だろう。ただ、最近このスタイルは少し減ってきたように感じる。作詞家としては、一番つけやすいタイトルだと思う。サビの最初に出てくる繰り返される言葉を、そのものずばりでタイトルにするというものだ。近年のヒット曲で見ると以下の曲がこの分類にあたると思う。
うっせぇわ by Ado
Make you happy by NiziU
第六感 by Reol
リスナーとしても、何度も繰り返されて耳に残る言葉がそのままタイトルなのだから、覚えやすいしわかりやすい。作詞家としては、リフレインの一番大事な場所で、音のハマりがよく、インパクトがある言葉を選べばいい。その言葉を探すのは大変な作業なのだけれどね・・・
②サビのキメをタイトルにする
<サビ終わり>
近年はこれが一番多いのかなと、個人的には思っている。サビはもちろん曲のなかで一番重要な部分だろう。そのサビのなかで、サビの頭(最初)と最後がとくに重要。サビの頭にインパクトを持ってくる歌も多いけれど、サビの終わりにインパクトがある曲もとても多いのだ。例えば、瑛人さんの「香水」 サビ頭の『別に君を求めてないけど』とサビ終わりの『香水のせいだよ』、どちらの方がより覚えてる?どっちの方が口ずさみやすい?そう聞かれれば、圧倒的にサビ終わりだろう。
香水 by 瑛人
ドライフラワー by 優里
Dynamite by BTS
夜に駆ける by YOASOBI
紅蓮華 by LiSA
<サビ頭>
とはいえ、サビ頭はやはり重要だ。べつに連呼しなくったって、しっかりサビ頭を印象的に演出することはできる。
猫 by DISH//
水平線 by back number
マリーゴールド byあいみょん
③歌詞の中のキーワードをタイトルにする
これも最近は多いパターンなのではないかと思っている。別にサビに使っているわけではないけれど、歌詞の中にキーワードがあって、それをタイトルにするというパターン。このパターンも、さらに2つに分けられると思う。
<存在感あるキーワード>
サビではないけれど、メロディーの重要な場所に配置したキーワード
きらり by藤井風
Butter by BTS
<存在感はあまりないキーワード>
メロディーではなく、歌詞的に重要で配置されたキーワード
虹 by菅田将暉
CITRUS by Da-iCE
④歌詞の内容をまとめた言葉をタイトルにする
作詞家としては、作業が増えるパターン。そして、けっこうセンスも大切になってくる。作詞をするときに、メロディーの大事な場所にハマる言葉を配置はしたけれど、どれもタイトルではないなと感じるときや、タイトルとしてはありきたりすぎるときに、この方法は有効。
Pretender by Official髭男dism
白日 by King Gnu
点描の唄 feat. 井上苑子 by Mrs. GREEN APPLE
勿忘 by Awesome City Club
高嶺の花子さん by back number
これらのタイトルを見て、私が言う「センス」は理解してもらえると思う。
<番外編>
歌詞の内容をまとめた言葉に違いないだろうけど、ひねりが加わって意味深なタイトルもある。
春を告げる by yama
不可幸力 by Vaundy
いずれにせよ、センス系タイトルにちがいない。
⑤その他
何なん?ってタイトルはたまにある。スピッツとか、この系統が多いだろうなあと。ちょっと古いのだけれど「ロビンソン」とか。私は上に挙げた例のほとんどを2021年の年間Billbord Japan チャートから探してきた。だから最近のヒット曲ではこのパターンは少ないんだろう。
さて、いかがだっただろうか。あくまで作詞家が考える、歌詞構成におけるタイトルのつけ方の分類だ。今回は歌詞構成の分類をしたのだけれど、ぜひもうひとつ「言葉」としての分類をしてみたいと思う。これは個人的な勉強として。そのうちに・・・