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文字通り今さらなのだが、馬鹿にできない英語の弱形


突然ですが、次の英文を発音できますでしょうか?

The technician said that he could not repair the machine.

1日1分!TOEIC L&Rテスト 炎の千本ノック英単語徹底攻略 著者 中村澄子

見るからになんとも無い、普通の一文です。おそらくほとんどの方々は問題なく"発音"できるでしょう。しかし、聞きとれるか?となれば話は変わるのでは無いでしょうか。それどころか、先のご自身による"発音"は本当に発音できていたでしょうか?

まず答え合わせは実に簡単です。abceedというサービスで該当の著書の音声(1014番)で公開されているので、ぜひ直に耳で聞いてみてください。そして、可能なら自身の発音とどれほど乖離があるか感じ取れるとなお良いです。私は初見(初聞)では、abceedで公開されている音声ほどの発音はできてなかったし、ましてや聞き取れてもいなかったので、その落差を痛感し、発音記号を勉強するきっかけになった程でありました。そして、英語の発音アクセントで学んだことをまとめるのが本noteの主題です。

なぜ聞き取れないのか? -英語の強形と弱形-

さて、ここにはあるカラクリ、といっても正々堂々と辞書に記載されている明々白々な事実でありますが、英語が聞き取れない、あるいは発音できない原因の一つは強形と弱形にあります。私は先の英文を初見(初聞)では聞き取れなかったという要因はこの強形と弱形を見過ごしていたために起因します。そして、この強形と弱形が私に取っての学びでもありました。

では強形と弱形とは何か、その周辺知識も交えて整理します。


機能語と内容語、そして強形と弱形

音声の観点から英単語を2つに分類すると、機能語と内容語に分かれます。

機能語とはわかりやすく言い換えると文法の言葉であり、代名詞、助動詞、接続詞、冠詞などが該当しストレス(強勢)が置かれません。

一方で、内容語とは文法の言葉以外で文字通り意味内容を伝える言葉であり、Be動詞を除く動詞、名詞、形容詞、副詞を指し、ストレス(強勢)が置かれます。

そして、機能語とBe動詞には強形と弱形の2通りの発音の仕方があり、内容語は1通りの発音があります。(もちろん、内容語とはいえ、例えば、アメリカ英語とイギリス英語では発音自体がそれぞれで異なりますが、いづれでも強形と弱形の2通りの発音はなく、それぞれの言語で1通りあるのが基本となります。)

では、上記の機能語と内容語、そして強形と弱形の識別を1つ例文を通して具体的に練習してみます。

I'v been to Disneyland twice.

まず、この英文を機能語と内容語に分けます。
機能語は文法的な役割があるので、その英単語が文法の言葉か否かで識別していきます

I've は代名詞のIと第一助動詞のhaveで作る短縮形 I'veで文法の言葉です。なので機能語です。beenはBe動詞の過去分詞に活用した言葉なので機能語です。toは前置詞で文法の言葉のため機能語です。その他のDisneylandとtwiceは内容語です。

次に、機能語のうち、例えば、beenに着目します。機能語は強形と弱形があり、beenは機能語のためbeenには強形と弱形があると予想できます。そこで強形と弱形があると予想しつつ辞書を引くと強形と弱形が載っています。

https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/been
※Longmanのサイト

強形は、あえてカタカナで表すと、「ビーン」
弱形は、あえてカタカナで表すと、「ベン」
と強形と弱形が確認できました。音声も含めてぜひ確認してみてください。

この弱形の音を意識しながら、TOEICなどのリスニングを勉強したり、あるいは音読すると聞き取り能力の改善に役立つでしょう。

「アイヴ "ビーン" トゥ」 よりも、「アイヴ "ベン" トゥ」と音読、シャドーイング、ディクテーションすると良いということですね。その他の機能語も辞書を引くと弱形が見つけることができます。

