【書籍レビュー】#01 「誰が勇者を殺したか」 駄犬著
誰でも責任を誰かに押し付けたい。それは、自分と自分の大切な人を守るため。
仕事でも、生活でも人は無意識にこのように思う。
「誰かがやってくれるだろう」
「そんな責任を負いたくない」
「押し付けられた責任を誰かに押し付けたい」
「逃げ出してしまいたい」
このように思った次に生まれる思考は、
「私は関係ない」
「アイツがやればいい」
「自分がやるべきではない、アイツの責任だ」
「あとは誰かがやるだろう」
このような思考は、自分を守るため、自分の大切な人を守るために太古の昔から繰り返されてきた。
ある意味で防衛本能。
こういった思考により日本で生まれたのが隣組、村八分などの密告制度。
現在では、SNSなどのネットを使った「〇〇警察」なんてものが有名だろう。
自らの責任を放棄し、責任転嫁した後ろめたい想いを隠すために、他者に対してより強い非難と攻撃を繰り返すのは、人間の悲しい性なのだろう。
それを引き受けるニンゲンはどう思うのだろう。
だが、この責任転嫁を一手に受け、誰かの想いに応え続け、その歩を進めるものが居るのであればどうだろうか?
それは、勇者といえるのではないだろうか?
多くの人たちの責任、期待、押し付け、希望を背負わされたものは、勇者。
それは勇者でなくとも、勇者といえるのではないだろうか。
物語は、勇者が魔王を討伐し、王都に帰還するところからはじまる。
王都に到着すると勇者パーティーから驚きのコトバが発せられる。
「勇者は魔王を倒した後、魔王の手下に殺された」
国王、国民は驚きつつも、魔王が討伐されたことによって平和がもたらされたことに安堵する。
そうして、勇者のことは誰もが忘れていく。
人間の逃避本質である「自己保存」「責任転嫁」を見事に描いた作品。
勇者は殺したのは、だれか?
物語が進むにつれ変化していくであろう、あなたの思考。
あなたなりの「勇者殺しの犯人」を見つけてほしい。