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スピッツ歌詞考察(第86回)夏が終わる


【基本情報】

夏が終わる
作詞:草野正宗 作曲:草野正宗 編曲:笹路正徳&スピッツ
4分9秒

<リリース日>
1993年9月26日(4thオリジナルアルバム「Crispy!」)
1993年10月25日(7thシングル「君が思い出になる前に」カップリング)
※「Crispy!」からシングルカット。

<収録アルバム>
Crispy!(1993年9月26日リリース 4thオリジナルアルバム)

【MUSIC VIDEO】

【歌詞】

歌詞は下記のサイトでご確認いただけます。

【考察】

登場人物は主人公と“君”と“彼”で、季節はそろそろ秋の訪れを感じる夏の終わりです。
(タイトルからして当然ですが…)
“君”が軽い砂を蹴り上げたり、髪を濡らしていることから、舞台は海を楽しんだ後の砂浜であると考えられます。
そして1番の歌詞は“君”目線、2番の歌詞は主人公目線であると考察しました。

<1番>“君”目線
遠くまで うろこ雲 続く
彼はもう 涼しげな 襟もとを すりぬける
遠くまでうろこ雲が続く季節になった。
夏の終わりに吹く涼しげな風とともに、今はもういない“彼”との思い出が襟もとをすりぬける。

日に焼けた 鎖骨からこぼれた そのパワーで
変わらずにいられると 信じてた
日に焼けた肌と力強い鎖骨が好きで、ずっと一緒にいられると信じていたのに。

またひとつ夏が終わる 音もたてずに
暑すぎた夏が終わる 音もたてずに
深く潜ってたのに
またひとつ“彼”との思い出の夏が静かに終わっていく。
暑すぎた夏が静かに終わっていく。
“彼”と過ごした夏の思い出に浸っていたのに。

<2番>主人公目線
遠くまで うろこ雲 続く
彼はもう 涼しげな 襟もとを すりぬける
遠くまでうろこ雲が続く季節になった。
夏の終わりに吹く涼しげな風とともに、今はもういない“彼”との思い出が“君”の襟もとをすりぬけていったようだ。

キツネみたい 君の目は強くて
彼方の 記憶さえ 楽しそうに つき刺してた
“君”の目はキツネのように力強く、きっと“彼”との遥か彼方の記憶さえも楽しそうに見つめていた。

軽い砂を 蹴り上げて走る
濡れた髪が 白いシャツ はずむように たたいてた
軽い砂を蹴り上げて走り、濡れた髪がはずむように白いシャツを叩いていた。
そんな“君”の姿にドキドキしたけど…

またひとつ夏が終わる 音もたてずに
暑すぎた夏が終わる 音もたてずに
深く潜ってたのに
またひとつ“君”に恋した夏が静かに終わっていく。
暑すぎた夏が静かに終わっていく。
チャンスを窺っていたのに。

遠くまで うろこ雲 続く
彼はもう 涼しげな 襟もとを すりぬける
遠くまでうろこ雲が続く季節になった。
夏の終わりに吹く涼しげな風とともに、今はもういない“彼”との思い出が“君”の襟もとをすりぬけていったようだ。

主人公と“君”と“彼”は、毎年夏に海で遊ぶ仲間でした。
“君”と“彼”は恋人同士でしたが、何年か前に“彼”がこの世を去ります。
“君”は遥か遠くを見つめながら、“彼”との夏の思い出を振り返っています。
その目はキツネみたいに力強く、今でも“彼”を想っていることがわかりました。

そして遠くを見つめていたこのとき、うろこ雲が続いていることに気づき、秋の訪れを感じます。
うろこ雲とは、高度5000~15000キロ程度にできる「巻積雲」の俗称で、小さなかたまりがたくさん集まった雲です。
台風や移動性高気圧が多い秋によく見られることで、秋の季語になります。

主人公は、密かに“君”に恋をしています。
“彼”がこの世を去ってから“君”はずっと、いわゆるフリーの状態が続いていました。
夏がくるたび“君”に告白したいと考えていましたが、“君”は今でも“彼”のことが忘れられない様子で、この恋は実らないということを悟ります。

こうして主人公と“君”の夏は、何も起こることなく静かに終わっていきました。
ふたつの叶わぬ恋が同時に進行する切ない曲で、テーマとしては「死」と「生」(≒「性」)になるでしょう。

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