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日比谷音楽祭2024に“音漏れ”を聴きに行った話

2024年6月8日(土)、亀田誠治が実行委員長を務める「日比谷音楽祭」という音楽イベントに初めて足を運んだ。
日本の野外コンサートの歴史をつくってきた音楽の聖地“野音”がある日比谷公園で音楽を体験できる参加無料のイベントで、5回目の開催となる。

なんといっても今年の目玉は、初参加のスピッツ。
亀田誠治とスピッツは、2002年発売のアルバム「三日月ロック」以来の付き合いだ。
夜の「Hibiya Dream Session1」というステージに出演するスピッツは、21年ぶりの“野音”になるらしい。

“野音”の観客席は約3千。
入場チケットは事前抽選と、当日キャンセル分の抽選なるが、まぁ~当たる気がしない。
1万人を超える会場での有料ライブでさえ、スピッツのチケットは入手しにくい。
ましてや無料なので、ハナから無理ゲーだと諦めていた。

でも“野音”なら、“音漏れ”でも十分聴こえるはず。
“音漏れ”でもいいから聴きたい。
そう思い、特に何もすることなくヒマだったので、15時30分頃に日比谷公園に到着。
するとなんと、リハーサル中の“音漏れ”が聴こえてきた。

まさかの「美しい鰭」やんけ!
しかも、マサムネさんが普通に歌ってるし!
こういうのって、屋内施設でリハするんじゃないの!?
到着するなり“音漏れ”が聴けて、今日の目的の半分を達成したかのような気分になった。

公園内をぶらぶらしながら、スピッツファンのカラオケ仲間と合流。
17時15分、奇跡を信じて申し込んだ当日券もやっぱりハズレ。
仕方ないので、“野音”の入場口付近で“音漏れ”を聴くことにしたが、同じ境遇の人たちが周辺を埋め尽くしている。
そのほとんどの人たちがスピッツ関連のグッズを身にまとっていた。
正確に数えたわけではないが、体感的に9割がスピッツのファンだと思う。
(なんて言ったら、ほかのアーティストのファンに失礼か・・・)

このイベントは18時45分開演の20時15分終演で、その様子がU-NEXTで生配信される。
しかし、生配信の告知にはスピッツの名前が載っていない。
しかも、U-NEXTの配信開始時刻は19時15分。
はっは~ん、これはつまりスピッツがトップバッターで、18時45分から30分間だけ出演するんだな・・・
Xを見ても、同じ推測をしている人がいた。

問題は、最後にもう一度登場するかどうかだ。
どうしても気になるのは、出演者にKREVAがいること。
KREVAといえば、「くればいいのに feat.草野マサムネ from SPITZ」という曲を2007年にリリースし、草野マサムネとコラボしている。

同じ日にブッキングされてて、やらないわけがないよな・・・
でも、U-NEXTの生配信には出演しない。
シークレットスペシャルゲストとして登場するのかな?
などといろいろ考えた。

18時45分、いよいよスピッツのライブが始まる。
会場の周辺で“音漏れ”に集中して耳を傾ける人たち。
会場の3千人と同じくらい、いや、それより多いだろうか。
亀田誠治実行委員長による簡単な挨拶があり、早速スピッツが呼び込まれた。
亀田さんもマサムネさんもMCの声が小さくて通らないので、はっきりと聞こえなかったが、そこは仕方がない。
歌さえ聴こえれば満足だ。

そしていよいよ演奏開始。
1曲目は「チェリー」で、客席で聴いてるのと同じと思えるくらいバッチリ聴こえた。
「ルキンフォー」「楓」と続き、右隣にいた方もウットリ。
3曲が終わったところで、マサムネさんによるMC。
客の前で歌うのは、ひみつスタジオツアー以来4ヵ月ぶりとのことだが、その直近となる2月16日の姫路公演を観に行ってるので、2回連続でスピッツのライブを観に、いや、聴きに来れてて、すごいと思った。

