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「俳句恋々」つめたくて、やわらかに


    うしろよりそつとかむ耳朶ささめゆき    梨鱗

ひとのいちぶがこんなにもつめたいなんて、と驚くときがある。
それが恋しい人のいちぶだったら、なおさらで
つめたさに遭遇するとは思ってもみない状況だったら、
感情はいっそうさざめく。
思ってもみない状況とは、たとえばうすずみ色の空から
こまやかな雪がいつ終わるともなくふりつづき、
でもにんげん界のぼくたちは
あいにくことばを雪のように降らせることはできず、
それなら「あたためあう」なんてことをしてもいいんじゃない、
どちらからともなく、手をかさね、首のにおいをかぎ、
セーターの下のほねの硬さを感じとり、
そんなときにくちびるにはさんだその部分が、
夜どおしうなっている冷蔵庫の胴体とかわらない温度であるとしった時
君からはじめたこの行為を
(いえ、どちらからともなくでした。ごめんなさい)
こころの奥ではこばんでいるんじゃないか、という思いに一瞬とらわれる。
こころが発する欲と、からだの生理的反応はべつものと
わかっていなかったうんと幼い頃のように
目のまえの景色や、手にふれているひとから引き離されそうになる。

「どうしたの?急にどこか見て」
「ん?雪、すごいね」

君を腕のなかに閉じこめているとき、
どうしてあんまり力を込めないのだろう。
ぼくと君の力関係は、いつになっても
積もったばかりの雪のように、ふわふわだ。


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Lylinにしてはめずらしく、恋愛ねたです。
しばらくつづきます。




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