棒つきプリン
午前7時40分、登校前。
なにやら話し合いながら、冷蔵庫前を往き来する姉弟。
「もう出発する時間」と声をかけても、冷凍庫の引き出しを開けたり閉じたりしている。
2人の後ろから覗いてみると、弟はプリンを冷凍庫に入れている。
蓋のフィルムは剥がさずそのまま、プリンの中央に割り箸が1本、差し込んである。
お姉ちゃんも、割り箸を差し込むための穴を目打ちで開けている。
これは…
棒つきプリン…アイス。
立体的なプリンに対して細い持ち手がなんとも心許ない。
割り箸を設置し終え、プリンを冷凍庫に託し、お姉ちゃんは登校。
弟は昨日転んでできた怪我が痛いと、欠席。
家にいる息子はプリンが気になる。
蓋の上から指で押したり、つついたり。
「ちょっと固まってきた」とか「ちょっとだけ」とか独り言が聞こえてくる。
冷凍庫を閉める。開ける。
静かになったなと思っていたら、割り箸と蓋、空になったプリン容器が食卓に置かれていた。
午後3時、お姉ちゃんが帰宅。
ランドセルを下ろし、冷蔵庫前に立つ。
弟が駆けつける。
冷凍庫を開け、プリンを手に取り、蓋をめくる。
夜勤前のお父さんと私も見学する。
「固まってる~」
プリンに差し込んだ割りばしを握り、カップから引き抜こうとするが、抜けない。
ナイフを持ってきてプリンとカップの間に差し込み隙間をつくる。
少し溶けてきた。ナイフで斜めに押し上げながら、持ち手の割りばしを引っ張ると、スポッときれいに取れた。
お姉ちゃん、にんまり嬉しそう。
どこから食べようかと思案するように眺め、豪快にガブリ。
感想を促す私に、親指を上げてgoodのサイン。
ガリガリくん(アイス)より軟らかいらしい。
食感が気になるところだ。
弟もひとかじり。
「1口が大きい」とお姉ちゃんに注意を受ける。
もとが固めのプリンだからか、溶けてきてもボトッと落ちてしまわず、お姉ちゃんは時間をかけて平らげた。
つぎの日の朝5時40分。
私は冷凍庫を開けてみる。冷凍庫の隅には湯呑みが2つ並ぶ。中には甘酒が入っていて、すでに固まっている。