補足1:学校で習った発音はほとんどが強形
悪くいうつもりはないのですが、学校やスクールなどで習う機能語の発音は、教師あるいは講師は強形を用いることがほとんどでしょう。リスニング対策講座のような特殊で一時的な授業でない限りは、強形が使われます。そのため生徒あるいは受講側も強形のままで認識されます。私のように弱形の認識がない、あるいは甘いまま卒業された方もいらっしゃるのではないでしょうか?このように、生徒あるいは受講側はそもそも弱形を知らないケースがあると思います。指導者側の課題もあるかもしませんが、習う側の立場でも上記のような思考回路を持てれば、(既に私がそうであるように)独学で補えるのでめげずに頑張りましょう。

補足2: 強形と弱形はどちらが普通か?そして使い分けは?
どちらも正式に正しい発音です。強音だから当たり前に使われて当然だとか、弱音だから砕けた発音だなどということはありません。むしろ、弱形の方が利用頻度としては多いのではないでしょうか。いづれにせよ、強形と弱形はどちらも正しい発音です。では、強音と弱音はどのように使い分けられるのでしょうか?ある時は強形で、一方では弱形になる目安となる基準は何でしょうか? 著書 英語「発音記号」の鬼の50講(著者 米山明日香)では、以下の4つが示されていました。

①強調したい場合
②文末に来る場合
③単独で発音する場合
④他の語と対比する場合

補足③ : まずは対比を意識するところからはじめたら良いのではないか
これは完全に私見ですが、英語には強調構文のように強調と言いつつ実は対比を前提とした強調の表現があるので、おそらく強形の利用時も同様に、対比による強調を表す時は強形を使うとまずは構えてみてはいかがでしょうか。(私見なので、間違ってたらすみません。)

つまり、上記の①と④はむしろ2つで1セットであり対比するからこそ強調する表裏一体であり、②は情報構造でいう新情報が文末来る時があるのでその場合は後ろに重点を置かれるため強形が利用されると考えれるとまとまりが良いでしょうか。(つまり、新旧の流れと重点による対比)③は単独で用いられる場合、他の語は反復により省略されたと考えて唯一省略できない語=単独で発音する場合が該当すると考えれば、これも対比(省略されない唯一の違い)を前提とした強調と捉えることも可能ではないしょうか。大胆に述べてしまいましたが、こんなケースがあったよとあればぜひ教えてください。


それでは、最後に、冒頭の英文をさらっと見直してみましょう。

The technician said that he could not repair the machine.

1日1分!TOEIC L&Rテスト 炎の千本ノック英単語徹底攻略 著者 中村澄子

もうお分かりかと思いますが、まずは機能語と内容語に分けます。

すると、the (冠詞)/ that(接続詞) / he (代名詞)/ could (助動詞)/ not(否定で反転)が文法の言葉で機能語です。(※thatは主に接続詞と関係詞の時に弱形で辞書に記載されます)。これらの単語には弱形があると予想して辞書を引いてみてください。

加えて、この英文は弱形がthat he could notが連続して4単語続いています。
弱形の音がわかることに加えて、4単語続いて発音するため、初見(初聞)では早く聞こえたり、あるいはそもそも何を言ってるのか追い切れなかったのは弱形が連続して発音されたためでありましょう。これが聞き取れない、あるいは発音できない原因です。

「that he could not」を強形と弱形のそれぞれで、あえてカタカナで表すと

強形なら「ザット ヒィー クッド ノット」ですが、
弱形なら「ザt   ヒッ クッ ノッ」となります。

弱形で音読した上でもう一度聞いてみると今度こそ聞き取れるのではないでしょうか。

文字情報として簡単に分かる英文でも、耳だけで聞きとれて意味がわかるか?となれば、そう簡単にはいかないので、弱音を意識するとリスニングに効果的だよという話でした。(次のステップとしては、リンキングなどの音の繋がりを学ぶとより効果的でしょう。)また、弱形は文法的な役割を担うため、弱形として気をつけるべき英単語の数には限りがあることもわかります。(文法的な役割を負う機能語は、意味内容を示す内容語よりも圧倒的に数々が少ないし、識別も容易である。)学習の一環でディクテーションを取り入れていれば、一通りの主要な機能語の弱形には触れられるはずなので、急かすように学習するのではなく、機能語が出てきたタイミングで弱音を学べば十分でしょう。

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