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ミュージアムのほとりにて「狐火」

NHKの俳句番組「俳句さく咲く!」(現在は「NHK俳句部」に改名)で、「名句ミュージアム」というコーナーがありました。
講師の堀本裕樹さんが毎回一句、名句を解説していて
とてもためになるコーナーでした。
復活してほしいなあ~。

ということで顰に倣い、今回は名句鑑賞です。

「狐火」


    狐火を伝へ北越石譜かな      阿波野青畝
  
                      『不勝簪』ふしょうしん



❖鑑賞

『北越石譜』ほくえつせっぷは、江戸時代の随筆です。魚沼生まれの文人・鈴木牧之が北陸の様子を人々に知ってもらおうと書いたもので、狐火について書かれたくだりもあります。
この句にあるのは、事実そのものです。
「伝へ」に擬人法が微かににおいますが、素っ気ないほどに写実主義をまっとうしています。写実の良さは、読者に確かな手ごたえを与えられる所にあります。
それなのにこの句をじっと見ていると、どこか揺らいでいる。
句が真っ直ぐな柱だとすると、柱が揺らぎその裏に隠れたモノが垣間見える気がします。季語以外の言葉の気配を極力鎮めたら、狐火が活き活きし始めたということでしょうか。

説明しすぎない美学を、この句に学びました。


    蒸発せん明日狐火をとくと見て     梨鱗

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