4曲目は「優しいあの子」で、5曲目の「ロビンソン」の演奏が始まったときは驚きと歓びの声が大きく上がった。
「美しい鰭」と続き、演奏が終わった時点で19時14分だったので、これで終わりかと思った矢先、なんと7曲目の「魔法のコトバ」が始まった。
U-NEXTの生配信の開始をちょっと遅らせてるの?
得した気分と、不思議な気分が入り混じる。
30分のステージなら良くて5曲かなと思っていたのに、7曲も生歌を聴けるなんて贅沢すぎるでしょ。
しかも無料で。

さて、スピッツが終わったので帰ろうかどうしようか・・・
“音漏れ”組は帰っちゃう人も結構いたが、何かを期待して残ってる人のほうが多い。
もちろん、スピッツの後に出てくるアーティストも聴きたくて残ってる人も多いのだろうが。
私は、一緒に聴いていた仲間と相談した。

「どうする?」
「どうしようか?」
「KREVAがいるんだもん、絶対やるよね?」
「U-NEXTの配信終了後に再登場するのかな?」
「出演者全員で空も飛べるはずを歌うとか、ありそうじゃない?」
「後悔したくないもんね」

というわけで、ライブ終了まで残ることに。
そして後続のアーティスト(Aile The Shota、キタニタツヤ、新妻聖子、KREVA)が2曲ずつ歌い、ライブは一旦エンディングを迎えた。
時刻は20時03分。

あれ? 終わるの早くない?
予定では20時15分なんだけど・・・
と思っていると、申し合わせたかのように会場内からアンコールが沸き起こる。
つられるように、“音漏れ”組もアンコールを始めた。

ほどなくして、「くればいいのに」の曲が流れ始め、再登場したKREVAの声が。
「ここからは今日集まった人のためだけにやるぜ!」的な事を言った。
それを聞いた瞬間、U-NEXTの生配信はもともと19時15分~20時00分の予定だったんだと察した。
ならば100%、スピッツが再登場する!
絶対に来る!

「また会えるよ 約束しなくても」

スピッツのラストの曲が「魔法のコトバ」だったのも、「またあとで会えるよ」のヒントだったわけだ。
“野音”の観客も“音漏れ”組も大歓声を上げる。
いよいよマサムネさんのパートに。
KREVAが「今までいろんなアーティストが歌ってきた。でもやっぱり本物が聴きたいよな!?」と煽る。
そして「もちろん、今日は来てます!草野マサムネ!!」と呼び込んだ。

「逢いたいと思うその時には
 あなたがいない
 今すぐ逢いには行けないから
 あなたがくればいいのに」


フルコーラスではなかったが、滅多にないステージが実現した。
そしてオーラスは、出演者全員で「空も飛べるはず」を歌った。
これはもう、予想していた展開そのまんまで笑けてきた。
そりゃそうよな、もし自分が実行委員長の立場でも、同じ事考えるもんな。

ただただ感動。
泣きそうになった。
待っててよかった・・・
無料イベントで9曲も披露するなんて、なんて謙虚で誠実で律儀な人なんだろう。
そしてこの夢のようなライブが終わってから、“音漏れ”仲間にこう告げられた。

「『くればいいのに』も『空も飛べるはず』も、リハーサルやってたよ」

いや、あるってわかってたんかーい!

「すべての方が『音楽っていいな』と思えるように」

MCでそう語ったマサムネさん。
メジャーな曲で固めるだろうと予想していたが、ファンも、特にファンでない人でも、みんなが楽しめる空間になったと思う。

それにしても、断固としてU-NEXTの生配信には出演しない徹底ぶり。
なぜなんだろうと、カラオケ仲間たちと飲み屋で話し合った。

緊張するから?
権利上の問題?
ブランドイメージを保つため?
後に映像作品としてリリースするから?

平たく言って“大人の事情”ってやつなんだろうけど。
でもスピッツを生配信しちゃうと、チケットがハズれた人たちがイベントに来なくなるからというのが一番の大きな理由かもしれない。
まあ、それもやっぱり“大人の事情”のうちか。

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